道天好転

2016.6.21

[vol.001]

人生の忘れ物を拾いに此の地へ

TEXT : YOSHIO OSAE

『風雲急を告げる』という意味を噛みしめる

此の地でしばらくの間、生活を営むことにしたのは自分の意思ではありません。人生の大切な忘れ物を拾い、それを支え、それを見届けるのが目的です。その忘れ物の正体は、機会を見計らってご紹介しますが、今回は新たなスタートを切ったコラムに相応しいお人とのお話を進めることにします。

その前に『此の地』を簡単に説明すると、相模灘を見渡す東伊豆です。時の人・舛添都知事の別荘のある湯河原から、約二十数キロ南下した場所です。

さて、此の地に来てから数ヶ月経ちましたが、珍事件や命に関わる事も起き、安堵できる一時もありませんでした。それは原稿を書いている今も変わらず、何かと悪戦苦闘、闘う日々を送っているというのが正直なところです。

住処は山間に面した中腹にあります。山間ですから天候も急変しやすく、ちょっと目を離した瞬間に豪雨ということも珍しくありません。昼夜の温度差も都会の比ではなく、気候に対する警戒心も強まります。

そんな緊張感に満ちた大型連休の前半、好天に恵まれた朝を迎えたのですが、どう言う訳だか、急に暗雲が天を被い、部屋の照明をつけることにしました。すると、携帯の着信音(西部警察メインテーマ)が鳴り、おもむろに携帯を耳に当てると、相手は俳優の舘ひろしさんでした。あまりにも着メロと同化、やや出来過ぎのように聞こえるかも知れませんが、私にとっては日常的です。

「明日はなにしているの?」

これは舘さんにとっても、私にとってもゴルフのお誘いの合い言葉になっています。この場合、身内や大切な友人が危篤や死んだ場合を除いて、つまり「万難を排して」お相手するのが、私が勝手に作ったルールです。ちなみに舘さんとゴルフを御一緒させてもらうようになってから、このルールを破ったことは一度もありません。

というわけで、ゴルフの件は当然快諾しました。しかし、電話を切って「あわわっ」と気付いたのですが、ゴルフ場が千葉県の成田国際空港近郊……。此の地から約220㎞は離れています。スタート時間は遅めですが、ハードな1日になりそうです。

交通手段は2003年型アルファロメオ147ツインスパーク・セレスピードです。最近クルマ屋さんを営む友人から、半ば強引に身請けを命じられました。色は独特のアルファレッドですが、「いい歳をして赤とは……」と渋い顔をすると、「還暦に相応しいと思って選んだ」と友人に言われると、それはそれで感謝しなければと意を決めてシートに座ったわけです。

それはともかく、話を急ピッチで進めますが、大型連休の渋滞も避けられゴルフ場へ到着すると、舘さんは練習も済ませレストランで朝食中でした。

玉子2個のハムエッグは、黄身の色が鮮やかで(レア)、これが舘さんのお好みです。トースト2枚、サラダ、薄めのコーヒー3杯というのが舘さんの朝食スタイルです。

「今日は僕のスイングと、ゴルフクラブ(ONOFF)の調子(マッチング)を見てもらおうと思って……。何か気付いた点があったら、教えてよ」

舘さんから真顔でそう言われても、もはや、私なんぞが指摘できる点は皆無で、それより気になったのは「舘さんは何を目標にゴルフに精進しているのか……?」という単純な疑問です。舘さんのゴルフに対する真意を、あらためて深く探りたくなりました。

スタートホールから舘さんは絶好調で、飛距離も方向性も安定していました。ドライバーの飛距離こそ私とほぼ一緒ながら、アイアンは舘さんの方が2番手ほど飛んでいます。舘さんのクラブセッティングは、ニューモデルのAKAシリーズです。次回、そのクラブセッティングのスペックを紹介しようと思いますが、明らかに前モデルを凌ぐ性能を誇っています。舘さん自身がよく口にする「今までのオノフとは別次元のクラブに仕上がっている」という言葉が、それを象徴しています。

素晴らしいゴルフクラブとは、ビギナーからプロまで、その力量に関わらず実感でき、その性能を共有できます。私もそれを実感したひとりですが、舘さんのプレー内容の変貌ぶりには、あらためて驚かされました。

「芯はくっていないけどね…(笑顔)」

プレー中の舘さんは笑顔を絶やしません。キャディーさんにも笑顔。行き交う女性プレーヤーにも笑顔。レストランのウェイトレスさんにも笑顔。そして女性ゴルファーから声をかけられれば、やさしく笑顔でご挨拶。

舘さんが大人の男性として女性と接する瞬間は、周囲の人たちをも明るく笑顔にします。

「女性にはやさしく接してあげなきゃ、いけないよ……」

これも舘さんの口からよくでる言葉ですが、傍でこの様子を見ていると、つい真似をしたくなりますが、私がやると変態に思われるので真似はできません。

さて、プレーも終了してスコアをチェックすると、舘さんは78(フルバック)。

「久し振りに70台でプレーできてよかった」

舘さんのプレー内容からして、当然のスコアでしたが、私が気になったのは「久し振りの70台」という言葉でした。多分、それこそ一緒にプレーした私のスコアを気遣っての言葉と思いましたが、次のひと言でその良き解釈は音を立てながら崩壊しました。

「ショットはまだまだ芯をくってないけど……」

「えっ?」

もちろん、舘さんに対するスイングアドバイス、そしてクラブセッティングに対するコメント……、私にはありません。舘さんがゴルフの目標設定基準をどこに置いているのか、見えなくなってきました。

そして、舘さんと別れ際、私の後ろからこんな声が聞こえてきました。

「進化する66歳! どうなのよ? あはは!」

良い道具(ONOFF)を得た舘さんは大変失礼ながら「かなり、はしゃいでいます」。

普段はまったくみせない、舘さんの大人気ない仕草や言動を拝見すればするほど、良い道具をもたせた大人は少年になり、女性は乙女になるのでしょう。

大人を自負する皆さんも、ONOFFではしゃいでください。

yoshioosae
各出版社の創刊編集長、編集局長を歴任。ゴルフ専門誌の編集長を12年間務めた。現在は執筆とプロデュース関連で活動中。