LAST UPDATED:2023.10.25
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ゴルフと旅人達。 vol.61
秋の日光へようこそ

旅するひと= 阿部孝信 あべ・たかのぶ/1948年東京都出身。日光カンツリー倶楽部 常務理事。人生初のホームコースが日光CCという生え抜きメンバー。2008年、倶楽部選手権・シニア選手権に優勝して同一年での二冠を達成。10、11年もシニア選手権優勝。19、20、21年グランドシニア選手権優勝。ゴルフ歴51年、ベストスコア64
ゆっくりやってくる季節を楽しむ

『日光の社寺』として世界遺産に登録されている日光山輪王寺。紅葉の見頃は例年11月初旬~中旬です。
M日光は今、紅葉の季節を迎えています。奥日光からだんだんと降りてきて、門前町にほど近い日光カンツリー倶楽部の辺りの木々が色づくのは10月下旬から。コース内にもモミジやカエデの美しいホールがいくつかあり、この時季のラウンドの楽しみになっています。
あっという間に冬が来るイメージが強いかもしれませんが、季節はゆっくりと進み、紅葉の見頃も意外と長く続きます。その後もゴルフ場に冬季クローズ期間はなく、たいてい年末近くになってから雪が降り、積雪があると休場になる程度。晴れた日は多くのプレーヤーで賑わいます。

上=秋は男体山と紅葉のコントラストが鮮やかです。下=設計者の井上誠一氏は将来の交通事情も見据えてクラブハウスの場所を選定。後年、ハウス前の細い田舎道は県道となって周辺も発展、井上氏の計画の通りになりました。
M今年69回目の秋を迎えたコースからの眺めは、開場当初と大きく変わっていません。1955年4月の開場に向けて造成を進めていた頃、井上誠一氏は1年半にわたって何度も視察に訪れ、逗留していたそうですから秋のコースもご覧になっていたはず。当時と同じ景色を眺めてラウンドできるのですから味わいもひとしおです。
男体山に向かって打っていくホールでは空気が澄んで、山がとても綺麗に見えるようになります。麓のほうまでくっきり見えるせいか、いつもよりも山が大きく、近くに感じるようになると、秋が来たことを実感するんです。

男体山に向かって打ち出して行く1番パー4(380~419ヤード)。
M
M2度目の日本オープンへ

11番は松の廊下と呼ばれるストレートなパー4(455~419ヤード)。フェアウェイに起伏があり、落としどころによっては左右にキックすることも。
Mコースがあるのは、かつて川床だった場所。近くを流れる大谷川(だいやがわ)に沿うように、男体山に向かってスタートするアウトが上流側に、下流側には山を背にして出ていくインコースがレイアウトされています。 一見するとほぼフラットなようですが、実際は山から傾斜がかかっていて、コース全体の高低差は実に50メートルもあるんです。ところが、微妙な傾斜のつけ方と周囲の起伏、さらにその周りの景色とのバランスで、上っているホールにいてもフラットなホールをプレーしていると錯覚してしまう。 グリーンも受けているように見えて実は受けていなかったり、左側が高く右に切れるように見えても、実際に打つと左の方にボールが上っていくように見えるグリーンもあります。 井上氏の緻密な計算には驚くばかりですが、そこが何年通い続けても面白いところであり、何度もプレーしていくうちにわかってくる部分でもあるのです。

右下はゆるやかなS字を描く9番パー5(470~513ヤード)。フェアウェイ右サイドにクロスバンカー。グリーンは手前が受けて左奥が下っています。
M先日、井上氏の最後の弟子といわれるコース設計家の嶋村唯史氏にお話をうかがう機会がありました。「日光のグリーンはすべてレベルか受け勾配。しかしいくつかのレベルグリーンには中高(なかだか=お椀をかぶせたような形)のアンジュレーションがつけられている」「つまり後ろ半分が下がっている。このバリエーションが難しさの秘密になっている」とおっしゃっていました。まさにその通りだと思います。
2025年になると春に開場70周年を迎え、秋には当倶楽部にとって2度目の日本オープンが開催されます。前回の2003年大会は深堀圭一郎選手が4日間通算8アンダーで優勝を飾りました。開催時期は例年10月の紅葉が始まる頃。鮮やかさを増すコースでどんな熱戦が繰り広げられるのか、今から楽しみです。
M通いたくなる場所が次々に

世界遺産・二社一寺(日光東照宮・日光山輪王寺・日光二荒山神社)のある日光山内地区の紅葉の見頃は11月初め。写真は日光東照宮に向かう途中の華蔵院(けぞういん)坂。とっておきの紅葉スポットです。
M最近は日光の街の印象がだいぶ変わってきました。リーマンショック以降、長らく大変な時期が続いていましたが、このところは新たな企業と人が次々にやってきて、活気を取り戻ししつつあるんです。 大手ホテルの進出も相次いでいます。なかでも中禅寺湖畔に開業したザ・リッツ・カールトン日光は大きな話題となりました。私も食事をしに行ってみましたが、こんなところにこんなホテルがあっていいの?というくらいの贅沢な空間です。
M南アでゲーリー・プレーヤー氏と

2020年にオープンしたザ・リッツ・カールトン日光。伝統工芸を活かした館内装飾の数々は必見です。
M日光東照宮に向かう街道も整備されてとてもきれいになり、周辺のお店もだいぶ変わりました。個人的には、4年前にできた妙月坊というステーキハウスが特に気に入っています。和牛ステーキやハンバーグはもちろんのこと、ヒレカツがまた美味しくて、宿坊を改造したお店の雰囲気もとてもいいんです。 日光は今、こういったセンスのいい、何度も行きたくなるような場所が続々と誕生しています。観光でいらっしゃる方達も以前は団体客が中心でしたが、最近は若いカップルの姿が目立つようになり、時代の変化を感じます。しばらく行ってないという方は、きっと驚かれると思いますよ。

Grill&Steak 妙月坊。とちぎ和牛のサーロインステーキや老舗製造元の日光ゆばを使用したハンバーグなどどれも絶品。敷地内にアートギャラリーも併設しています。
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日光カンツリー倶楽部
18H・7236Y・P72 コースレート74.8 開場/1955年 設計/井上誠一 天然のアンジュレーションを活用したリバーサイドの林間コース。「ここに池は似合わない」(井上誠一)と池やクリークは1つもなく、バンカー数はわずか36。2025年に2度目の日本オープンを開催予定。