道天好転

2017.04.03

[vol.041]

1%の成功と快感。99%失敗の糧

TEXT : YOSHIO OSAE

「命は取られない」と、言われましても……

シーズン開幕を告げる「ゴルフフェア2017」が無事終了。これを境に、寒暖の差があろうと、冷たい雨がシトシト降ろうと、桜がまだ満開でなかろうと、ゴルフ好きにとっては胸がざわついてきます。きっと本能がそうさせるのでしょうが、暁より早く目が覚める習性だけは、時を選んでほしいと願う今日この頃です。

さて前回は、ゴルフフェアのオノフ出展ブースのお題でした。その開催期間中、古巣の東京ビッグサイトでは「東京モーターサイクルショー」が催されていたそうです。というのも、おっちょこちょいのゴルフ好きの友人が、間違って東京ビックサイトへ足を運んだお陰でそれが発覚しました。その友人は幸か不幸かバイクも趣味なので、ゴルフフェアは諦め、後ろめたい心境でそのままバイクを鑑賞したそうです。

ところが、友人はそこで偶然にも、僕も含めて大変お世話になった元・某自動車メーカーの偉い役員さん(以下A氏)と遭遇。その際友人が、A氏から僕宛のメッセージを預かってくれました。その内容は……。

「君から拝借しているアイアン。もう時効だから忘れてくれ」

僕はとうの昔に忘れていましたが、この一文で思い出しました。せっかくメッセージを頂戴したわけですから、直接メールで返信しました。

「確かにアイアンセットを渡しました。もちろん時効です。一度渡したクラブは、もう戻ってこないと思うのが、ゴルファーの暗黙の常識です」

結局、証人喚問のような短いメールを交わして終了。実は、A氏と僕は、ほぼ同時期にゴルフをはじめ、ほぼ同時期にクラブをいじりはじめ、ほぼ同時期に100を切りました。歳は僕より一回りほど上で、気力体力十分、僕なんぞはどう逆立ちしても、足元にも及ばない偉人です。

現役だった頃のA氏は超多忙。ゴルフにお供したのは片手で数えられる程度。その回数こそ少ないですが、そのプレーぶりは圧巻でとても印象に残っています。ドライバーは曲がろうとも、とにかく飛ばす。ピンまでの最短距離が林越えと分かると、無謀にも林越えを狙って失敗する。失敗しても笑う。そんなプレースタイルでした。

「ゴルフはミスを減らし、ミスをカバーするのがゴルフという人もいる。しかし、あれはどうかね……。1%の成功の可能性があれば、それにチャレンジするのが楽しい。ゴルフ本来の快感は、この1%に秘められている。99%の失敗にびくびくしていたらゴルフに負ける。命は取られない」

A氏の仕事ぶりもこの言葉と同様で、その昔は、お目にかかると耳に栓をしたくなるほど、同じ事を聞かされた記憶があります。要約するとこんな感じでしょうか。

「企画して、開発して、その99%は失敗。失敗を重ねて1%の成功を導く。99%失敗した糧がなければ世界と闘えない。失敗する勇気がなければ世界のトップになれない。」

そのお言葉どおり、A氏は世界の舞台で大活躍しました。しかし、ゴルフはうまく事が運ばず、5年ほど経った時点で、失敗をいっぱい重ねて100前後でした。

もっともスコアが伸びない理由は明らかで、A氏にとってゴルフ場は、まさにクラブの実験室だからです。クラブをせっせといじっては、ゴルフ場で試打ラウンドする。ご本人にとってスコアメイクは二の次で、このプレースタイルは、今もまったく変わっていないようです。

ゴルフに限らずスキルアップの秘訣は、自分の能力の100%を超えた領域に自分を置くこと。自分の限界を超える勇気があれば、そこにスキルアップの手がかりが、ぼんやりとみえてくるはずです。もし、1%の成功率しかないショットでも、それが自らのポテンシャルを覚醒させる、運命のショットになるかもしれません。

さらにゴルフクラブも同様のことが言え、クラブを変えることで、自分のポテンシャルが目を覚ますことも良くあります。そんな事例を多く見てきました。

というわけで、セオリーに幅寄せされず、失敗を恐れず、自分の限界を超えたフィールドを歩いてみるのも、時にはよろしいかと思います。

1日3回ずつ襲ってくる厄介な相談、面倒なメール、出たくもない電話

A氏が口を酸っぱくして僕に説いてくれたのが「1日3回の許容説」。A氏が伝えたかったことは、仕事に限っていえば相談や商談、メールや電話それぞれ1日3回、嫌なことが起きてもそれが普通、許容範囲にしなさい、という意味です。さらに深読みをすると「打たれ強くなれ」というメッセージでした。

この言葉をA氏に無断で、ゴルフに引用させて頂くとこんな感じになります。
「1日3回のミスショット。1日3回のミスパット。1日3回のミスアプローチ」

これだとミスの合計はたったの9回。実際はこんな程度ではすみませんが、この回数を自分なりに変えればプレーが楽になるはずです。いずれにしても、ゴルフのミスのほとんどの原因は精神的なもの。要はミスに対する考え方次第というわけです。

これはあくまでも僕の経験ですが、ミスを犯した自分をいくら叱咤しても、その後のプレーが良くなることはありません。それより、予想されるミスの回数を多めに設定しておけば、精神的に楽になり、プレーも良い方向に進みます。

そして、もし、想定したミスの回数より少なければ、ゴルファーの自分を人知れず褒めてやってください。それが、次のプレーに繋がります。というのも、自分に限っていえば、どんなに良いショットを放とうと誰も褒めくれない現実……。というところで、今回は失礼します。

yoshioosae
各出版社の創刊編集長、編集局長を歴任。ゴルフ専門誌の編集長を12年間務めた。現在は執筆とプロデュース関連で活動中。