道天好転

2016.6.28

[vol.002]

官能小説を装備したアルファロメオ

TEXT : YOSHIO OSAE

胸に突き刺さるツインカムエンジンの咆哮

そのサウンドを「グォーン」と唱える人も、「クォーン」とたとえる人も、言いたいことは結局同じで、アルファロメオ147の2リッターツインカム(DOHC)エンジンは刺激的で、そして官能的なクルマということです。発売から十数年経過した今でも多くのアルフェスタ(アルファロメオのエンスージアスト)から、このモデルは支持(愛)されているわけですが、一度自分で所有するとその理由がいくつか分かってきました。

僕をその官能的と思わせた、魅力のごく一部を紹介してみます。

クルマの性格(性能)を大きく左右するのがエンジン形式ですが、この147に搭載されている直列4気筒エンジンは、アルファロメオの真骨頂とも言うべきエンジンでしょう。最大出力こそ150馬力、数字だけ見れば「だからどうしたの?」という印象を受けますが、数字の裏に秘めたアルファロメオの世界は、他メーカーではけっして真似のできないミステリアスなものです。

あえてミステリアスという言葉を使ったのは、エンジンの構造はシンプルですが、ひとつひとつのパーツに絶妙な味つけがされているからです。エキゾースト関連や吸気関連はその代表例で、材質も構造も特徴のある物とはいえません。ところが、直列4気筒というトルク感を味わうには最適なエンジン形式とセッティングすると、これが「あら不思議……」というほど官能的な動力性能、そしてサウンドを奏でてくれます。

アクセルを踏み込めば吸気側がリニア(俊敏)に反応し、まずはエンジンが、エアーを大きな口で大量に吸い込んでいるような錯覚に陥ります。その吸気音に共鳴したかのようにエンジン回転数が跳ね上がり、完全燃焼されたガソリンの抜け殻がマフラーから排気される様をエキゾーストノートで伝えてきます。

さらに路面の変化やそれに順応するサスペンションの動きが、心地よい振動に変化しハンドルとシートから感じ取れます。これらすべてが、アルファロメオを官能的なクルマに仕上げた立役者です。特に本革のシート形状と適度な硬さのクッションは絶品で、長距離を走っても疲労は少なく、クルマを操作する情報も十分に伝えてくれます。このシートに座るだけでもアルファロメオの魅力を感じる事ができるはずです。

アルファロメオ147は、実はさほど速いクルマではありません。正直に申し上げると、スタートダッシュは軽自動車のバックショットを拝まされ、高速道路では実速度より緊張は高まります。官能的な魅力は体感速度と実速度の誤差にもあります。超高速でなければスポーティな感覚を味わえない現在のスーパースポーツカーより、そこそこのスピードでもアルファロメオ147ならスポーツ感覚を味わえます。こんなミステリアスで、官能的なクルマは日本ではもう生産できないはずです。

痘痕(あばた)もエクボというMな心境

ヨーロッパ車との主流と言えばハッチバックモデルですが、その中でもアルファロメオ147は抜群のデザインと賞賛されました。初期デザインはワルテル・デ・シルヴァ他が担当、後のフェイスリフト(マイナーチェンジ)には、日本でも知名度の高いジョルジェット・ジウジアーロが手を加えました。当時としてはまさに、名だたるイタリア工業デザイナーがこのクルマに関わったということです。

僕個人としては、曲線を活かしたバックショットが気に入っています。ハッチバックモデルの特徴でもある、ややテールアップした姿も可愛らしく見えてきました。ややティアドロップ(涙目)のヘッドライトも哀愁が漂っていて、古き良きイタリア車の流れを継承しています。目(ヘッドライト)を吊り上げて、ギラギラ威嚇するような今のクルマとは異なる、暖かみを感じさせてくれます。

とは言え、アルファロメオ147はかなりのお転婆イタリア娘と言わざるを得ません。最大のウィークポイントはミッションです。マニュアルミッションはともかく、独自のセレスピードミッション(セミオートマチック)に、オーナーは多かれ少なかれ泣かされているはずです。セレスピードを分かりやすく言えば、クラッチ操作が不要な(クラッチペダル無し)マニュアルと説明できますが、その構造上耐久性にやや難があり、メンテナンスを怠ると手痛い思いをさせられます(最悪の場合は走行不能、修理代も高額になります)。

エンジンが始動して、「走る・止まる・曲がる」を当然のようにしてくれる国産車とは、この点が大きく異なり、常に手を差し伸べなければトラブルが起きやすくなります。教習所で習ったドライブ前の点検や日常点検は、それこそ日常的に行わなければなりません。これを怠ると、イタリアのお転婆娘に瞬間で変貌します。いずれにしても、クルマのコンディションに気を配れる人であれば、アルファロメオの官能的な世界をいつでも楽しめます。

スペースの関係で今回は幕としますが、アルファロメオ147の積載能力はゴルファー2名、ゴルフバッグは2個というのが限界です。ゴルフが好きで、クルマが好きな若いカップルも大変よく似合いますが、まだまだ血気盛んな叔父様が乗っても一目置かれるはずです? アルファロメオ147、移動の道具としてその価値はかなり高いと感じています。

yoshioosae
各出版社の創刊編集長、編集局長を歴任。ゴルフ専門誌の編集長を12年間務めた。現在は執筆とプロデュース関連で活動中。