2017.10.19

[Part. 5]

イップス改善の第一歩は、できること、できないことの整理から


前回、イップスを正しく理解する上で非常に重要なキーワードである「動作の自動化」について、お話させて頂きました。

普段は、何も考えずに行えていた動作(自動化した動作)が、大観衆の前や、監督や先輩が見ている前など、失敗を強く意識することで、「動作そのもの」に意識が向いてしまい、その動作への過剰な意識が、自動化した動作に意識的な動作の調節を加えてしまうという内容でした。
今回から、いよいよイップスを改善するステップに入らせて頂きたいと思います。

まずイップスは、結果として「被害」を受けるのは「動作」ですが、その大きな原因の一つとして挙げられるのは「不安」であると考えられています。

つまり、イップスは、一種の不安症のようなものであると、シンプルに捉えることができるでしょう。またひょっとしたら、イップスが起こっているとき、これまでできていたことができなくなってしまったことや、それに対しての対処方法がわからないことなどにより、ちょっとしたパニック状態になっているような方もいるかもしれません。

■動作のキーワードが「自動化」、心理のキーワードは?

人は自分がある状況において必要な行動を、どれくらい行えるのかということを自分自身で無意識に評価しています。その自分自身への評価のことを、カナダ人心理学者アルバート・バンデューラが提唱した心理学用語で、「セルフエフィカシー」、日本語では「自己効力感 (じここうりょくかん)」と言います。

少し専門的な用語ではありますが、「自分はこれくらいのことができるだろう」という自分自身への期待や自信のようなものであると考えて頂けたらOKです。

イップスを起こしてしまう選手にカウンセリングを行なうと、このセルフエフィカシーが低い傾向にあります。

不安やパニックのような心理状態のなかで、失敗をイメージし、実際に失敗経験を繰り返すわけですから、当然脳には「自分にはできない」という記憶が積み重なってしまうことになるのです。

そこで、イップスを改善していく上で、自分には、どのプレーはできて、どのプレーではうまくいかずにイップスを起こしてしまうのかをまず整理していくことが、非常に重要な最初のステップになります。「できない、できない」で満タンになった頭の中の、「できること」を知ることで、必要以上に低くなってしまいがちなセルフエフィカシーが高まることにも繋がります。

そこで、具体的にセルフエフィカシーを高めるのに効果的な方法をご紹介させて頂きます。

■できることと、できないことを整理しましょう

イップスで陥りがちな無気力感。それは、状況を過剰にネガティブに捉えすぎていることが原因で発生してしまうことが多いと考えられます。

できないことばかりに気を取られ、できることと、できないことを自分のなかで整理できていない状態。それを整理する作業を「セルフモニタリング」といいます。

私もイップスの相談に訪れてくれた方には、必ず最初にこのセルフモニタリングを行なって頂いています。
このイップスのセルフモニタリングシートは、私の書籍にも添付してあり、またこちらのコラムにも添付させて頂きますので、気軽にご利用頂けたらと思います。

イップスの時期が長かったり、色々試したけれど、治らなかったりと、やや無気力になってしまっている選手ほど、「めんどくさい」と思われると思いますが、一度ご自分の現状を客観的に把握することで、症状が落ち着くこともありますので、試して頂くことをおすすめします。

セルフモニタリングシートはこちらから

実は、こちらのコラムのために、リアルタイムでイップスに悩む方にこのセルフモニタリングを行なって頂きました。
次回からは、そちらの内容に沿ってイップスの改善に取り組んでいきたいと思います。お楽しみに!

1982年群馬県生まれ。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業。現在、ハバナトレーナーズルーム恵比寿・代表。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本トレーニング指導者協会公認トレーニング指導者(JATI-ATI)トレーナーとして、数多くのアスリートのトレーニング、コンディショニングをサポートする他、アスリートのフィジカルコンプレックスをなくすことを目指し、キューバスポーツ研究、イップス研究を行っている。また、柔道グランドスラム・キューバ代表サポート(2011年~)、ワールドベースボールクラシック2013・キューバ代表サポートなどの活動を行っている。
著書『イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)