LAST UPDATED:2025.07.17
プロインタビュー vol.75
浅地洋佑
プロ15年を迎えたチームオノフの浅地洋佑が今季ツアー第3戦目「中日クラウンズ」で4年ぶりの通算4勝目を飾った。まさに会心の勝利だった――。
21年に3勝目を挙げたものの、その直後からショット不振に陥り、翌年には賞金シードを失い、ツアー生命も危ぶまれるほどの大スランプに陥った。ジュニア時代にゴルフの手ほどきを受けた植村啓太コーチと20年ぶりにタッグを組み、再起を目指した。その過程での優勝は、ご褒美でしかなく、目指す頂きは高い。「天才」と称される小技が冴えわたり、精度が高まって来ているショットとの相乗効果はとてつもなく大きい。心身とも成長し続けている浅地に4勝目への軌跡と今後の抱負を話してもらった。

――ツアー通算4勝目達成!おめでとうございます。4年ぶりの勝利は、これまでの1勝とは違った感慨だったでしょう。
浅地 そうですね、違いますね。まずは、成績を挙げられずにいた時でもずっと応援してくださっていたファンやスタッフの方々にお礼を言いたいです。有難うございました。通算3勝目を飾って以降、不振に見舞われ、4勝目まで4年を費やしましたから、本当に嬉しかったです。それも歴史と伝統ある中日クラウンズで勝てたのは自信になります。いつか、絶対に勝ちたいと思っていた大会を制したことで、これまでやって来た努力が間違いではなかったと感じました。
――相当のどん底を経験したのですね。
浅地 飛ばない、当たらない、曲がる、(グリーンに)乗らない…滅茶苦茶になり、スイングもショットも見失ってしまったのです。ラウンドしてスコア80を切れない。練習場にさえ行きたくないほどで心身ともに落ち込みました。
――それで植村啓太コーチとともに再起を目指してスイングを見直したそうですが、具体的にはどう矯正したのですか。
浅地 トップスイングで右肘の角度が深くなり過ぎていたのです。右腕が曲がり過ぎないようにしたのです。すぐには直りませんから、今でも練習場では矯正器具を使って矯正に努めています。頭で理解したことを体に覚え込ませるには時間を要しますよね。

――スイング矯正過程でのツアー優勝ということになりますが、復調の兆しは感じていたのでしょうか。
浅地 オフシーズンにアジアンツアーに参戦していたのですが、(順位)結果はともかく、プレーの内容が良くなっているという手応えがありました。ベストスコアをマークすることもあり、このゴルフが続けば優勝争いに絡めるチャンスが来るかもしれない。そう思えるようにどん底時とは異なり、プラス思考でプレーできるように変わって来ていました。
帰国して臨んだ日本ツアー開幕戦でもプレーの感触が良く、2戦目も悪くありませんでした。春先ならではの独特の風の中でも、芝がまだ生え揃っていないコースコンディション下でも納得できるスイングができ、ショットが打てたのです。そして迎えたのが3戦目の中日クラウンズだったのですが、実は練習ラウンドの時から「行けそう」な気がしたのです。

――その予感どおり、難攻不落と称される大会舞台の名古屋ゴルフ倶楽部和合コースで初日は4バーディー・4ボギーのイーブンパーで回り、12位タイの好発進。大会2日目はスコアを二つ落としたものの、30位タイで予選カットラインをクリアーして決勝ラウンド進出を遂げました。圧巻は大会3日目、9バーディー・1ボギーで回り、62のビッグスコアを叩き出して通算6アンダーをマーク。一気に首位タイへと急浮上したのは見事でした。そして迎えた最終日。優勝を意識したことでしょう。
浅地 スタート時点では「優勝争い圏内に居るな」という程度で強くは意識していませんでした。前日に62をマークしたこともあって、他の選手もスコアを伸ばすだろうと考えていたのですが、フタを開けてみたら最終日はスコアを伸ばす選手が意外と少なかった。ラウンド途中で(優勝)チャンスがあると感じました。
――最終組で回る選手との優勝争いになりましたが、どの時点で優勝を確信したのですか。
浅地 15番ホールを終えて単独首位に立ち、2位と2打差で迎えた18番ホールのティーショットを打ち、フェアウエイを捕らえられた時です。
――通算4勝目を達成したこの一勝がもたらしたものは?
浅地 これまで年頭で、ツアー1勝とか、賞金シード獲得とか、ゴルフ日本シリーズ出場を目標に掲げてきましたが、優勝できたことでその三つを一気に達成できました。ですから、年間複数回優勝、できればメジャー大会で優勝するのが次の目標です。メジャーを制したなら5年の長期シード権を獲得できますし、日本オープン優勝なら翌年の全英オープン出場資格が得られます。海外ツアーにも精力的に挑める。ツアープロとしての選択肢が格段に広がります。

――浅地プロはツアー界でも屈指の小技名手として知られているだけに、中日クラウンズのように難コースで開催されるメジャー大会では優勝を狙えられると思います。ショット精度が高まっただけにチャンスは大でしょう。
浅地 そう言って頂けるだけで自信につながりますよ(笑)。試合はそれこそ下駄を履くまでわかりませんし、運に恵まれなくてはいけない。今の自分ができることはスイングを地道に磨き続けることだけです。以前とは違って「ボギーは打たない」自信が強まったと思いますし、小技のバリエーションが広がり、ピンチを目の前にしてもドタバタしなくなったと考えています。パットイップスやシード落ち、ショット不安などプロ15年で様々な経験を重ねことで自分のゴルフの幹を太くすることができたと思います。
――ゴルフ不振のどん底を何度も味わい、そこから脱出するごとに強く、大きくなれたのですね。今後のツアーでのさらなる活躍を期待しています。頑張ってください。
浅地 頑張ります。トーナメント会場に足を運び、声を掛けたり、応援したりして頂ければ嬉しいです。よろしくお願いします。
――かしこまりました。優勝シーンをぜひ生で観戦させてください。