2018.12.13

[vol. 008]

コンサートの翌日に


旅するひと = 小椋 佳おぐら・けい

1944年生まれ。67年東京大学法学部卒業後、日本勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。浜松支店長、本店財務サービス部長等を経て93年退職。94年東京大学法学部に再入学、2000年大学院修士号取得。この間、71年初アルバム『青春・砂漠の少年』を発表、3作目のアルバム『彷徨』は100万枚のセールスを突破。以来、ソングライターとして多数のアーティストに作品を提供。『シクラメンのかほり』『俺たちの旅』『夢芝居』『愛しき日々』『愛燦燦』など数多くのヒット作品がある。

飛ばし屋

日本勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行して間もない頃、麻雀とゴルフの話しかしない上司や先輩に対して辟易していたのに、ある時、強制的にコースに連れて行かれることになった。練習もせず、ゴルフ場に着いてからグリップのビニールをはがしていきなりスタートと相成ったが、やってみるとこれが面白い。私のゴルフ人生はこうして始まった。

何しろ野球、バスケットボール、ボートに打ち込んできた体育会系。体力は有り余っていたし、クラブの扱いに慣れるのにもそう時間がかからず、30代のうちに37・37のベストスコアが出た。プロをオーバードライブすることもあるほどの、飛距離に物を言わせるゴルフで、4番ウッドを2回振ればパー5のグリーンを捉えていた。

ゴルフを始めた20代は第一勧銀が参画して開発した大多喜カントリークラブ(千葉。現・レイクウッド大多喜カントリークラブ)、浜松支店の支店長になった40代半ばからは葛城ゴルフ倶楽部(静岡)によく行った。

銀行時代の仲間達とは今も定期的に月2回のゴルフを楽しんでいる。場所は決まって神奈川県鎌倉市の鎌倉カントリークラブ。同期の数人が大船周辺に居を構えているからで、ここにはもう何度足を運んだか知れない。

とはいえ皆、寄る年波には勝てず、私の飛ばしのゴルフもすっかり鳴りを潜めた。大病をふたつやり、体重が20数キロも減っては筋力も落ちて当然。これまでスコアを競ってきた長男にも、このところは負けが込んでいる。250ヤードも飛ばす息子を見ていると、昔は自分もああだったのにと口惜しさでいっぱいになる。世間のイメージは穏やかに映っているかもしれないが、私だってゴルフの調子が悪ければふてくされる。行く度にもうやめると言いながら、それでも数日後には次のスケジュールを入れている。ゴルフとはつくづく不思議なスポーツである。

写真は鎌倉CC。変化に富んだアンジュレーションと落とし場所を絞り込んだレイアウト、深いガードバンカーなど攻め甲斐がある。クラブハウスからは横浜、新宿副都心の景観を楽しめる。

アテネの思い出

銀行勤めをしていた頃はロンドンやアトランタ、ニューヨークなど海外でもゴルフをする機会に恵まれた。オーガスタ・ナショナルのあるアトランタはどこもコースのクオリティが高く、ニューヨークは名門倶楽部から公営コースまで実に幅広い。どこへ行っても、雨の日でもゴルフをしていたのは日本人だけだったことをよく覚えている。

一時期、ニュージャージーで暮らしていた時は近所の人達とゴルフを楽しんだ。当時すでに年50曲以上のペースで歌を作っていて、日本で『シクラメンのかほり』を布施明さんが歌って大ヒットし、大騒ぎになっているというニュースも海外で聞いた。

以前、テレビの旅番組で大好きなギリシャに行った時のこと。アテネの名所旧跡を訪ね歩き、素晴らしい景色を堪能してロケが順調に進み、スケジュールがぽっかりとあいた日があった。私はゴルフをしようと思い立ち、ホテルに手配を頼むことにした。確かスタッフの1人だったと思うが、連れだって言われたとおりの場所に車を走らせて行くと、そこは荒涼たる原野。傍らには、お世辞にもきれいとは言えない小屋がぽつんと建っている。

もちろん道具は持って来ていないから、そのクラブハウス兼プロショップで一式借りてコースに出てみると、フェアウェイはちょっとした草が生えている程度。アドレスすると辺りは石ころだらけで、ラフとフェアウェイの境目もはっきりしない。表示板もきちんと整っていないから、向こうに見えるティグラウンドが何番ホールのものなのかもよくわからない。ショットをするたび、コースの中を歩き回る犬がやたらと多いのも目に付く。あんなゴルフ場でプレーしたのは人生最初で最後。これも忘れられない旅の思い出ではある。

(上)アテネのアクロポリス。ギリシャのシンボル的存在で、中心に位置するパルテノン神殿は今なお息をのむ美しさ。(左)遺跡に向かって坂や階段が続くアテネの街。裏路地の店での食事もおすすめ。(右)ニューヨークで唯一の36ホール、Pelham Bay & Split Rock Golf Courses。

旅は続く

銀行勤務時代は世間にほとんど顔を出すことなく音楽活動を続けた。コンサートツアーを本格的に行うようになったのは50歳を過ぎてからだ。

ありがたいことに現在も全国各地から公演の依頼をいただいており、多い時は毎週のように出かけ、当日に現地入りしてリハーサル、夜にコンサートというスケジュールで動いている。翌日は主催者の方達が打ち上げのコンペを企画してくださることもしばしばで、皆さんとゴルフでご一緒するのも楽しみのひとつだ。

先日、岐阜でコンサートを開いた時は谷汲カントリークラブに連れて行っていただいた。こんなふうにして、初めてプレーするコースが全国に着々と増え続けている。

新年は1月4日と5日にBunkamuraオーチャードホール(東京)で2日連続のニューイヤーコンサート。その後も中部、関西、九州に行くことが決まっている。音楽人生は50周年を超えたが、旅はまだしばらく続きそうである。

根っからの練習嫌い。ゴルフはイチからコースで覚えた。5年前には69歳にして初のホールインワンも経験している。左の写真は谷汲CC。池を挟んで並行し、ハウスに向かって打っていく9番、18番は共有のダブルグリーンを使用する。

Find Information
鎌倉カントリークラブ
今年で開場50年。アクセス抜群の都会派コース
神奈川県鎌倉市今泉5-1026
開場/1968年 設計/手塚 誠
谷汲カントリークラブ
2006年の日本プロなどPGA競技を数々開催
岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲長瀬乾谷
開場/1991年 設計/大日本土木 監修/倉本昌弘
Pickup Item

大人の旅だからこそ、使用するバッグなどはシンプルしたいですね。白を基調にしたシンプル&アクティブなスタイルをご提案いたします。大人が着こなす白は特別ですね。