LAST UPDATED:2018.12.27
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Products Inside Story vol.27
ラボスペックパター / OM-3

「こちらは新製品になります。」
友人に誘われて参加したイベントで漆黒のパターを渡された。エッジが丁寧に仕上げられ作りが良さそうなクラブは、仕立ての良いスーツを連想させた。
「袖の仕上げはどうなさいますか?」
「本切羽で、お願いします。」
上品な店員の質問に反射的に答えた。クラシコイタリアでスーツの何たるかを覚えた自分達の世代にとって、本切羽=本格的なスーツだ。本切羽とは袖が飾りのボタンではなく、ボタンホールがちゃんと開き、開閉できる仕様を言う。ルーツはシャツが下着だった時代に、医師が袖をまくりやすようにとのこと。今や、一般的になった仕上げかもしれないが、自分とってはいっぱしの男になった気がする特別なオプションなのだ。
そんなことを思い出していると、パターとスーツの共通点がどんどん浮かんでくる。鉄素材は生地の種類、形はパターン、削り出しは縫製…..。手にした時の重さがいい。いい転がりもしそうだ。じっくりと眺めながら説明に頷く僕の横で、友人はいつのまにか購入モードになり、もう長さの話をしている。
「今度、使わせてよ。」
「いいよ。」
おそらく、自分も買ってしまうだろう。この深みある黒色は、いい生地に出会った時のように心に響いているから。

MPRODUCTS
M昨年好評のうちに完売したOP-3(ブレードタイプ)パターに続いて、マレットタイプがデビューしました。今回も限定300本になります。日本の名クラフトマンによる軟鉄精密削りだし加工の重量感あるヘッドとフィッシングギアで培われたDAIWAのカーボンテクノロジーから生まれたパター専用のシャフトにより、スムースなストロークと安定感抜群で直進性のある強い転がりを生み出すパターです。
マレットタイプは重心が深いために、上下のミスヒットに強く、距離が安定します。更にミスヒットに強いフェーストレンチデザインも採用。寄せたいロング、ミドルパットの距離感、入れたいショートパットの直進性に優れています。
直線的にヘッドを動かすことが求められるマレットのために各部のデザインも垂直・水平に留意しています。漆黒のテフロン加工のよるカラーリングも各部の角を意識させる効果があります。
日本のクラフトマンによる丁寧な削りだしパター、所有満足度も高い名品になりました。
OP-3を買い逃したという方はぜひご検討ください。

打感が柔らかい軟鉄S25Cを高度な技術で精密に削り出しています。パターはエッジなどの細部の仕上げが重要で、うまく仕上げられないと光の受け方により垂直感覚が狂ってしまうことがあります。構えやすくまっすぐストロークしやすいパター作りには高度の切削技術が必要です。

真上から見ていただくと、直線的なストロークのイメージが湧くと思います。また、トウよりに少しボリュームをもたせることで、トウよりに打点がぶれても高い直進性を保ちます。ヒールよりにぶれても、ネックが近いため直進性は保たれます。

アップライでもネックが見えにくく構えやすいカービングクランクネック。スムーズな直線的なストロークを生みます。ブレードラインとネックラインが垂直になり、直線的なストロークをサポートします。

ネックをバック側に傾けて、ハンドファーストに構えやすくしています。安定したストロークと転がりを生む秘密のひとつです。特徴的なカービングクランクネックは、オートマチックと操作性を融合したオリジナルのネック設計です。

打点ブレして直進性の高い順回転の安定した転がりを生むフェーストレンチ(3角度方向スコアライン)。上の溝は下向きに、下の溝は上向きにデザインされています。前作OP-3より溝幅を広くし、安定感が増しました。

フィッシングの技術を生かしたオノフ3Dクロスシャフト。曲げと捩れの剛性を高くし、転がりの良さだけでなく、マイルドな打感も実現しました。ヘビーウェイトのクラブバランスの性能をを引き出す、専用シャフトです。参考値:34インチ、バランスE5.0

M同素材でマレット(OM-3)とブレードタイプ(OP-3)のパターを作る場合、マレットタイプの方がフェースが小さくなり、同時に重心距離も短くなります。(フェース長さ/OM-3:OP-3=103.0:115.2mm、重心距離/20.0:21.2)。これに対し、重心は深くなります(15.1:11.1mm)。慣性モーメントでは、上下は増えますが左右が低下します。つまり、マレットでは、重心の深さにより直進性が強い転がりを生みますが、左右にヘッドがぶれやすくなります。OM-3パターでは、トゥ側にボリュームをもたせて改善していますが、実際にパッティングするときには直線的なストロークに注力していただければ、より良い結果を生むことができます。

Mマレットパターの黎明期、左にいってしまうという話をよく聞きました。どうしても、外側の上からヘッドがはいりアウトサイドインの軌道になってしまうからです。ヘッドにもその傾向を助長しやすいものが多かったようです。現在ではかなり改良されて打ちやすくなりました。マレットが出始めた頃は、日本のグリーンもかなり整備され、ツアーのように流し込めるグリーンが増えた時期だったと思います。何十年か前は、打っていかないとボールが転がらず、ヘッドの軽いパターが主流でした。現代ではラインに乗せて綺麗な弧を描いてカップに吸い込まれるようなパッティング出来るようになりました。ツアープレイヤー気分になれますね。

M以前、アメリカのパターデザイナーと話す機会がありました。彼は、古今東西の名器パターを計測したりして研究していました。名器と言われる物は、目に入る部分の設計がかなり考えられているとのことでした。同じような話を国内でも聞きました。ネック、トップブレード、バックフェースの形状、光の受け方、ラインの入れ方。現在でもパターデザイナーは細部まで研究しています。すべての角が対象になるのですから、大変な作業になります。パッと構えて、ストロークしやすいパターには実はたくさんの秘密が隠されているのです。ところで前述の彼のパターはUSPGAツアー向けに作られており重心位置が高く、ソフトタッチで当てて転がすような早いグリーン向きでした。プロと同じものはパターでも難しいと勉強になりました。

M学生時代からゴルフ競技を楽しむ知人にパター好きがいます。「パターなら何時間でも打ってられますよ。」一番短いクラブなのに、芯で打つのが難しい。ヘッドスピードを出せないからでしょうか。彼はアプローチも大好きなのですが、その理由が「パターもアプローチも、出球から止まるところまで見えるから。」とのこと。そんな話を聞いていると、ますますゴルフって楽しいスポーツだなぁと思えてきます。
文:A