レザーヘッドカバー / PRODUCTS INSIDE STORY Vol.002

「いい天気で良かったね。」夫の言葉は、陽だまりのように暖かい。
冬に父が他界した。何年も前から病気で、でも、頑張っていたのだけれど。結婚するまでずっと一緒に暮らしていた父。なかなか、立ち直れずに時間が過ぎた。49日があけて、塞ぎ込む私を夫がゴルフに誘った。穏やかな天気に、気分が持ち直してきた。「このクラブいいね。」夫が手にしているのは、父のドライバー。私が手にしているクラブには、父のヘッドカバーが被っている。夫と形見分けをしたものだ。男勝りの、真っ黒なレザーのタイプ。父が自慢していたものだ。夫のショットを待つ間に、よく見ると、キズがいくつか付いている。いつ付いたものだろうか。私とのラウンドの時だろうか。「いくよ。」「今日はレギュラーティからでいいの。」父と同じティから打ちたくなった。力を抜いて振り切った。父のアドバイスの通りに。
「ナイスショット！いいね。」父の声かと思った。振り返った私に夫が驚く。「どうしたの？」「なんでもないの。」セカンド地点へ歩きながら、熱いものがこみ上げくる。（お父さん、お父さん、私、頑張るから。大丈夫だから。）
ドライバーにカバーをつけながら、ぎゅっと握り締めて歩いた。

製品詳細

浅草橋にて創業し、紳士用の高級皮革小物を製造してきた山万との共同開発商品。百貨店に収める商品の生産を請け負ってきた工房ならでのこだわりが随所にあります。皮選びから、縫製前の皮の仕上げ、割り・皮すきの丁寧な仕事、職人による使い込まれた機械での縫製、仕上げ、箱入れまで。皮本来の力を生かすために、妥協を許さない様々な工夫があります。
今回のゴルフ製品は、山万では初めての挑戦でした。クラブオノフの限定商品としては、高級革財布のような、細かく上品な仕上げが欲しくて、無理を言って制作していただきました。出来上がったものは、本当に上質で他に無いものとなりました。
ブラックのしぼ皮に、同素材のブラウンのナンバー。クラシックな佇まいは、キャディバッグの中でゴルフを誘います。ドライバー、3w、5w、UT用に2種類、さらにアイアンカバーとパターカバー。オノフの頒布のキャディバッグと組み合わせれば、熟練のゴルファーのようですし、レボレザーなどと組み合わせれば、ダンディな紳士に。キャディバッグが変わっても、長く愛用できるレザーカバーです。

紳士用の高級革財布や名刺入れを製造してきた工房「山万」。均一で丹念なステッチ。エッジの美しい処理は、下準備の皮の丁寧な仕上げがあってこそ。重ねたときに、横から平らに見えるのが、その証拠です。エイジングを考えての皮選びは、長年携わってきた工房ならでの視点です。
山万ホームページ＞＞http://www.ymmn.jp/

紳士革小物の技術は、ヘッドカバーの各部に生かされています。裏側を見てください。きれいな裁断と、等間隔のステッチ。丁寧な仕事が、使用時のほつれや痛みを防ぎ、長年の使用を支えてくれます。裏生地も目の細かい、スベリがよく、耐久性のあるものを選んでいます。

生後6ヶ月の仔牛皮を使用しています。皮の滑らかさ、しっとりとした質感、弾力性を保つために加工などをしていない”素上げ”の皮革です。一般的には、着色剤や仕上げ剤、防水加工などの化学薬品を使用し、塗膜をつくり堅牢度を上げたり、傷を隠したりします。それらの無い素上げでは高品質な皮を選ばなければならず、稀少な皮革になります。