2018.11.1

[Season.2-10]

指導現場で活躍しているプロとイップスを語る(その2)


こんにちは。ハバナトレーナーズルームの石原です。今回は、向江プロへのイップスインタビュー後編です!早速始めさせて頂きます!

石原「前回は、イップスの改善方法の一つとして『できるだけ大きい筋肉を使うために、重心の位置を安定させる』というお話までお聞きしましたが、私がイップスの改善に重要であると考えているのが、『成功体験を重ねる』というものなのですが、いかがでしょうか?」

向江プロ「それは大切ですね。成功体験を繰り返すためには今まで感じていたものとは違うものを感じさせることが重要です。コンタクトをするときに重心位置が正しければミスは起きにくいので、『指先ではなく重心の位置を正しく動かせば、勝手にコンタクトできる』という、それまでと違う感覚を掴むためにドリル化したものに取り組んで頂いたりもします。」

石原「指先の器用な部分を使って動作を行おうとしすぎてしまうんですよね。」

向江プロ「そうですね。イップスとはちょっと違うかもしれないですが、シャンクや、二度打ちは意識がボールとヘッドの場所に向きすぎています。そこの意識を重心、もっと大きい部分に向けてあげることが必要ではないでしょか。」

石原「野球の例になりますが、イップスの選手に大きいボールを投げさせるというエクササイズがあります。投球のイップスの場合は、リリースの時に指先で制御しようとしすぎてしまう傾向があるため、大きいボールで指先が働きづらい状況にした上で、大きい筋肉を使って投げざるを得ない状況にする、というのが目的です。ゴルフでも太いグリップで打ってもらいと有効だったという報告もありますが、いかがでしょうか?」

向江プロ「ゴルフでも太いグリップあります。大きい筋肉でしか動かせないので、素直な動きしかできなくなるんでしょうね。バスタオルを巻いたりして太いグリップを作ったりしますよ」

■注目!目からウロコのイップスの核心

向江プロ「ちなみに私は、イップスはこの2本の指『親指、人差し指』の反応が多いと考えています。この2本は、前腕の上の方の筋肉が支配していますが、ゴルフでは、この部分を使うのは、実は好ましくないから、遮断する握り方で打ってみると、イップスの症状が緩和されることが多いんですよ。」

石原「いやー、それはかなり納得です!イップス経験者として、腑に落ちます!箸を使うときになんかにも思い当たる節があります。ペンも筆圧が強いのです。ペンだこもすごくできてしまう。ペンや箸も、細かい動きを求められる代表的なもので、いやーイップスの核心だと思います」

向江プロ「とにかく脳が効き手の人差し指が『一番言うことを聞く』ことを分かっていて、使いたがるんでしょうね。イップスに悩む方が、パターでクローグリップを使うことが多いのも、効き手の反応を起こさせないように、大きい筋肉で押すだけの動きを引き出すためなんじゃないかな、と考えています。クローグリップでイップスから復活する選手も多いですよね。」

石原「いやー参考になります。実は、投球イップスでも親指、人差し指を使わず、中指、薬指、小指で投げると狙ったところに投げられる、という現象が見受けられます。使えない状況を作ることで、脳が諦めて違うところを使おうとするのでしょうね。ちなみに、イップスとメンタルの弱さ、は関係すると思いますか?」

向江プロ「私は関係ないんじゃないかな、と思います。というよりも、そもそも、私はメンタルって強くなることはないと思うんですよ。メンタルってその人の本質なので。強くすることはできず、『置き換える』ことはできると思います」

石原「置き換えるですか?」

向江プロ「はい、『こういう時にこういう風に考えてしまう』というメンタルを、それを意識しないメンタルに置き換え、違うゲーム性を身につけられるか、意識を置き換えるとも言えるかもしれませんね」

石原「最後に、プロは、イップスになってしまう方の特徴や傾向はあるとお考えですか?」

向江プロ「そうですね・・・。自意識過剰な方が多いかな(笑)意外と神経質そうな方でも、他人のことが気にならない方はあまりイップスとは無縁な気がしますね・・・。」

私自身イップス経験者として、最後は耳の痛いお話でした(笑)

さて、2回に渡りお送りさせて頂いた向江プロのインタビューコラムですが、目からウロコのお話ばかりで、大変勉強になりました。大変お優しく、熱心な向江プロのレッスンを今にも受けさせていただきたい、と思いました!

向江 寛尚プロ(1972年生まれ) 99年よりツアープレーヤーになる。その経験を活かし2005年からレッスンプロとして活動を開始。オンワードゴルフアカデミーのディレクターコーチを始め、プロ・アマ問わずにレッスンを展開している。テレビドラマなどでのゴルフシーンにおける監修も手がける。
ONWARD GOLF ACADEMY Futako Tamagawa オンワードゴルフアカデミー 二子玉川 オンワードゴルフアカデミーは、オリジナルプログラムにより「生徒一人一人に合わせた綺麗なスイングを作ること」をレッスンコンセプトとしています。綺麗なスイングの妨げになる、身体的・視覚的・メンタル的要因を、最新レッスン機器を駆使し見つけ出し、オリジナルドリルを用いて改善していきます。 〒158-0094東京都世田谷区玉川4-1-9 タマリバー246
TEL 03-6411-7688
1982年群馬県生まれ。2007年早稲田大学スポーツ科学部卒業。現在、ハバナトレーナーズルーム恵比寿・代表。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、日本トレーニング指導者協会公認トレーニング指導者(JATI-ATI)トレーナーとして、数多くのアスリートのトレーニング、コンディショニングをサポートする他、アスリートのフィジカルコンプレックスをなくすことを目指し、キューバスポーツ研究、イップス研究を行っている。また、柔道グランドスラム・キューバ代表サポート(2011年~)、ワールドベースボールクラシック2013・キューバ代表サポートなどの活動を行っている。
著書『イップス スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)