2017.8.2

パーマー、ニクラウス、プレーヤーというビッグ3が世界のゴルフ界を席巻していたときに、燻し銀のようにその存在を顕した玄人好みの選手がいた。ビリー・キャスパーがその人だ。

敬虔なモルモン教徒で、酒、煙草、珈琲さえ飲まず、子供は養子にした子も合わせて11人。純粋なキリスト教徒故に、プレーも派手でなく、地道にスコアを積み上げていくタイプだった。

’66年の全米オープンは、まさにそうした彼のスタイルが、最終日のハーフを終えたところで7打差もあった首位パーマーとの差をじわりと縮めていって初優勝を成し遂げた。

パーマーは優勝確実と考え、全米オープンのコースレコードを書き替えに、「パーマーチャージ」で攻めに攻めた。一方、キャスパーはそんなパーマーにはかなわないと、いつものようにグリーンの真ん中を狙って安全にプレー。しかし、パターの名手、キャスパーは取ろうと思わないバーディが手に入る。逆にパーマーはピンを目がけてバンカーに入れてボギーを叩く。こうして18番が終わったときには同スコア。翌日のプレーオフは、マイペースのキャスパーに軍配が上がったのである。

キャスパーは言う。
「若いときは飛ばしたけど曲がった。でも、それでは勝てないんだ。無理をせずにグリーンに乗せる。そうすれば、パーを取るのは苦労せず、バーディも取れる。そうして、他の人より1打少なければ勝てるんだよ」
まさにキャスパーの面目躍如である。そしてこうも言った。
「ゴルフでは先のことを考える。次のショットのためにどうするかを考えるゲームなんだ」

BILLY CASPER

1931年6月24日、カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。1954年プロ入り。ツアー51勝はタイガー・ウッズが出現するまで歴代6位。バードントロフィー5回獲得。メジャー3勝。’59年と’66年に全米オープンに優勝し、’70年にはマスターズでジーン・リトラーをプレーオフで破って優勝している