2017.12.14

[Season.1-9]

「極端に太くしたグリップを使ってイップス改善」


寒さも本格的になってきましたが、皆さんお怪我などされず、ゴルフを楽しめてますでしょうか?この時期は体の「冷え」との戦いです。入念なウォーミングアップはもちろん、運動後の十分なクールダウンが、怪我の予防には不可欠です!良いスコアのためには、良い練習。良い練習のためには、良いカラダです!体のメンテナンスをしっかりして、寒い冬のゴルフを楽しみましょう!

さて、前回はイップスの改善方法の一つとして、「グリップの握り方」に注目しました。グリップを絞るように握ることによって、イップスの症状が出やすい肘から下の部分(少し専門的な言葉で言うと「前腕部や手部」)の動きの自由を奪い、イップスの症状を出づらくする、というものでした。
イップスは「不安」や「プレッシャー」などの緊張状態から、自動化した動作に過剰な運動調節を加えてしまう症状であると考えられています。

「失敗しちゃいけない」
「動作をしっかり細かく調節しなきゃ」

と考えた脳は、最も細かい調節が得意な「手や指」の部分に過剰に仕事を任せてしまうんですね。

例えば、熟練ゴルファーにとってのショットは、すでに「自動化した動作(何も考えずに行える動作)」であると言えます。そのショットの動作では、体幹部や下半身など、何も考えずにバランスよく体を使ってショットを打てていて、手や指はせいぜい「クラブが手から落ちないため」くらいの仕事しかしていないようなものです。そこへ突然、脳から「働け、働け、お前がショットを行え」と命令が来るわけですから、それは震えたり、固まったりしたくもなりますよね。

つまり、イップスを改善するための方針は、

「失敗の原因の部分の症状(震えや硬直など)を抑えて動作を行うことにより、動作の成功率を高め、自動化した動作を取り戻す」

というものになります。その方針を軸に、選手の症状によって様々なエクササイズをご提案しています。その一つに、ゴルフ、テニスなどのグリップ系の競技のイップスに非常に効果の高い改善方法がありますので、紹介させて頂きます。

それは、「極端に太くしたグリップを使用すること」です。

「えっ?」と思われる方も多いかと思いますが、『百聞は一「感」にしかず』。現在、イップスに悩んでいる方はお試しください。そして、周りにイップスで悩まれている方がいらっしゃいましたら、オススメしてみてください。

太いグリップの作り方は、いたって簡単。ゴルフショップに行って、グリップテープを3〜4本ご用意頂き、クラブのグリップ部分にぐるぐると巻くだけです。
「太さ」の基準は人それぞれですので、「いつも使っていたものよりも、ずいぶん太いな〜」と感じるくらいまで、感触を確認しながら「ぐるぐる」巻いてみてください。完成したら、試しに素振り、そしてできることなら練習場で実際に打ってみることをオススメします。

■なんで太いグリップが「イップス退治」に効果的なのか?

ふざけているようにも聞こえてしまいそうな「太いグリップ方法」ですが、実は、学会での発表行ったり、複数の専門家のご意見も伺いながら、科学的な考察もされている、「ちゃんとした」方法なのです。なぜ、太いグリップを使ってショットをすると、イップスの症状が抑えられることが多いのか?その秘密は、やはり前回のコラムでお伝えした「前腕部の自由を制限した握り方」同様、その自由度の低さではないかと考えられます。
これは、ゴルフやテニスなどのグリップ系のイップスだけでなく、野球を始めとしたボールを投げるタイプのイップスでも、ボールの大きさを大きくすることで大きな効果がみられます。

イップスにお悩みの方は、ぜひお試しください!

1982年群馬県生まれ。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業。現在、ハバナトレーナーズルーム恵比寿・代表。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本トレーニング指導者協会公認トレーニング指導者(JATI-ATI)トレーナーとして、数多くのアスリートのトレーニング、コンディショニングをサポートする他、アスリートのフィジカルコンプレックスをなくすことを目指し、キューバスポーツ研究、イップス研究を行っている。また、柔道グランドスラム・キューバ代表サポート(2011年~)、ワールドベースボールクラシック2013・キューバ代表サポートなどの活動を行っている。
著書『イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)