2018.11.1

「練習の虫」という言葉があるが、これはゴルフにおいてはベン・ホーガンがその元祖と言ってもいい。手の平が血で染まるほど練習ボールを打ったと言われるが、その頃のプロたちはゴルフレンジはラウンド前のウォームアップだけで、プレー後はさっさとシャワーを浴びていた。なので、ゴルフレンジが練習するところだという認識は持っていなかった。

それを変えたのはベン・ホーガンである。彼はプレーする前だけでなく、その後も練習する。それも日が暮れるまで打ち続けるのだから、周りのプロたちは驚いた。試合の後は酒を飲むかポーカーをするのがプロの生活だったからだ。

「そこまでして勝ちたいのか」
「つきあいの悪いやつだ」

そうした思いからホーガンを変人扱いしていた。しかし、ホーガンは猛練習を積んでいたから恐ろしく強かった。1949年には年間10勝を挙げ、敵なしの強さを誇った。ホーガンは言う。

「人間のスイングは不純物に汚されている。なので、たくさんボールを打って洗練しなくてはいけない」

ホーガンは自分を浄化できると思うと練習するのが楽しかった。

「私は練習がとても好きだった。最高の楽しみだった。試合で勝つことやその他のことよりもずっと楽しかった。ボールを2、3日打たなかったことなど数えるほどしかない。3日休めば、元に戻すのに1カ月から3カ月もかかる気がした。だから毎日練習したんだ」

精魂込めて練習するうち、ホーガンはクラブのどこにボールが当たっているかが詳細にわかった。そこでこんなことまで言っている。

「私は常にフェースの3つ目の溝で打つように心がけているんだ」

我々アマチュアにおいてはもちろん不可能なことだろうが、そうした気持ちで練習すれば、少しはベン・ホーガンのスピリットに触れられるかもしれない。

BEN HOGAN

1912年8月13日アメリカ・テキサス州生まれ。1997年7月25日逝去。170cm、64kg。11歳でキャディを始め、17歳でプロに。破竹の勢いで勝ち続けたが、1949年に瀕死の自動車事故に遭うが、1950年に全米オープンに優勝し、奇跡のカムバックを成し遂げる。1953年にはマスターズ、全米、全英オープンに優勝。メジャータイトル9つ。