2020.2.17

[vol. 029]

景色を味わいに行くゴルフ


旅するひと = 織作峰子おりさく・みねこ

1960年、石川県出身。写真家。大学時代に友人が送った写真がきっかけで1981年度ミスユニバース日本代表に選ばれ、ニューヨーク大会に出場。ミスユニバース任期中に写真家・大竹省二氏と出会い、翌年、大竹スタジオに入門。86・87年、全国二科展入選。87年独立。89年から2年間、米ボストンに暮らし、作品集『BOSTON in the time』を発表。世界各国の美しい風景や人物の瞬間を撮り続け、国内外で写真展を多数開催する傍らテレビ出演や講演など幅広く活躍。大阪芸術大学教授(写真学科学科長)。2000年ウォーターフォード・ウェッジウッド・ライフスタイル・アワード受賞。公益社団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 文化・教育委員会委員。ゴルフ歴30年、ベストスコア86。

大洗のアーメンコーナー

井上誠一の設計で1953(昭和28)年に開場した大洗ゴルフ倶楽部。上がり3ホールは大洗のアーメンコーナーと言われ、特にタフ。海風を受けて斜めに伸びた松の大木を至る所で見ることができる。写真は正面に太平洋を望む16番パー3(145~245y)。

日本で過ごすたまの休日、ゴルフをするのが楽しみになっています。近場では神奈川県の湘南シーサイドカントリー倶楽部やスリーハンドレッドクラブ、千葉県の東京クラシッククラブなど。個性があって、そのコースならではの景色を味わえるところに足が向きます。
湘南シーサイドの1番ホールは大きな池とヤシの木でリゾートの雰囲気がありますし、東京クラシックは併設する乗馬クラブの馬たちを時折、眺めながらプレーすることも。日本で初めてゴルフ場の内外も乗り入れできるホーストレッキングを行っているので、近くに来た時は馬が優先。ゴルフを一時中断して通り過ぎるのをのんびり待ったりすることもあるんです。

仕事で海外に出かけることが多いせいでしょうか、日本のコースの佇まいにも心魅かれます。大洗ゴルフ倶楽部はそんなゴルフ場のひとつ。松林と海風がタフな、言わずと知れた名コースですが、あの独特の雰囲気は他のコースでは味わえないと思います。

なかでも16番からの上がり3ホールは景観も難しさもとびきりでした。16番は距離があり、向かい風になることが多いパー3。ここで私はなんと1オンに成功したことがあるんです。いつも大抵、レギュラーティやバックティから回っている私は、あの時も男性に交じって果敢に青ティを選び、奮闘していました。迎えた16番、230ヤード。バンカーは1つもありませんが、左に松林が迫っているので、攻略ルートは限られます。そんなプレッシャーを跳ね除けてフルショットしたボールはきれいな弧を描いてグリーンへ。あの時の感触は今も忘れられません。

左=トーナメントのプロアマに呼ばれることも。写真は富士フイルム シニア チャンピオンシップのプロアマ大会(千葉県のザ・カントリークラブ・ジャパンにて)。
右=大洗ゴルフ倶楽部4番(108~165y)。距離の短いパー3だが、左右にせり出す松と池、バンカーの緊張感のある美しさを味わえる。

故郷・石川県のおすすめは…

片山津ゴルフ俱楽部は1957(昭和32)年開場。佐藤儀一が自然のアンジュレーションを巧みに活かして設計した。写真は白山コース18番パー4(431~448y)。距離があるうえ、フェアウェイサイドとグリーン周りに深いバンカーが幾重にも立ちはだかる。

私の故郷、石川県にも素晴らしいコースがたくさんあります。北陸地方で最も長い歴史がある片山津ゴルフ俱楽部をはじめ、小松カントリークラブや朱鷺の台カントリークラブなどトーナメント開催で知られるコースも多く、GOLF CLUB ツインフィールズに至っては、用地の一部が私の曾祖父の持ち物だったというまさに地元のゴルフ場です。
どこも日本海や白山などのダイナミックな眺望に恵まれて、開放感たっぷりのラウンドを楽しめます。

能登島もいいところですよ。七尾湾に浮かぶ小さな島で、ひょっこりひょうたん島に似ていることから“ひょっこり能登島”と呼ばれて親しまれています。金沢から車だと、のと里山海道経由で約90分。和倉温泉から七尾湾に架かる能登島大橋を渡れば、透明度抜群の海に囲まれた能登島に到着します。
島の西側にある能登島ゴルフ アンド カントリークラブは海のダイナミックな景色が広がる絶景コース。片山津とはまったく趣が異なり、こちらはフラットなフェアウェイに大きな池が絡んでリゾート感たっぷり。和倉温泉も近いので寄り道して行くのもおすすめです。

左=能登半島と能登島を結ぶ能登島大橋は全長1050メートル(県内最長)。左右に大迫力の景色が広がる。
右=能登島ゴルフ アンド カントリークラブ。4番は池を囲んで大きく右にドッグレッグする美しいパー4(301~374y)。

北陸は魚とお酒の美味しさも忘れることはできません。殊に金沢はお寿司のレベルが際立って高く、『すし処 めくみ』、『乙女寿司』、『小松 弥助』といった名店が揃っています。近頃はどこも予約を取りにくくなりましたが、機会があったらぜひ味わっていただきたいですね。新鮮なネタももちろんですが、北陸に昔から伝わる『ばちこ』(干しくちこ)を見つけたらぜひ試してみてください。なかでも能登にいる名人の方だけが作れる極厚のばちこは絶品です。

日本酒は小松の『東酒造(ひがししゅぞう)』と『農口(のぐち)』が外せません。東酒造は『神泉』で知られる老舗の造り酒屋さん。農口は現代の名工の農口尚彦さんが杜氏を務め、ちょっと特徴のあるお酒造りをされています。

以前、東酒造で貴重な体験をしました。お酒が発酵する際の上澄みの部分と味噌を使って野菜を煮た泡汁(あわじる)というお料理があり、幸運にもいただく機会に恵まれたことがあったんです。作り方は粕汁に似ていますが、味わいは別格。何とも言えない上品さと芳醇な香りがたまりません。この泡汁は残念ながら門外不出。酒蔵で働いている方たちだけが味わえる幻の味とのことでした。

左=名店がしのぎを削る金沢の寿司。人気のお店は早めの予約がおすすめ。
右=東酒造の神泉大吟醸。フルーティな飲み口で魚料理との相性もいい(720ml 3000円)。

京都の定番

京丹後地方の郷土料理、ばらずし。写真は日本料理店『とり松』のもの。炒り炊きにした鯖のおぼろなど様々な具材が絡み合い、何とも深い味わいに(1折900円~)。

先日は、京都の日清都カントリークラブに行きました。即席めんの開発者で日清食品の創業者である安藤百福さんが1960年代に創設されたクラブで、当時、ご自身が所有されていた宇治市内の広大な土地が使われています。
27ホールのコースは五雲峰(ごうんぽう)を中心とする景勝地にあり、山岳コースならではのトリッキーなところもありますがそれもまた面白く、ここも思う存分、風景を楽しめるゴルフ場です。高台から、午前中は大阪の市街を見下ろしながら、午後は宇治川と宇治の街並みを見渡して、他ではなかなか経験できない絶景ゴルフを満喫しました。

京都からの帰り道の定番は、新幹線改札内の売店で買える、『とり松』のばらずし。華やかなお弁当の陰に隠れがちですが、知る人ぞ知る名品だと思います。鯖のおぼろの味加減がよく食べごたえも十分にあって、何度食べても飽きません。
加えて私は水茄子のお漬物を調達し、ばらずしと一緒に食べるのがいつものスタイル。洗面所でお漬物の水切りをするというワザを駆使して京都の味を堪能します(笑)。お漬物はカットされて袋に入っており手間いらず。匂わないので車内でも周りにご迷惑をかけることがありませんし、あとはビールかハイボールがあれば完璧。デザートは車内販売のカチカチに硬いアイスクリームにホットコーヒーを少しかけて、イタリアのドルチェ、コーヒーアフォガード風に。東京に着くまでの、束の間のお楽しみ。皆さんもぜひお試しください。

日清都カントリークラブは宇治・都・醍醐の3コース27ホール。ゴルフ好きだった安藤百福氏が食とスポーツを通じて社会貢献をしたいと創設(開場当時の名称は都カントリークラブ)。ティマークやハウス内の各所にあしらわれたキャラクターも人気。

金沢~能登 カメラ必携!見どころガイド
  • 金沢城公園
    金沢城公園と隣接する兼六園は桜の名所としても有名。例年、桜の開花にあわせて開園時間を延長、ライトアップと兼六園の無料開放を行っている。
  • 主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)
    地元の文豪・泉鏡花の作品にも登場する浅野川沿いの茶屋街。細い路地に千本格子の風情ある料理屋や茶屋が建ち並ぶ。金沢駅から車10分。
  • 金沢21世紀美術館
    レアンドロ・エルリッヒ作の『スイミング・プール』など刺激的で楽しい展示で人気の現代アート美術館。ミュージアムショップ、レストランも併設。金沢駅から車10分。
  • 白米千枚田(しろよねせんまいだ)
    輪島市白米町の奥能登を代表する観光スポット。日本海に面し、小さな田が重なり海岸まで続く絶景は日本の棚田百選、国指定文化財名勝に指定されている。
  • 千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ
    日本で唯一、車やバイクなどで波打ち際を走れるドライブウェイ(全長約8キロ)。早朝か夕暮れは特におすすめ。最寄りのレストハウスでレンタサイクルも行っている。
  • 和倉温泉
    開湯1200年の歴史を誇る北陸唯一の海の温泉。潮風を感じて名湯を楽しめる。旅の途中で気軽に寄れる日帰り温泉施設や足湯もおすすめ。
Find Information
大洗ゴルフ倶楽部
18H 7200Y P72
開場/1953年 設計/井上誠一
自生する松林を活かし、井上誠一が存分に腕を振るった代表作。コースレート74.4を誇る国内屈指のシーサイドコース。日本オープン、日本プロ、日本アマ、日本女子アマ、ダイヤモンドカップなどを開催。 ロッジも併設している(33名収容)。
片山津ゴルフ倶楽部
開場/1957年 設計/佐藤儀一 監修・設計/加藤俊輔
片山津ゴルフ場(3月から白山・加賀・日本海コースに名称変更)と山代山中ゴルフ場(同・西コース)、2つ合わせて全90ホール。日本オープンや日本女子オープンなどを開催してきた北陸最古で最大のゴルフ場。
能登島ゴルフアンドカントリークラブ
18H 7007Y P72
開場/1989年 設計/小林光昭
七尾湾を望む絶景コース。“池の魔術師”として名高い小林光昭が設計。金沢から車90分、能登空港から40分、和倉温泉駅から約15分。
東酒造
1860(万延元)年創業。『神泉』で知られる石川県小松市の造り酒屋。酒蔵見学(4~11月)は事前の予約が必要。JR寺井駅から車5分、小松インターから10分。
金沢市観光協会
金沢の観光情報はこちらから。
日清都カントリークラブ
27H 9662Y P108
開場/1966年 設計/J.E.クレイン
宇治川を見下ろす五雲峰にレイアウト。自然の地形を生かしたダイナミックな山岳コース。J.E.クレインは鳴尾ゴルフ倶楽部を手がけた英国人設計家、クレイン3兄弟の末弟。
とり松
1932年創業。京都最北端の丹後半島、網野町で土地の味を守り続ける日本料理店。丹後の代表的な家庭料理、鯖のばらずしや地物を使った松葉蟹料理が人気。京都丹後鉄道・網野駅から徒歩7分。城崎温泉から車50分。
Pickup Item

ゴルフ用品でも、ゴルフ以外の旅のシーンなどでも使用できる高機能なアイテムがたくさんあります。カラフルなアイテムでお楽しみください。