2017.11.30

[Part. 8]

「あえてグリップの自由を奪う意味」


めっきり寒くなりました。この時期になると、気温が低く、準備運動をしても、体がなかなか温まらず、怪我をしてしまう方が増えるので、いつも以上に準備運動は入念に行いたいところですね。夏とこの時期とでは、全く別の準備が必要です。

さて、前回はイップスを改善するためのルーティーンについてのお話をさせて頂きました。注意深くプロゴルフの試合などを見ていると、同じリズム、同じ動きをしている選手が多いことに気づきます。そしてその多くは、単なる「クセ」ではなく、ベストパフォーマンスのために作り上げられたルーティーンであったりするのです。「イップスであるかイップスでないか」に関わらず、ルーティーンは、ゴルフのようにプレッシャーの高い状況で再現性の高いプレーが求められる競技では、プラスになることが多いので、ぜひ試してみてください。

さて、今回はルーティーンとは全く別のイップス対策をお伝えさせて頂きます。

■手首の自由が奪われるとイップスは起こりづらい??

イップス症状は、身体のどの部分で起こっているのか?イップスに悩んでいる方は、ちょっとしたパニック状態に陥ってしまっていることが多く、「考えたこともなかった」ということが多いのが現状です。実はどの部分に起きているのかについては、過去の文献やイップス治療に関わらせて頂く中で、大方の答えは出ています。

それは、「肘から指先にかけての部分」です。
「肘から指の細かい筋肉が勝手に震えたり、固まったりなどの悪さをして、思い通りに動いてくれないのがイップス」と考えてOKだと思います。体幹部がイップスで震えたり、固まったりという話は今のところ聞いたことがありません。
そこで「悪さをする」部分の自由を奪うことで、イップスの症状を抑えられた、というケースが非常に多くみられています。イップス症状を抑え動作の成功率を高めることで、成功体験が生まれます。イップスは成功体験を重ね、失ってしまった「自動化した動作」をもう一度獲得することで改善していくケースが多いため、成功体験を繰り返すことは非常に重要になります。

グリップの「自由を奪う方法」ですが、写真のようなグリップが有効です。

可能な限り手首を手の甲側に折り曲げ、親指を内側に絞るようにグリップを握ります。すると、指、手首、前腕の動きが不自由に感じられるかと思います。
実は、イップスが起こってしまったとき、ご自身で改善されようとされた多くの方は、「余分な力が入ってるのではないか」と考え、リラックスするために手をブラブラさせたり、グリップの握りを浅く緩くしたりされる傾向があります。
しかし、イップスの症状が起こっている状態で、起こっている場所をリラックスさせてしまうと、「悪さし放題」になってしまうんですね。そこであえて「窮屈さ」を作ることで、肘から下の部分に悪さをさせないことが期待できます。
そうなると、脳は「肘から下が動かしづらいから、違う部分を使ってショットしないと!」と切り替え、イップスを起こしづらい部位「体幹」の部分を使って動作を行ってくれるのです。
この動きづらかったり、痛みなどのために動かしたくない場所をかばって、別の場所を使って同じような動作を行なうこと」を

「代償動作(だいしょうどうさ)」

と呼びます。本来は「肩甲骨を傷めているため、代償動作が生まれてしまっている」などと、マイナスの意味で使われることが多いですが、イップスは本来動かすべきではない場所が、過剰にまたは誤って運動してしまっている傾向があるため、あえて動いて欲しくない場所の動きを制限し、本来動いて欲しい場所の代償動作を引き出すということが、このエクササイズの目的となります。

まずは試してみてください。次回は、今回の内容をさらに発展させてお話させて頂きます!

1982年群馬県生まれ。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業。現在、ハバナトレーナーズルーム恵比寿・代表。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本トレーニング指導者協会公認トレーニング指導者(JATI-ATI)トレーナーとして、数多くのアスリートのトレーニング、コンディショニングをサポートする他、アスリートのフィジカルコンプレックスをなくすことを目指し、キューバスポーツ研究、イップス研究を行っている。また、柔道グランドスラム・キューバ代表サポート(2011年~)、ワールドベースボールクラシック2013・キューバ代表サポートなどの活動を行っている。
著書『イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)