2019.1.24

ジーン・サラゼンは165cmと小さな人だったが、猛烈に元気な人だった。引退という文字はこの人には縁がなく、70歳を過ぎてもメジャーに出場していた。

71歳のときには全英オープンでホールインワンも成し遂げている。有名なトルーンの8番パー3で5番アイアンを握り、パンチショットを放ってカップに直接放り込んでしまったのだ。この出来事はサラゼンが1935年に、第2回マスターズでパー5の15番ホールで第2打を直接入れたダブルイーグルに匹敵するくらいのゴルフ史に残るものだった。

メジャー優勝は7度と歴代7位だが、このマスターズ優勝のように強烈なカップインや大逆転優勝などで、むしろ記録よりも記憶に残る名選手である。97歳まで長生きしたこともあって、この人がボビー・ジョーンズと同い歳と聞くと驚かざるをえない。28歳で引退したジョーンズはオーガスタを作ってマスターズを催し、現役サラゼンのダブルイーグルをギャラリーの1人として目撃したのだから。

しかし、生まれも育ちもプレースタイルも生き方も違っていたが、2人はとても仲がよかった。サラゼンは旅先でいつもジョーンズに手紙を書いて送っていた。

というのも、サラゼンは常に燃えるような闘魂でカップにボールを沈めていたが、ジョーンズのクレバーなコースマネジメントを尊敬していた。「オールドマンパー」のゴルフをである。

しかし、サラゼンはその思考をプロ魂に置き換えて、スコアを考えずに目の前の1打に集中することを心に念じるようになった。

それがマスターズでのダブルイーグルを呼び、プロ史上初のモダングランドスラマーになった要因である。もちろん、71歳のホールインワンも同様だ。カップを狙ってボールに集中するから入ってしまうのである。

JENE SARAZEN

1902年2月27日、アメリカ・ニューヨーク州生まれ、1999年3月3日没。本名はイタリア移民のため、エウゲニオ・サラセニという。19歳でプロになったときにアメリカンネームに改名。’22年、弱冠20歳で全米オープンと全米プロに優勝。’23年全米プロ優勝、’32年全米オープン、全英オープン優勝。’33年全米プロ優勝。’35年マスターズ優勝。写真の女性はサラゼンの奥さん、メアリーこと、モーレタニアさん。