歓喜のホールインワン!のはずだった

日本のゴルフの流儀は不思議だった

今年も天候不順というより異変と表した方がよいほど、お天道様のご機嫌がよろしくないようです。日本列島が大雪に悩まされたと思ったら、今度は春の嵐の襲来で強風、そして雷雨……。しかし、桜だけは健気に咲いてくれました。本来ならこの季節、桜をじっくり観賞しながらプレーするのが、ゴルファーの醍醐味のひとつといえます。しかし今季は、天候不順に翻弄されるゴルファーしか目に映りませんでした。

この季節になると、私は「ホールインワン」を想い出します。もう十数年前の話になりますが、今までに一回だけホールインワンをしたことがありますが、そのときは自分が歓喜したというよりも、同伴プレーヤーとキャディーさんが異様に喜んでいたことを想い出します。

そのとき一緒にプレーしていた人は、私よりも目上の方です。私はこんな質問をされました。

「君、ゴルファー保険、ホールインワン保険は入っているよね?」

「あっ、はい。入っています」

それを聞いた他の人は、さらに狂喜乱舞です。実はこの日も春の嵐で、風に悩まされていた記憶があります。私はゴルフをはじめたときから比較的弾道が高い方で、ホールインワンには不向きと周囲からいわれていました。この日はどういうわけか、ショットが薄目に当たり、ややトップのボールがでていました。強風の中でのプレーですので、自分としては好都合なのですが、しかしその低い弾道がカップインするとは予想もしていませんでした。

30cmのパターを外すことは日常茶飯事で、その現実は理解できるのですが、168ヤード先のカップにボールが吸い込まれる現象というのは、正直今でも、理解できていません。

当時の私がもうひとつ理解できなかったのは、何故ゆえにホールインワンをすると、同伴プレーヤーとキャディーさんに、それなりの「ご祝儀」を渡す必要があるのだろうか?……とうことです。一般社会の通例ですとおめでたい場面では、こちらから相手にご祝儀を渡すのが普通です。ゴルフは真逆の対応をしなければなりません。当時はゴルフをはじめて間もなかったので、目上の方にお伺いさせて頂きました。

「ホールインワンをすると、なぜご祝儀を同伴の方々にプレゼントするんですか?」

「細かいことはよく知らんが、それがゴルフのマナーだ。だからホールインワンも保険の対象になっているわけだ。その根拠、ルーツは自分で勉強してくれ。それより、ホールインワンの祝賀パーティーや記念品のことを考えて、それが決まり次第、連絡をしてくれ。連絡を待っているからね」

というわけでプレー終了後にマスター室へ行って「ホールインワンしちゃいました」と、まずはキャディーマスターに申告すると、ホールインワンに対する保険申請書(証明書)を渡されました。そこにはホールインワンの「目撃者(証人)」の氏名等を明記する欄があり、キャディーさんも含めて合計4名の署名が必要です。保険会社によって書面は異なるようですが、いずれにしても目撃者の署名は必要です。キャディーさんにはご祝儀としてそれなりの物を渡して終了しました。

残りの強者3名には後日連絡するということで、私は帰宅しました。まずはゴルファーズ保険のチェックです。確かにホールインワン保険は、ホールインワンを達成した際に保険会社に対して数十万円を請求できる仕組みになっていました。保険が支払われる条件は多々書いてありましたが、私の場合、とくに問題はありませんでした。

それより問題は、同伴プレーヤーに対するご祝儀です。古き良き日本の接待ゴルフに浸かっていた猛者3名ですから、それなりの期待に応えなければ、後で何を言われるかわかりません。正直、なんでこんな習慣があるのか不思議で友人関係に聞きましたが、誰ひとり、その真相を知っている人はいませんでした。

私が調べた限りでは、諸外国ではホールインワンを達成した場合は、同伴プレーヤー、やその友人が、お祝いをしてくれる傾向にあるということです。

では、どうして日本では反対の行動をとるのでしょうか……、不思議です。それはさておき、結局「ホールインワンをどう祝うか検討する飲み会」をする羽目になりました。もちろん、飲み代は私が支払いました。いろいろなアドバイスを拝聴しましたが、どう考えても保険金では支払えないので、とりあえず次回の飲み会の議題として持ち越されました。二回目の飲み会で、どうにか決まったのが「祝賀コンペ」の開催と、それに参加して頂いた人へプレゼントをすることです。飲み代は私が支払いました……。

ホールインワンの心構え

本来喜ぶべきはずのホールインワンが、どうしてこんなにややこしい事態を招くのか、日本のゴルフの通例に納得できないまま、コンペの当日を迎えました。3組のコンペでしたが、みなさんのプレー費、飲食代は私が支払いました。おまけに参加者全員に記念品まで渡して、喜んだのは参加者の皆様方だけです。私の計算ですと、支払われる予定の保険金でなんとか賄えるはずでした。しかし、予想以上に皆さんお元気で、いっぱい飲食をして頂きました。

宴もたけなわになり、かなり酔った目上の「目撃者」の方から、暖かいメッセージを頂きました。

「君は今度、いつホールインワンをする? その際は、是非また私たちをゴルフに誘って欲しい。君のホールインワンが、今後も続けばこんなにうれしいことは他にない」

意味不明の祝辞を聞きながら二度とホールインワンはしたくないと、私は正直思いました。結局「ホールインワンを祝う」という名目にかかった費用は、保険金を大きくオーバーして大赤字でした。

古き良き日本のゴルフ事情のような話ですが、実際に私のまわりではよく聞く話でした。それ以来、知人がホールインワンをしたという情報が入れば、私も通例にそって「ホールインワンおめでとうございます」という電話を入れましたが、見返りを求めているように思われるのも嫌なので、祝賀会のお誘いはお断りしていました。

最近はホールインワンに関する「祝賀会」の話題をあまり耳にしなくなりました。その理由は、セルフプレーが増えたからでしょう。仮にホールインワンをしても、保険金が支払われる条件として、キャディーさんの同行が不可欠だからです。

それともうひとつ、ちょっぴり寂しい気もしますが、ホールインワンに対する興奮の度合いが変わってきたのでしょう。ゴルフに限らず、以前に比べて日本人が物静かで大人しくなったように感じるのは、私の錯覚でしょうか……。

さて、ここで皆さんに質問させてください。

「あなたの知人がホールインワンを達成しました。その場面にあなたも一緒にいました。あなたならどうしますか?」

A:知人のホールインワン達成を自分のことのように喜び、それを理由(話題)に後日、ゴルフと飲食をする(ゴルファーズ保険加入済みで費用はホールインワン達成者負担)。

B:その瞬間は興奮するが、自分がホールインワンしたわけではないので、速やかに忘れる。後日、仲間とお金を出し合ってささやかなプレゼントを渡してあげる(セルフプレーの場合)。

皆さんもホールインワンをいつ目撃するかわかりません。その心構えだけは、今からしておきましょう。

嬉し恥ずかしホールインワン。ゴルフ人生のなかで一度は経験したい奇跡の産物。ゴルフ仲間もいっぱい喜んでくれます?

ホールインワンを狙うのはゴルファーの心理ですが、きれいな桜を観賞するゆとりが大人のゴルファーには必要です

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