「ぴっちぴっち、ちゃぷっちゃっぷっ。」
「お帰り。」
子供が顔を上げて、駆け寄ってくる。代休を取った僕は、幼稚園バスまで迎えに来たのだ。
子供は水溜りを選んで、跳ねながら続きを歌う。「パパの傘、大きいね。」改めて手にした傘を見つめた。父から定年退職した時に譲られたものだった。
その傘は、ずっと家にあった。古びた感じはしないけれど、木製の柄は重く、子供だった自分は(大人は重い傘を持つんだなぁ)と感じていたものだった。傘を渡された夜の食卓で、説明があった。上司に勧められて購入したこと、大人なら良い傘を持ったほうがいいこと、そして修理してずっと使えること。時々、家の傘置き場からなくなっていたのは、修理に出していたからだということもその時に初めて知った。その説明は、大切に使いなさいということだった。修理箇所は、生地の張替えと中棒、親骨の交換を行ったようだ。どうやら、僕が幼かった頃に車のドアに挟んでしまったらしい。柄はそのままで、今でも当時の傷が残っている。
僕が使い出して十数年が経った。あと五年ぐらいしたら、気分転換に違う柄の生地に張替えようかとも思う。父にプレゼントしてもいいし。
考え事をしてるうちに家に着いた。「ただいまっ」「来週、おじいちゃんの家に行こうか?」「いいわよ。」妻はにこやかに微笑んでいた。
傘は家と同じぐらい長く付き合えるものかもしれない。僕と父との付き合いのように。
クラブオノフ別注の洋傘です。生産をお願いしたのは、昭和23年に下町で創業した前原光榮商店さんです。
前原光榮商店さんは、皇室の方々にも愛用される傘を製作し、こだわり好きな人々の間では有名な洋傘工房です。百貨店などで、オーダー受注会も開催されているそうですので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
オノフで洋傘を開発しましたのは、傘の本場とも言われる英国のスタイルと日本の職人のこだわりを伝えたかったからですが、素晴らしい傘が完成しました。表と裏で柄が違う高品位な生地、木製の中棒や柄(手元)。丁寧でオーソドックスな細部の仕上げ。そして何より修理に対応可能で長く愛用できること。深く色づけされた楓の手元は、長期間の使用で美しい輝きを見せてくれるようです。
長く愛用いただきたいものだからこそ、妥協無く突き詰めたモノづくりの精神は、オノフの目指す地点と同じなのです。いい素材を幾人もの職人が手仕上げした最高級の傘をぜひお試し下さい。きっと雨の日が楽しくなると思います。
傘の開発で最初に悩んだのは、骨の本数でした。16,12,10,8..。骨の本数が増えれば、受骨や親骨を支える部分の間隔が狭くなり強度が少し低下します。骨が多いと和傘のような美しさもあるのですが..。最終的には、開いたときの美しさと英国で主流という8本に決定しました。
受骨を支える”下ろくろ”と呼ばれる部分です。この部分を覆っている(ろくろ巻き)生地は本体使用生地と同じで、傘の内側から見るとコーディネイトされているのが分かります。こだわりと遊び心が融合した下町の粋を感じる部分です。
表側はネイビー、裏側はブルーにネイビーのストライプの生地を使用しています。雨の日の開いた時にも気分を上げてくれそうです。スーツやトラウザーの内側に使用される生地をスレーキといいますが、表生地と違うイメージを使用するのも大人の楽しみ。この傘にはそのイメージを持たせました。
この生地がよく出来ていて、どのようにしてダブルフェイスに作っているのか不思議に思います。さらに特別な技術で、裾がフラットに仕上げられています。そのため、外も内も水滴が留まらずに綺麗に流れ落ちていきます。落ちる雨雫を眺めるのも文学的な楽しみかと思います。
玉留は真鍮製で、クラブオノフの刻印を入れています。その他には傘袋にもネームがあります。中棒には、頑丈な樫を使用しています。硬くなれば加工は難しくなるのですが、昔からの定番の木材を使用しました。
最近は樫の入手も年間で本数が決められており、段々難しくなっているそうです。
手元には楓を使用しています。何度も塗り重ねられて美しい深みのある色になっています。そして楓ならでは、ソフトな持ち心地は絶品です。
楓の手元は強度を保つためにゆっくりと曲げられ、美しいカーブを描いています。
貯められたポイントでぜひ、この洋傘をお愉しみください。
- ■前原光榮製 傘
- 生地:ポリエステル
- 親骨:スチール
- 中棒:樫
- 手元:楓
- 玉留:真鍮
- タッセル付(木玉)
- 開いた時の直径:約106cm
- 畳んだ時の長さ:約92cm
- 重さ:約490g(個体差があります)
- カラー:ネイビー
- made in Japan
- 必要ポイント数:25,000pts
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