道天好転

2017.03.21

[vol.039]

ビシッと打つ? 擬音語はゴルフの厄介者?

TEXT : YOSHIO OSAE

ゴルフは擬音語・擬態語の世界

大量の花粉が自由奔放に舞う季節。花粉症とは無縁だった人も、気付けば鼻がムズムズ、グジュグジュ。花粉が舞う空が薄黄土色に見えるのは、目の錯覚なのでしょうか。その山間を鷹がゆら〜り、ゆらゆらと暢気に獲物を探しています。

鷹と鷲は猛禽類の同じタカ科の兄弟のようなもの。「ピーヒョロロ」と鳴いている鳶(トンビ)もタカ科の親類縁者。彼らが同族と知ると、勇猛な鷲や鷹と比較して、さぞや鳶は肩身の狭い思いをして空を舞っているのだと察しがつきます。

都会ではカラスが威張り、スズメやハトを追い散らして制空権を握っていますが、当地ではカラスは鳶より格下で、鳶のおこぼれをカラスが頂戴しています。都会のスズメやハトがこの光景を見れば、少しは気分もスッキリするはずです。

そんな矢先、かなり気の早いメジロのヒナの巣立ちを目撃しました。枝を活用した巣から、ドタバタ、ザワザワしながら飛ぼうというヒナの姿が、ティから放たれるゴルフボールとクロスオーバーしてしまい足を止めました。

この光景を眺めていると、前々回の道天好転でも触れましたが「ボールに羽を与えるニュー黒・フェアウェイウィングス」の事を思い出しました。飛び去ったヒナを心配そうにキョロキョロ見守る親鳥と、ティショットを終えてボールの行方を見つめるゴルファー。どこかが、どことなく、似ているような、似ていないような……。

ところで、ここまで「キョロキョロ、ザワザワ」などの擬音語や擬態語が多すぎて、うっとうしく感じた方も多くいらっしゃると思います。日本語はまさにオノマトペ、擬音語と擬態語の宝庫。ゴルフもその例外ではなく、擬音語を多用してコミュニケーションをとるケースが多いようです。僕も試打報告をする際は、多くの擬音語を使っています。

特に打感や打球音を伝える際は、擬音語は不可欠です。たとえば「打球音は甲高い金属音を発した」だけでは、その金属音が忠実に伝わらず、ピンときません。しかし「キーンという高い金属」と表現すると、読者の方も「なるほど、キーンという感じか」と、その情報に厚みが増してきます。

擬音語を無くすとゴルフは上達する

日本人は子供の頃から擬音語に馴れ親しんでいるので、その擬音語をそれなりの意味に変換しますが、海外から来た人達にとっては、まったく意味不明な厄介な言葉になるようです。以前、スウェーデン人と一緒にプレーしたことがあります。彼は日本人が時々使う擬音語の意味が、わからないと言っていました。たとえば、こんな感じでしょうか。

「フカフカのフェアウェイを歩くと、ルンルン気分」

「日本人が聞けば十分納得できますが、海外の人達にとってはフカフカとルンルンが、日本語なのか、どうなのか理解に苦しみます。彼らにしてみれば擬音語を使う習慣がほとんどないので、やはり日本語は不思議に思えるでしょう。実際、彼らの擬音語をほとんど耳にしたことはありませんし、強いていえば、コミックのテキストで見かける程度です。

日本人にとっては、より具体的に伝えるために使う擬音語も、使い方次第では日本人でさえ困惑の根源になってしまいます。特にゴルフでは擬音語の使い方と意味が曖昧で、ショットの迷いを生じさせます。たとえば親しい友人とプレーした際、その擬音語の真意が伝わらないケースも度々起きています。

ケース1):林に打ち込んだトラブルショット。やさしい友人からの擬音語アドバイス。
「アレであっちに出すようにビシッと打てば、キューンと飛んで行くよ」

気心が知れている友人とはいえ、突然「アレ」と言われても、アレとは何? 本人は14本のクラブからアレに該当するクラブを考えます。動揺しながらもアレを持って、次にビシッと打つわけですが、そのビシッというショットが何ヤードかよくわかりません。

さらにキューンという方向が、まったく検討もつきません。友人にとってはリアルに説明したつもりでも、残念ながら本人には、その真意が伝わってきません。たとえば、次のような具体的で簡単なアドバイスをすれば、あまり迷うこともなくスムーズにプレーも進行するはずです(もちろん、競技ではルール違反になりますが、プライベートのセルフプレーなら許されるでしょう)。

「ボールの位置から見える、前方の大きな松の木を目標にして、5番アイアンで低めに100ヤード程度打つことを心掛ければ、ボールはピン方向へ行きます」

こんな感じでしょうか。いずれにしても擬音語が災いになって、それこそドタバタするわけです。擬音語ですまそうとすると、一事が万事こんな調子になるわけですから、ゴルフにとって擬音語は厄介者かも知れません。

その理由のひとつは、ゴルフが「数字の世界」という側面があるからです。クラブもゴルフコースも天候も、数字でちゃんと見て取れます。プロがヤーデージブックを確認するシーンをよく見かけますが、これはヤーデージ計算など数字的データを確認しているわけです。

たとえば「ドーンと打って、グリーンをガンガン攻めよう」というシーンでも、プロは擬音語を数字に変換し、スコアという数字に仕上げてきます。そう考えると、擬音語は日本の大切な文化ですが、これを使わないゴルフを心掛けると、今までとは違ったゴルフがみえてくるはずです。

スペースの関係で結論がモジモジ、モゴモゴしましたが、これ以上余計な事をゴチャゴチャ書くと叱咤されそうなので、今回はこれにて失礼します。

yoshioosae
各出版社の創刊編集長、編集局長を歴任。ゴルフ専門誌の編集長を12年間務めた。現在は執筆とプロデュース関連で活動中。