2017.8.24

[Part. 1]

イップス


ゴルフに携わる方であれば、「言葉自体を全く耳にしたことがない」という方は少ないのではないかと思います。昨今メディアでも、頻繁に取り上げられ、世界で活躍した多くのゴルファーたちも、自らがイップスに悩まされた経験について、語ることも少なくありません。
そしてこの言葉をご存知の方は、それが、楽しかったり、嬉しかったりするものではなく、むしろ辛かったり、できればなりたくないものであろうというイメージをお持ちの方が大多数であろうかと思います。イップスは1930年前後に活躍したトミー・アーマーというゴルファーによって名付けられたものとされていますが、現在は野球やテニス、ダーツや楽器演奏の世界でも、多く報告されています。

一流選手を悩ませ、ときには引退にまで追い込む「イップス」。
1日でも長く、有意義なゴルフライフを送るためにも、言葉だけでなく、「どんなものなのか」も、正しく理解していきたいところです。

私は、現在ハバナトレーナーズルームという治療院で、スポーツトレーナーをしております石原心と申します。日々、野球選手、駅伝選手などプロアスリートから、ゴルフを始め、スポーツを楽しむ方などにトレーニングやマッサージ、鍼灸などで身体のサポートをさせて頂いております。

そんな私が「イップス」という言葉に出会ったのは、20歳、大学生の時でした。
初めて「イップス」という言葉を知った時、「私が高校球児時代に悩んでいたのはまさしくこれだ!」と、衝撃を受けました。何を隠そう私自身、イップスという言葉に出会う前に、イップスという「経験」に出会っていたのです。

高校の野球部に入部した15歳の私は、まさに典型的なきっかけで、典型的なイップス症状に悩まされていました。明らかに自分に起こっている異常事態に気付きつつ、その正体を突き止めることができずに、悩んでいました。当時は今ほどインターネットも普及しておらず、情報収集もできない時代でした。
大学のスポーツ科学部に進学し、「イップス」という言葉に出会い、本格的にイップスの研究を始めました。高校時代に自らが悩まされていた症状の「名前」を突き止めたことにある種の喜びを感じましたが、調べれば調べるほど、その原因の特定や改善の難しさが増すばかりで、頭を抱える日々が続きました。そんな中、ある日、キャンパス内でソフトボール部の練習を何気なく眺めていたときに、「野球のボールよりも大きいソフトボールなら、イップスが起こりづらそうな気がするな」と、イップスを経験した私の手のひらが囁きました。このひらめきがきっかけに、卒業論文「イップスについて」を書き、大学卒業後にさらに研究を進め、卒業から10年後の2017年2月に「イップス〜スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む〜」(大修館書店)を出版させて頂きました。
出版後に多くの読者の方から頂いたご意見は、大きな励みになるとともに、イップス改善のヒントをたくさん頂いています。

次回以降「イップスって一体なんなの?」という疑問をわかりやすくお伝えしながら、ゴルフとメンタルの関係についてのお話をさせて頂きたいと思います。

1982年群馬県生まれ。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業。現在、ハバナトレーナーズルーム恵比寿・代表。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本トレーニング指導者協会公認トレーニング指導者(JATI-ATI)トレーナーとして、数多くのアスリートのトレーニング、コンディショニングをサポートする他、アスリートのフィジカルコンプレックスをなくすことを目指し、キューバスポーツ研究、イップス研究を行っている。また、柔道グランドスラム・キューバ代表サポート(2011年~)、ワールドベースボールクラシック2013・キューバ代表サポートなどの活動を行っている。
著書『イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)