LAST UPDATED:2024.10.23
プロインタビュー vol.70
藤田さいき
今年11月22日に39回目の誕生日を迎えたチームオノフの藤田さいきプロ。若手選手が主流のツアーの中にあって、その存在感を成績でアピールしている。32試合に出場して予選通過は28試合、ベストテン入り9回を数え、平均ストロークは70.6386(同部門10位)。ツアー通算7勝目達成も近い。ベテランの域にある藤田プロに好調の理由を尋ねてみた。

――昨季ツアーではベストテン入りが9回、ベスト3フィニッシュは4回もありましたね。あと一歩で7勝目達成でしたが、好調の理由をぜひ教えてください。
藤田 一昨年から実兄にコーチしてもらうようになって、教えられたことが少しずつ実践でもできるようになったからだと思っています。日々、進化している実感があります。クラブや体の使い方など細かい点まで意識しながら動かすようになってスイングもショットも良くなり、スコアをまとまられるようになって来ました。スコアが良ければ気持ちも自ずと高まります。たとえば、アプローチショットでも感覚を優先させていましたが、そこに知識がプラスされたことで、たとえ寄せ切れなかったとしてもパットで決めればいいと割り切れる。ゲームの組み立てがとっても楽になり、それが結果、成績につながっているのだと思います。
――女子ツアーは選手年齢が以前よりも低くなったというか、若返り化が激しいように思われますが…。
藤田 めちゃくちゃ若いですよ(笑)。だって私の同級生の中には18、19歳の子供をもつ人がいるんです。そんな年齢の選手と一緒にプレーするプロスポーツってゴルフくらいかも知れませんよね。私が20代だった頃って、30代の選手は少なくありませんでしたし、まだベテランでもなかったかな…。 とにかく選手の入れ替わりが早く、激しいのも事実ですね。
――なぜ若手選手がすぐにツアー出場できるようになったと思いますか。
藤田 ゴルフ環境が変わり、情報化が急速に進んだからでしょうね。スイングでも、かつては連続写真の情報しかありませんでしたが、現在では動画でトップ選手のスイングを見ることができ、スマホで自分のスイングを録画し、チェックすることもできます。スイング理論も練習法もネット配信で学べます。そのお陰で若い時からゴルフが仕上がっているし、うまい選手が多いのだと思います。

――藤田プロが第一線で活躍し続けられているのは?
藤田 いい意味で「雑」だからかな…(笑)。私のジュニア時代は、根性論が王道でしたけど、私は根性論を受け流していたというか、新しい理論の良い点は取り入れていました。だって、気合を入れて打ったらボールがカップに寄ります? どうスイングすればベターなのかの理論が必ずあるはずです。 100%のショットを求めることも重要ですが、様々な経験をして、今ではエンジョイすることがとても大切だと感じています。この年齢になってツアー選手としてプレーできること自体とても有難いことだと思うんです。若手の選手たちと同じ舞台でプレーできることに感謝していますし、こうしてプレーできるのも主人や家族、私を支えてくれるスタッフの方々があってのことだと本当に感謝しています。
――そんな心境に至るまで様々なことがあったのでしょうね。
藤田 そうですね…。若い頃は自分中心に世界が回っていると思っていたくらいです。多額の賞金を手にしたなら、そう勘違いしたり、おかしくなったりしてしまう。勘違いだと気づくまで時間が掛かりましたし、シード落ちした際に人々が離れて行って、ようやく「こんな生き方をしていてはいけない」「自分の環境を当たり前だと思ってはいけない」と目覚めた。心に柔らかさが必要だと気づいたのです。
ゴルフ技術はもちろんですが、それ以上に心の持ちよう、精神面が最も大切だと思えるようになったのです。シニアのツアー選手たちって皆さん楽しそうにプレーしていますよね。それまでの苦労があってのことですが、プレーできることに感謝しているからこそエンジョイしているのだと思えるのです。感謝することって本当に大切だと感じています。

――昨年9月末頃に背中を痛めとか…。
藤田 そうなんですよ。日本女子オープンでのことですが、ショットが不安定だったこともあり、深くて長くて、しかも逆目のラフからのショットを繰り返したことで疲労がたまったみたいです。で、それを無理したのが良くなかったみたいです。「筋挫傷だから無理して出場しない方が」と担当医から言われましたが、ツアー残り試合数が少なく、頑張りたい!一心から痛み止めの注射を打って頂いて出場しています。
無理は出来ない状態ですが、それが奏功するような気がしています。ミスを許せる範囲が広がり、これまでの経験値を生かしたなら、結構いいんじゃないかなと。

――そう思えるのもツアー人生を長く送って来たからなのでしょうね。
藤田 経験値の高さだけは、若い選手に負けません。というか、若手選手の「勢い」に対抗できるのは「経験値の高さ」ですから、攻める、守るのメリハリあるプレーで戦っていくだけですね。
――ベテランここにあり!のツアー優勝達成を期待しています。インタビューに応じて頂き有難うございました。