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カートが空です

LAST UPDATED:2022.04.12

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ゴルフと旅人達。 vol.50

クラブハウスに必要なこと

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旅するひと = 黒川 雅之くろかわ まさゆき
1937年生まれ。建築家、プロダクトデザイナー。建築設計、工業化建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインなど幅広い領域を総合的に考えるスタンスを貫き、現在は日本と中国を拠点に活動。ゴム素材に着目したインテリア小物のGOM(ジーオーエム)シリーズはMoMA(ニューヨーク近代美術館)の永久コレクションに選定されている。インテリアデザイン協会賞、毎日デザイン賞など受賞多数。ゴルフ歴40年。

ゴルフのはじまりとハワイ

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マウイ島のカパルアゴルフクラブ・ベイコース。大自然に囲まれたリゾート内にあり、1975年のオープン以来、数々のツアー競技の舞台に。2008年にはカパルアLPGAクラシックが開催された。

M今から40年ほど前、建築家仲間のあいだではけっこう早い時期にゴルフを始めました。同業者よりもグラフィックデザイナーやアーティストや事業家といった人達との付き合いが多かったせいかもしれません。
昔からハワイが好きで、特にマウイ島にはよく通いました。きっかけを作ったのは家族ぐるみで親交のあった安井かずみ(※1)です。仲間内では愛称のZUZU(ズズ)と呼んでいましたが、彼女が1980年頃、カパルアに別荘を購入したのです
ある時、ZUZUが「3軒あるけど1軒はいつも空いてるの。買わない?」と言ってきました。早速行って見てみると、2階建てのヴィラで目の前に真っ青な海とラナイ島、そして緑鮮やかなゴルフコースが広がります。大いに気に入り、住人の仲間入りをすることにしました。

ZUZUは一度行くと2か月以上滞在していましたが、僕達夫婦はせいぜい2~3週間。それでもカパルアゴルフクラブの2つのコースを日替わりでラウンドするには十分な時間があります。最寄りのベイコースの1番ティまでは、ドアから徒歩5分の距離でした。

マウイにいるあいだは、いろんな友達が訪ねて来ました。渡辺プロダクションの渡邊美佐さん、ジャーナリストの大宅映子さん……。オープンカーにキャディバッグを積んでやって来てはバカンスを楽しんでいきます。みんなエネルギッシュでよく働きよく遊ぶ。いい時代だったと思います。

(※1)安井かずみ氏=作詞家。代表作に沢田研二『危険なふたり』、小柳ルミ子『わたしの城下町』、郷ひろみ『よろしく哀愁』など。訳詞家、エッセイストとしても活躍した。

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海の向こうにラナイ島を望むカパルアゴルフクラブとフェアウェイサイドに建つヴィラ。リゾート内には2つのコースと3つのビーチ、11軒のレストラン、テニスコートなどが揃う。

M英国からオールドハウスを移築する

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豊かな自然の中に美しい村が点在。絵のような景色が広がるイングランドのカントリーサイド。

M1970年代から90年代にかけて、アルファ・キュービックというブランドが一世を風靡したことがありました。アパレルをはじめ、レストラン経営や雑誌出版、レコード制作など事業は多岐に渡ります。起ち上げたのは柴田良三さん。とても知的でセンスがよく、ゴルフはハンディキャップ1の腕前でした。

彼がある時、ゴルフ場を創るからクラブハウスを設計してくれと言ってきました。どんなハウスを考えているの?と聞くと、スコットランドの古城とか古い邸宅のようなハウスがいいと言うんです。現代デザインをしている僕に向かってですよ(笑)。どうしたものか、心底悩みました。
スコットランドの古城をうまく真似できたとしても、所詮コピーはコピー。結局、“○○風”に終わるのが目に見えています。テーマパークのアトラクションのようなものにはしたくないと思っていました。

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空と陸から古城や時代を重ねた邸宅を探し回ったイングランド、ヨークシャーの風景。

M後に、一緒にこのクラブハウスを担当することになるインテリアデザイナーの杉本貴志(※2)に相談して出た結論は、イングランドかスコットランドで古城を買おうというものでした。
「ここはひとつ向こうのシャトーを買って来ましょう。そしてこちらで組み立てながら、インテリアは使い勝手を考えて現代的にする。これなら最高に面白いものができますよ」
早速、柴田さんに提案すると、すんなりOKが出て、スタッフ1人を加えた4人で英国に飛ぶことになったのです。
事前に調査した結果、目的地に定めたのはヨークシャー地方。スコットランドに程近い、イングランド北部の田園地帯でした。
まずは現地で小型飛行機をチャーターし、空から目ぼしい建物を探します。ラクなようですが、来る日も来る日も村や町を見下ろすのはけっこう骨が折れる作業でした。
続いて、クルマ移動に切り替えてじっくりと検分します。最重要クラスの建物は政府の管理下にあってほとんど持ち出せませんが、かといって状態のよくないものは買いたくない。制約を受けないギリギリのところで納得のいくレベルの建物が理想です。
吟味を重ねた結果、19世紀に建てられたオールドハウスを2軒買うことになりました。2軒分の資材を日本へ運び、組み直してひとつのクラブハウスを造るのです。
そうしてできあがったのが、今も皆さんに使っていただいているアバイディングクラブ ゴルフソサエティ(千葉県)のクラブハウスです。
1階が石造り、2階から上はチューダ様式。調度品もそのまま持ち込んだアンティークを要所要所に使っています。機会があったらぜひご覧ください。

(※2)杉本貴志氏=インテリアデザイナー。ハイアット、シャングリラ、ザ・リッツ・カールトンなどの世界的なホテルやレストラン、バー、無印良品の各店舗などを手がけた。

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1994年に開場したアバイディングクラブ ゴルフソサエティ。唯一無二のクラブハウスはドラマや雑誌の撮影などにもたびたび使われている。

Mクラブハウスの佇まい

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ユニ東武ゴルフクラブ(北海道)のクラブハウス。景観を生かすため高さを抑えた設計で、コースからは周囲に溶け込む上層階だけが見えるようになっている。

Mクラブハウスの設計において大事なのは、まずどこに造るかです。スタートホールの場所はほぼ決まっていますから、それに対してどこに配置し、皆さんがどんな風景の中でスタートしていくか。また、コースから上がってくる時はどんな風に建物が見えてくるかを考えます。

そして、1日を過ごすゴルファーのストーリーを思い浮かべます。朝、ゴルフ場に到着した時の、あの高揚感をどう受け止めるかに始まり、Going Out、昼のインターバルをはさんで、Coming In、そしてホールアウト後のくつろぎまで、物語を紡ぐのと同じように、ストーリーを組み立てていくのです。

北海道のユニ東武ゴルフクラブの場合は周囲に素晴らしい田園風景が広がっていたので、景色を極力邪魔しないハウスを考えました。
最初に視察に行った時、「建てないほうがいいんじゃない?」と言ったほど(笑)。それくらい素敵なところでしたから、「いかに建築を消すか」をテーマに高さを抑え、1階と地階の2層とし、そこに連なるカート小屋の屋根も低く揃えるようにしました。

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ユニ東武のコンセプトはハウス、コース共に『水・光・風』。右上=クラブハウスの玄関をくぐると中央に大きな中池が広がる。下=9番ホールのグリーン手前から見たハウス。

M近年は日本と中国を行き来する仕事が増え、コースに出る機会がめっきり減ってしまいました。そこで始めたのが時間の融通が利くウォーキングです。
建築構造力学と同様に、ゴルフのスウィングやウォーキングを人体構造力学の観点でとらえると、本来どうあるべきかがわかってきます。曲がらないボールを打つにはどうすればいいか、正しい姿勢で歩くとはどういうことか。日々新たな発見は尽きません。
好奇心や挑戦心を持ち続けるのに年齢は関係ありません。この4月で85歳になった僕が言うのですからまちがいないと思います。
宇宙の物質の総量は米研究チームによって測定が済んでいて、そのうち人類が発見できているのは5パーセントに過ぎないそうです。人はこれまで実にたくさんの知識を得てきました。にもかかわらず95パーセントのことがまだわかっていない。こういう話を聞くと、ちょっとワクワクしてくるのです。

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左=2019年から展開しているブランド『ひあ|HERE』の硝子の酒器。右=デザインの背後にあるストーリーを語る『未来への遺言』の1シーン。Youtube、Note、Instagramで毎週金曜日に配信している。

M北海道 由仁町 日常の絶景

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M町の至るところで雄大な景色に出会える由仁町。
ゴルフ場への行き帰りにも見ることのできる身近な絶景をご紹介します。

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伏見台公園から眺める夕張岳

伏見台公園は標高146メートルの丘の上から東に夕張岳、眼下に町内を一望するビュースポット。春は桜やつつじ、秋は紅葉の名所としても知られている。

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古山貯水池(ふるさんちょすいち)

道内で最も歴史がある灌漑(かんがい)用大貯水池。約70種の野鳥が生息し、野鳥観察も楽しめる。隣接する自然公園にはオートキャンプ場も。

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田園風景の中を走る室蘭本線

ユニ東武ゴルフクラブから車で約10分。長万部~室蘭~岩見沢を結ぶ室蘭本線・古山駅近くの景色

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初夏のジャガイモ畑

古山貯水池自然公園のキャンプ場前に広がるジャガイモ畑。花の見頃は例年6月下旬~7月上旬。

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ガリ(旧フレーザー島)

全長120kmに及ぶ世界最大の砂の島。内陸部には熱帯雨林や淡水湖、ビーチには4WD専用ドライブコースもある。ガリは先住民族の言葉で楽園。世界自然遺産に登録されている。

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コボルド渓谷

砂岩に囲まれたクイーンズランドで最も若い渓谷。アクセスはガイド付きツアーのみ。ボートクルーズなどを楽しめるほか、2019年にはオーストラリア初のガラス橋も開通した。

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アバイディングクラブ ゴルフソサエティ

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開場/1994年 設計/デズモンド・ミュアヘッド
コースは英国生まれの鬼才、ミュアヘッドが設計。複雑なアンジュレーションのフェアウェイに池、クリーク、ポットバンカーなどを配して手応え十分。9番パー4は池に映るハウスの景観が美しいことで知られている。

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ユニ東武ゴルフクラブ

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開場/1993年 設計/小林光昭
コース設計は“水の魔術師”小林光昭。水・光・風をテーマにした3コースそれぞれ変化に富んだレイアウトで北海道ゴルフを楽しめる。新千歳空港から車で約30分、札幌まで約1時間。周辺には系列の英国風庭園温泉施設も。

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由仁町観光協会

北海道由仁町の観光案内はこちら。写真は由仁町で発見されたマンモスの化石や実物大模型を展示している複合施設『ゆめっく館』。空知エリアを自転車で巡るサイクルツーリズムに関する情報も掲載している。