さいとう・ひろし/1934年山梨県生まれ。株式会社シャトレーゼホールディングス、株式会社シャトレーゼ代表取締役会長。山梨県立日川高校を卒業後、54年に甘太郎、64年に大和アイス設立。67年に2社を合併してシャトレーゼを設立し、現在は国内840店舗、海外180店舗を展開。商品をすべて自社工場で生産、直売店で販売する経営スタイルを貫き、ワイナリー、ゴルフ場、ホテルなどのリゾート事業にも進出している。2018年、起業家表彰制度EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーのマスターアントレプレナー賞を受賞。ゴルフ歴67年、ベストスコア75。
パインハーストとオーガスタを巡った10日間
全米プロ、全米オープン、ライダーカップなどを開催。ドナルド・ロスの代表作として知られるパインハースト。
数々のゴルフ旅の中でも最大の思い出といえば、オーガスタナショナルでのラウンドです。マスターズでは例年、最終日の翌日に関係者を招待する習わしがあり、2008年、その1人に加えていただきました。最初に話があったのは1年近く前。オーガスタナショナルにはそれまで観戦に行ったこともありませんでした。
当時、私は74歳になっていましたがベストスコアを更新するなどゴルフ人生の中でも好調期を迎えていました。しかもこの旅、オーガスタに行くのは旅の後半で、前半はパインハーストに滞在します。先日、4度目の全米オープンが開催されたあの場所です。断る理由などありません。
ニューヨーク経由でダーラム国際空港から車で1時間半。パインハーストはNo.1からNo.8までの8つのゴルフ場(現在は10コースに増設)と6つの宿泊施設を擁する一大リゾートです。
マスターズ前週の日曜夕刻に入り、翌月曜にまずNo.4をラウンド。そして火曜日はいよいよNo.2。全米オープンの開催コースです。有名なお椀形のグリーンや巨大なバンカーなど、さすがは超難関と呼ばれるコースでした。
5コース共通のクラブハウスにはこれまで開催されてきたトーナメントの記念品が飾られ、ハウスから1番ティに向かう途中には1999年の大会に優勝し、飛行機事故で亡くなったペイン・スチュワートの勝利の瞬間をとらえた銅像がありました。
上・左下=1999年全米オープンの最終ホールで劇的な優勝を決めたペイン・スチュワートとモニュメント。右下=クラブハウスとパインハーストのマスコットキャラクターのパターボーイ。
ホールアウト後、飛行機と車を乗り継いでオーガスタに入り、旅は後半に入ります。翌朝まず近隣コースをラウンドし、木曜からはマスターズ観戦の合間にまた別のコースに出かけるというスケジュールです。
イメルマン選手が初優勝を飾り、タイガー・ウッズ選手は猛追及ばず2位となった最終日を見届けて迎えた月曜日。ついにラウンド当日がやってきました。
朝、ホテルを出てオーガスタナショナルに着くと、クラブハウスの前に白いつなぎ姿のキャディの大集団が待機しています。ざっと100人以上はいるでしょうか。なぜこんなに?と目を丸くしていると、私達アマチュアにも1人に1人ずつ付くのだといいます。
オーガスタナショナルで当日の専属キャディと。
専属キャディが必要なことはすぐに理解できました。キャディはまずドライビングレンジで私の番手ごとの飛距離や球筋をチェックし、それを基にラウンド中、状況や力量に応じてアドバイスをするのです。
オーガスタナショナルのフェアウェイは広々としていますが起伏が大きく、林に入るとさらに大変です。グリーンはやはり速くてアンジュレーションが難しい。グリーンに止めるにはどの角度から打たなければならないか、ルートはかなり絞られます。しかもこの日はマスターズ最終日と同じピンポジション。キャディがいなければまともにラウンドすることもできなかったと思います。
旅の最大のハイライトは16番で起きました。グリーンが池に向かって下っている170ヤードのパー3で私はなんとバーディ。テレビで観るよりも急傾斜でしたがキャディの助言どおりに運ぶことができ、うまく寄ってくれました。
砲台グリーンや受けグリーンの多い日本のコースでは手前からが鉄則のようになっていますが、奥につけて戻すほうがピンに寄りやすいホールもある。これは発見でした。
翌日の火曜日も近くのコースに出かけ、翌朝帰途に就きました。丸10日間の滞在中に4日間の観戦と7ラウンド。とても贅沢で、思い出に残る旅になりました。
90を切ると宣言してスタート、43・44の87で回ることができました。有名なスーベニアショップにも立ち寄り、グローブなどをお土産に。
75歳でエイジシュート、86歳でスイング改造
昨年まで白ティを使い、89歳最後のラウンドも89のエイジシュートを達成。今年90歳になり白ティは卒業しましたが、プレーは常にノータッチでOKなしの完全ホールアウトと決めています。
初めてクラブを握ったのは23歳、お菓子の製造販売を始めて3年ほど経った頃でした。ゴルフ場にいるのはほとんど社長や支店長という時代です。
親子ほど年の離れた大先輩ばかりでしたがすぐに打ち解け、皆さんにはたいそう可愛がってもらいました。ゴルフのマナーや技術だけでなく経営者としてのあり方も教えていただき、付き合いも広がっていったのです。
企業経営とゴルフには共通点が多いこともわかってきました。今が攻め時という時もあれば、ここは一度刻んでという時も、途中で戦略を練り直すこともある。問題に気づいたら目標と計画を立て直し、改善に結び付ける点もよく似ています。
そんな戦略的なところが大いに気に入り、私は見事にゴルフにはまりました。何かスポーツでも始めようかといった軽い気持ちだったのが、週3回はコースに出ないと気が済まなくなっていたほどでした(笑)。
夢中になりすぎた結果、このままでは会社をつぶしてしまうと考え、30歳でプライベートのラウンドは一切封印する決心をしました。当時のハンディは12。シングル入りも見えていましたがそれもお預けにして、どうしてもお付き合いの必要なラウンドだけ月イチ程度で続けました。
その後、事業を拡大して会社が軌道に乗り、一段落したのが60歳になった頃。そろそろいいかと30年ぶりにゴルフを再開しました。すると時間や気持ちに余裕ができたのがよかったのでしょうか、すぐにベストスコアを更新するようになり、ハンディも過去最高の5に到達。自宅の裏にベントグリーン6面、最長120ヤードの練習場を造り、練習に打ち込んだおかげでアプローチショットに自信がつき、75歳で初めてエイジシュートを達成することもできました。
左=シャトレーゼゴルフアカデミーを開講している春日居ゴルフ倶楽部。右=シャトレーゼ ヴィンテージゴルフ倶楽部のレストランのデザートバイキング。
今から4年前、86歳の時にオーストラリアで長らくゴルフを教えていた日本人プロと出会ってスイング改造に挑戦し、おかげで飛距離が伸びました。その時の教えが理論的でシニアにもわかりやすい。これは皆さんにもぜひ体験していただきたいと、当社のゴルフ場でプロのレッスンイベントを開催。グループ職員も学び、それがシャトレーゼゴルフアカデミーを立ち上げるきっかけになりました。アカデミーは現在、春日居ゴルフ倶楽部で開講しています。
グループのゴルフ場は現在、国内外に19か所。来場者の皆さんにはゴルフの楽しさとお菓子を食べる楽しさを両方味わっていただけるよう、コースを整え、ケーキやアイスクリームをたっぷりご用意しています。
オーストラリアの魅力
ニクラスが手がけた国際水準のパブリック、ゴールドコーストのレイクランズ・ゴルフクラブ。コースレートは74。
アジア、欧米、中東と、これまで海外出店などの関係で世界中に出かけてきました。プライベートでも各地を旅してきましたが、中でもよく行くのがオーストラリアです。
あの辺りは1年中気候がよく、特に日本の冬の頃はからっとして快適で、ゴルフ場も近場にたくさんあるので好きな時間にスルーでまわり、空いた時間は思い思いに過ごすことができます。
食事も美味しいお店が多く、私はItoshinという日本食レストランによく行きます。新鮮な刺身や寿司、鍋料理などメニューが多彩で、牡蠣やサーモン、しゃぶしゃぶは特におすすめです。タスマニア産のアワビも大粒で美味しいですよ。
ゴールドコーストにある老舗の日本食レストラン、Itoshin Japanese Restaurant。料理はどれも美味しく、オーナーはかなりのゴルフ好きで話が合います。
ゴールドコーストには当社のレイクランズ・ゴルフクラブがありますが、このほど同じクイーンズランド州にあるペレジアンスプリングス・ゴルフクラブをグループに加えることにしました。
サンシャインコーストの別荘地の中にあり、ゆったり過ごせる環境が整っています。皆さんにより快適に過ごしていただけるよう現在、整備を進めているところです。
オーストラリア2つめのゴルフ場、サンシャインコーストにあるPeregian Springs Golf Club(ペレジアンスプリングス・ゴルフクラブ)。
ゴルフはプレーする場所によってそれぞれ違った面白さを発見できるスポーツです。国により、季節により、その時々の天候によっても魅力が変化し、そして同じ状況で再びプレーすることはまずありません。
皆さんも気になるコースを見つけたら、仲間を誘ってどんどん出かけてください。世界のさまざまな場所でボールを追いかけ、人と触れ合い、いろいろなものを見て、おいしいものをたくさん食べて。長くゴルフに親しんでいただきたいと思っています。
ペレジアンスプリングス・ゴルフクラブのドライビングレンジで。
豪州クイーンズランド 見どころガイド
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- レイクランズ・ゴルフクラブ
- 18H 6489m P72
開場/1997年
設計/ジャック・ニクラス
サーファーズパラダイスから15分。ニクラスが直接手がけた数少ないシグネチャーコースのひとつ。コンドミニアムを併設し、長期滞在が可能。日本人スタッフも常駐している。
- ペレジアンスプリングス・ゴルフクラブ
- 18H 6192m P70
開場/2003年
設計/フィル・スコット
サンシャインコースト、ペレジアンビーチから約5分。別荘地内に造られた18ホール。設計はアダム・スコットの父で自身もプロゴルファーのフィル・スコット。
- Itoshin Japanese Restaurant
- 今年で開業36年。ゴールドコーストで最も歴史があり、ローカルにもファンが多い日本食レストラン。
- オーストラリア政府観光局
- 各地の魅力や楽しみ方などオーストラリアの最新情報が満載の公式ウェブサイト(日本語)。
- クイーンズランド州政府観光局
- オーストラリア大陸北東部。世界一の大サンゴ礁を有する州の公式ウェブサイト(日本語)。