2018.12.21

[vol. 009]

冬の川奈へようこそ
静岡 / 伊東


旅するひと = 井原利夫いはら・としお

川奈ホテル元支配人、現オペレーション担当部長。1954年伊東市生まれ。1979年に入社以来ホテルマン一筋40年。国内外の数々のVIPの接遇にあたり、飲食担当副支配人時代の2010年には天皇皇后両陛下の給仕をした経験も。現在は後進を指導する傍ら、豊富な知識を生かしてホテル内のガイドツアーを行い、好評を博している。

クリスマスの伝統

冬はホテルが最も鮮やかに彩られる季節。12月が近づくと、色とりどりのクリスマス飾りを施してお客様を迎えます。メインロビーでひときわ目を引くクリスマスツリーは高さおよそ5メートル。金のリボンや大小の赤いオーナメントで飾るのが川奈伝統のスタイルになっており、華やかでありながら華美になり過ぎないよう心がけています。

ツリーや暖炉の上に架けた大きなクリスマスリースはホテルの園芸課が作ったもので、11月末日の早朝、10数人のスタッフが総出で設置作業を行います。1辺2メートルほどもある木製のツリーの台座も、根元を埋め尽くす大量の松ぼっくりもすべて自前。敷地内で採れたものを使用しています。普段、ホテル内を飾っている花々も園芸課が育てていることはあまり知られていませんが、彼らの確かな技術は当ホテルが自慢できることのひとつといえるでしょう。

夕刻になるとツリーに飾った1000球の電球に明かりが灯り、暖炉に火が入ってクリスマスムードは一層高まります。12月22日~24日にはロビーコンサートも行う予定ですので、ゴルフのお帰りにちょっと覗いてみてください。都会とはまた違った、ここ川奈ならではのゆったりとしたひとときを味わっていただけると思います。

また、伊東海岸では市の主催による花火大会が12月22日に行われます。海上から打ち上げられる約1000発の冬の花火が幻想的と例年人気のイベントです。この日、伊東にいらっしゃることがあったらぜひこちらもお立ち寄りください。

クリスマスロビーコンサートは12月22日~24日、15:30と17:30の各日2回。暖炉に火が灯るのは2019年1月3日までの毎日と1月の金曜・土曜、1月13日(いずれも17時~)。写真右上はメインダイニングの『クリスマス シュミネディナー』(12月25日までの期間限定。12,000円)。下段は伊東の花火大会の様子。

カントリー・エステイト

川奈の歴史は1928年、大島コースの誕生と共に始まりました。創業者は大倉財閥の2代目総帥、大倉喜七郎。帝国ホテルや東京會舘、帝国劇場などの社長職を経て川奈ホテルとホテルオークラを創業しました。趣味人として知られ、文化事業にも多くの功績を残しています。ホテルと富士コースがオープンしたのはそれから8年後の1936年のこと。1930年、東京ゴルフ倶楽部と廣野ゴルフ倶楽部の設計のため来日していたC.H.アリソンに設計を依頼し、手作業で造られたコースは後に世界ベストコースランキングの常連になりました。

大倉はこの地にカントリー・エステイト、すなわち英国郊外に見られるような美しい田園地帯と、その核となる邸宅を造ろうと考えていました。ゴルフコースからは民家や鉄道など日常を連想させるものを見せてはならないと裏山まで買い取る徹底ぶりで、その景観は90年経った今も変わっていません。また、この辺りは水に乏しい土地だったため、大倉は12km離れた天城山中に水源を確保し、浄水場を作って私水道を引きました。以来、飲料水やレストランの料理はもちろんのこと、前庭の屋外プールやゴルフコース内の散水に至るまで、ホテル内で使う水はすべてこの水を使い続けています。天城山麓を長い時間をかけて湧き出た天然水はやわらかな口あたりで、「川奈のいちばんのごちそうは水」という方もいるほど。メインダイニングの壁にはその天城の水源を描いた大きな絵が飾られています。

ホテルの建物は城をコンセプトにしており、壁に掲げた紋章や物見櫓をイメージした展望台など随所にそれが表れています。川奈にいらしたことのある方ならお気づきと思いますが、ロビーとメインダイニングをつなぐ廊下は直線ではなく、微妙なカーブを描いています。これは食事をしながら富士山を正面に見られるようにと、メインダイニングの向きを途中で変更したためです。

このように床の大理石や絨毯、照明など、長年使い続けている家具調度のどれひとつとってもそれぞれにストーリーがあります。先頃、それらをホテルの歴史と共にご紹介するガイドツアーを始めました。何度もお越しいただいているお客様でも知らなかったと驚かれるような逸話や豆知識を交えてご案内しており、皆様に喜んでいただいています。

上の写真は大島コース。大谷光明の設計で昭和3年に完成。ラウンドはGPSナビ付乗入れスループレーと最先端システムを導入。左上=昭和11年のプレー風景。右上=メインダイニングの天城の水源を描いた絵画。左下=館内を注意深く見ているとそれぞれに意匠の異なる紋章を見つけることができる。右下=2016年、川奈ホテル本館は有形文化財に登録された。

新年と共にお花見を

大晦日は海を臨むサンパーラーでお客様とスタッフが一緒にカウントダウンをして新年を迎えるのが恒例になっています。お屠蘇を振る舞い、餅つきをしてお正月が過ぎると、川奈は早くも桜のシーズン。1月半ばを過ぎた頃から4月にかけて30種以上の桜が次々に咲き続けます。

風さえ吹かなければ日中は半袖で過ごせるほど暖かく過ごしやすいので、静かな夕暮れ時の散歩をしたり、夜間ライトアップが始まったらディナーのあとで庭に出て、ゆったりと夜のお花見を楽しまれるのもいいでしょう。

また、お部屋のテラスでコーヒータイムというのもおすすめです。私のお気に入りは312号室。本館のオーシャンビューツインで、リニューアルした新本館のお部屋ほどの広さはありませんがテラスがゆったりとしていて寛げます。満月の前後は月明かりが海に映って光の道ができるムーンロードをご覧いただけるかもしれません。

ゴルフと自然と美味しい食事、そして温泉と、冬の川奈の魅力を存分に味わっていただけると思います。

上の写真は敷地内の桜。約30種9,000本が1月からおよそ3カ月かけて次々に開花する。左上=夕暮れ時、サンパーラー前の庭を散歩するのもおすすめ。右上=新本館の海側客室は2018年にリニューアルしたばかり。クラシックホテルの落ち着きを生かしつつ、客室は最新設備へのリノベーションが進行中。左下=宿泊者限定の温泉施設ブリサマリナ。右下=展望台からの眺めは爽快。

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川奈ホテル
海を見下ろす半島に建つホテルは全100室。マリリン・モンローとジョー・ディマジオが新婚旅行で滞在するなど多くの著名人に愛されてきました。ゴルフコースは大島、富士の2コース36ホール。大島コースは日帰りプレーも可能です。
やまももケーキ
2018年9月に発売された川奈ホテル最新のお土産。伊東名産のヤマモモを使い、地元の県立伊東商業高校とコラボして開発。極上のスイーツに仕上がりました。
とっておき冬花火大会
伊東の冬花火は毎年12月22日に開催。会場は伊東駅から徒歩約10分、伊東海岸のなぎさ公園周辺。場内ではフリーマーケットも開催されます。
伊豆高原グランイルミ
伊豆ぐらんぱる公園で開催中のイルミネーションもおすすめ。東京ドームおよそ2個分の広さに600万球が敷きつめられた景色は見応えがあります。
Pickup Item

ゴルフと旅好きの方へのプレゼントは何がいいでしょうか。渡すシチュエーションも前夜のバーカウンターとか、ラウンド後のクラブハウスとか。考えるだけでもわくわくしますね。