バイロン・ネルソンはベン・ホーガンとサム・スニードと同じ1912年に生まれ、この3人は良きライバルとして当時のトーナメントを大いに盛り上げた。
ネルソンは正確なショットと巧みなアプローチで、’45年にはPGAツアーで11連勝という快挙を成し遂げた。この年は18勝を挙げ、未だにその記録は破られていない。
ネルソンを強くしたのは、徹底した自己分析とそれに基づく基礎練習にあった。彼は小さな黒い表紙のノートに、試合後、その日のプレーの全容を書き綴り、自分の長所と短所を分析した。そして、その分析に基づいて練習を行い、短所を克服していった。
最初はアプローチで苦手だった転がしを徹底練習した。その結果、チップインの確率を大幅に上げた。対戦相手は8番アイアンを握ったネルソンが常にピンを狙っていることに恐怖を覚えたという。
ネルソンはその8番でスイングの基礎固めも行った。8番でのフルスイングをゆっくりとしたスピードで、100ヤードの距離をきちんと打てるようにした。目標に百発百中で打てるようにしたのだ。これにより、スイング軌道がいつも同じになり、どんなクラブも正確に打てるようになった。当時、そんな練習を行うプレーヤーはどこにもいなかった。
ネルソンは飛距離の出るほうではなかったが、この練習によって、飛ばし屋のサム・スニードを破ることができたし、ベン・ホーガンに競り勝つこともできたのだ。
ネルソンのスイングはニーアクションを使って長いインパクトゾーンを作るもので、それが特にアイアンショットの正確性を生んでいた。手は使わずに足で打つスイングだったのだ。