2019.3.25

[vol. 015]

空飛ぶミシュラン料理人。ゴルフの休日


旅するひと = 陳 建太郎ちん・けんたろう

1979年、東京生まれ。日本に四川料理を広めた四川料理の父・陳 建民を祖父に、中華の鉄人・陳 建一を父に持つ。赤坂 四川飯店に入社後、2005年に中国四川省成都市の卞氏菜根香(ベンシサイコンコウ)にて本場の四川料理を学ぶ。帰国後は赤坂 四川飯店に勤務するかたわら、四川飯店の三代目として、メディアやイベント出演など幅広く活動。2014年、美食都市シンガポールに初の海外店舗『Shisen Hanten by Chen Kentaro』を出店。2016年から3年連続、シンガポール版ミシュランガイドで2つ星を獲得している。

思い出のワイレア・エメラルド

僕たちはとにかくゴルフが大好きな親子です。父・建一は還暦を過ぎた今もゴルフへの情熱が衰えず、というよりむしろ高まる一方で、年間240ラウンドとプロ顔負けの頻度でコースに出て、ゴルフでも鉄人ぶりを発揮しています。

スコアではまだかないませんが、でも情熱だけは僕も負けていません。僕がこの“病”に感染するそもそものきっかけは学生時代、両親と弟の4人でマウイ島に行った家族旅行でした。ワイレアのエメラルドコース。そこはほとんどのホールが真っ青な太平洋に面していて、フェアウェイはまるで絨毯。いたるところにトロピカルフラワーが咲き乱れて、これぞ楽園というべき景色が広がっていました。

2週間の滞在中、父に付き合って15ラウンドくらいしたでしょうか。仕事もゴルフも明るく楽しくというのが信条の親子です。夢中になってボールを追いかけました。最終18番ホールのティから見た海の美しさは今も瞼に焼き付いています。

ゴルフの素晴らしさは年齢や立場を超えていろいろな人たちと親しくなれる点にあると思います。僕もこれまで日本料理界の重鎮、道場六三郎さんからアメリカのジュニアゴルファーの女の子まで、たくさんの方々とゴルフをする機会に恵まれてきました。ジュニアゴルファーのメーガンちゃんはお父さんが米国籍、お母さんは日本の方で、将来のLPGAツアープレーヤーを夢見て頑張っています。

道場さんは料理界きってのゴルフ好きで、88歳の今も熱心にラウンドされています。先日お会いした時は、今年すでにエージシュートを5回達成したとおっしゃっていました。鉄人の皆さんは本当にお元気です。フレンチの坂井宏行さんのプレーぶりも実にかっこよく、ご一緒するのをいつも楽しみにしています。僕はこの方たちに憧れて料理の世界に入ったのですが、もしもゴルフをやっていなかったら、これほど親しくさせていただくこともなかったかもしれません。

左上=ゴルフの師匠でもある父・陳建一と。コースの写真はいずれもハワイにて。下段は大好きなワイレアゴルフクラブ・エメラルドコース。マウイ島のカフルイ空港からハイウェイを30分ほど走ると到着します。周辺にはゴージャスなリゾートホテルやコンドミニアム、ショッピングモールが点在。全米ベストビーチに選ばれたこともあるワイレアビーチも近く、居心地は最高です。

コックコートとポロシャツと

今から2年前の夏、Iron Chef All Starsというイベントに参加するため、オーストラリアのシドニーに行ったことがありました。道場さん、坂井さん、イタリアンの神戸勝彦さんと父、そこにアジアのトップパティシエであるジャニス・ウォンさんと僕が加わって、6人でチャリティディナーを振る舞うというものです。

会場はあのオペラハウスが使われました。豪州産と日本産の食材を使い、四川料理に仕立てたメニューはとても喜ばれ、日豪の友好のお手伝いをすることができたと思っています。

イベントのあとは、鉄人の皆さんとのゴルフというお楽しみが待っていました。この時のためにスーツケースの中にはコックコートや仕事道具の他に、ゴルフウェアもちゃんと用意してあります。オーストラリアではこれまでにも、国立公園の中にあってカンガルーがその辺を走り回っているコースや、ゴールドコーストのリゾートコースでもプレーしたことがありましたが、イベントをやり遂げた直後の、あの時のゴルフは格別。至福の時を過ごすことができました。

左上=道場さん、坂井さん、父と。笑顔の絶えないゴルフでPlay Fastも徹底しています。右上=2017年ネスレインビテーショナルのプロアマに参加、前夜祭で料理も作りました。そこでお会いしたのが憧れのトム・ワトソンさん。プロアマでは僕の前の組にワトソンさんが! 夢のようでした。下段=郊外に素晴らしいコースが多いのもシドニーの魅力。写真は市街から車でわずか20分のところにあるニューサウスウェールズ・ゴルフ・クラブ。

アジアのゴルフは美味しくて面白い!

現在はほぼ2カ月に1回のペースでシンガポールの店でも仕事をしています。美食都市シンガポールはゴルフ場の食事のレベルも高いので、行かれることがあったらスルーで回ってすぐに帰ってしまわずに、ぜひ食事をされることをおすすめします。なかでもラクサやチキンライス、バクテーなどのローカルフードは試す価値ありの美味しさです。

コースは、1月に国内男子・アジアツアーのSMBCシンガポールオープンが行われたセントーサゴルフクラブをはじめ、レベルが高いところがいくつもそろっています。しかも国の面積が淡路島ほどしかないので、どのゴルフ場に行くにもアクセス良好です。ただし、ちょっと暑いのが玉にキズ。日焼け対策、熱中症対策は欠かせません。

シンガポール滞在中の休日は、インドネシアやマレーシアへゴルフをしに行くこともあります。タナメラというターミナルからフェリーが頻繁に運行していて、片道1時間足らずで行けるんです。

朝はターミナル内のお店でフィッシュヘッドカレーを食べて、パワーチャージをしてから乗船するのがいつものパターン。その名の通り、魚の頭を使ったシンガポール発祥の料理です。ご存知の方は、あれを朝食に?と思われるかもしれませんが、とにかく絶品で癖になる味です。皆さんも機会があったらぜひお試しください。

インドネシアのゴルフは本当に自由奔放で、最初は衝撃を受けました。以前もこのページでバリ在住の方が書かれていましたが、ホール番号順に回らなくてもお構いなし。「飛ばしたホールは?」と聞くと、「あとで回ればいいよ」と言われます(笑)。ミスしても常に前向きで、ナイスプレーが出るとみんなで大喜びする。ゴルフコースはハッピーな時間を過ごす場所なんです。

ハッピーといえば、中国四川省の成都で修業していた時に、人生初のホールインワンを出したことがありました。自分でも驚きましたが、中国ではホールインワン達成者には独特のしきたりがあると聞いてまたびっくり。達成者はプレー代が無料になって、そのかわりにキャディさんにご祝儀をはずむという暗黙の了解(?)があるのだそうです。結構な出費になりましたが、あとでゴルフ場から立派な盾が送られてきました。今もそのゴルフ場のハウスの壁には、僕の名を記したボードが掲げられているはずです。

上の写真=ミシュランガイド・シンガポールで2つ星を受賞した時の様子。左=シンガポール店にて。かつて祖父の陳建民が日本で四川料理を広めたように、僕はシンガポールの人たちに四川料理の美味しさをもっと知ってもらいたいと思っています。右=四川のゴルフ場でホールインワンを達成した時の証拠写真。

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Wailea Golf Club Emerald Course ワイレアゴルフクラブ・エメラルドコース
ハワイを代表する絶景コースのひとつ。ハレアカラ山麓の一大リゾートエリアの中にあり、リゾートホテルやビーチへのアクセスもいい。ティは各ホールに4~6面。それぞれのレベルに合わせて楽しめる。
100 Wailea Golf Club Drive, Wailea, Maui, Hawaii
18H 6825Y P72
開場/1994年
設計/ロバート・トレント・ジョーンズJr
allhawaii
ハワイ州観光局の総合ポータルサイト。ゴルフ情報も満載。
オーストラリア政府観光局
オーストラリアの情報はこちらから。
Shisen Hanten by Chen Kentaro
シンガポールの四川飯店の公式サイト。
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心地よい旅のために心地よい綿の肌触りをお楽しみください。リラックスしてナイスプレーができそうです。