画家。1944年東京生まれ、鎌倉育ち。少年時代からマリンスポーツに才能を発揮し、水上スキーの日本代表に。競技の際に立ち寄ったニースに魅了され、以来、たびたび訪れるようになる。滞在中に描き始めた絵が評判を呼び、コート・ダジュールの村々で展覧会を開催。代表作『ある日の24時間レース』はル・マン・ゴルフクラブが所有、『モナコグランプリの夢』はモナコ政府観光会議局の広告に採用された。1997年から軽井沢に拠点を移し、作品を生み出すと共に古き良き時代の軽井沢を次世代に伝える活動を行っている。ゴルフ歴33年。
ニースの衝撃
初めてフランスを訪れたのは1963年、19歳の時。ヴィシー(ジェームズ・ボンドが飲んでいたミネラルウォーターで有名な町)で行われた水上スキーの世界選手権に出場するためでした。 エールフランスの南回りで東南アジア、中近東を経由してローマからフランスに入る長旅の末、最初に降り立ったのがコート・ダジュールにあるニースです。
当時の空港は現在とは違って、とてもこぢんまりとしていました。機内とターミナルをつなぐボーディングブリッジなどはなく、駐機場を歩いて移動する時代です。
「これはすごいところに来た……」。カラベル(当時全盛のフランス製ジェット機)のタラップを降り、ニースの空気に触れた時の感動は半世紀近く経った今も忘れることができません。
紺碧の海、シュロの並木が続く海岸通り……。目に映るすべてのものが鮮やかで、優雅さに満ち溢れていました。
ニースはコート・ダジュール(青い海岸)の中心都市。南仏の中でもイタリアに近く、およそ7km続くビーチは6月の終わりから9月の初め頃まで海水浴客で賑わいます。
海沿いの遊歩道、プロムナード・デ・ザングレを散歩やサイクリングを楽しむ人たちが行き交い、旧市街ではピカソやマティス、シャガールらも通ったという老舗画材店のラ・メゾン・フランコが今も歴史を刻み続けています。
私が絵の活動を始めたのもここでした。90年代になってニースを訪れていた時、初めて描いた絵が好評で、コート・ダジュールにある村々で展覧会への出品を持ちかけられるようになったのです。
その後、シャガールの住んでいた村、サン・ポール・ド・ヴァンスにあるギャラリー『アブラカダブラ』の専属になり、各地で個展を開催するようになりました。
小道が迷路のように入り組む旧市街。サレヤ広場のマルシェは食材や花、骨董などを扱う店が軒を連ねます。
右下はシャガール美術館。旧約聖書をモチーフにした作品を中心に約450点を展示。シャガールがデザインしたステンドグラスも見ることができます。
ゴルフ天国、コート・ダジュール
カンヌ・オープンの開催コース、ロイヤル・ゴルフ・ド・ムージャンに飾られていた18世紀の貴族がキャディとティボックスにいる絵。それをコピーして僕のキャラクターを入れ、『美術館にて』と題した作品です。ゴルフは今や貴族のスポーツではなくなりました。
1年中、降り注ぐ陽光と穏やかな気候はゴルファーにも恩恵をもたらします。コート・ダジュールに点在する20あまりのゴルフ場にオフシーズンはありません。
1911年開場の名門、モンテカルロ・ゴルフクラブや、ロバート・ヴォン・ヘギー設計のロイヤル・ムージャン・ゴルフクラブなど名コースが数多あり、世界中から愛好家が訪れます。
コート・ダジュールで最初に造られ、フランス国内でも2番目に古いのがカンヌ・マンドリュー・ラ・ナプールのオールドコースです。1891年の開場でハリー・コルトが設計を手掛けました。コース内は樹齢を重ねた松林が印象的ですが、途中、次ホールに行くのに船で川を渡るユニークなレイアウトでも知られています。
上=カンヌ湾に面したカンヌ・マンドリュー・オールド・コース。
下=エビアンリゾート・ゴルフクラブはメジャートーナメントが行われるチャンピオンズコース(写真)とレイクコースの36ホール。
スイスとの国境沿いの町、エビアンにも出かけました。レマン湖の南岸に位置するエビアン・レ・バンは名水の里。そこにあるエビアンリゾート・ゴルフクラブは女子ツアー競技、エビアン選手権の開催コースとして世界的に有名です。トーナメントで使われるチャンピオンズコースは2013年のメジャー大会昇格を機に大改造を行い、さらに難しくなりました。
手ごたえは十分すぎるほどありますが、湖とアルプスの雄大な景観はここならではのもの。敷地内には5つ星と4つ星の2つのホテルや名水を使ったスパなどが点在して、タフなコースを回った疲れをゆったりと癒すことができます。
ル・マンでの出来事
6月になるとフランス西部の都市、ル・マンは24時間レースで活気づきます。例年、レースの行われる週の月曜日は車検で、水曜と木曜に予選を行ったら金曜は休み。そして土曜の15時から日曜の15時までレースを行うというのが決まりです。
およそ14キロのコースの中には、ユノディエールと呼ばれるストレートな公道があるのをご存知の方も多いと思いますが、その脇の森の中に18ホールのゴルフ場があることはあまり知られていません。
丸1日オフになるレース前日の金曜日、腕に覚えのあるレース関係者はこのゴルフ場に集まります。ル・マン24時間レースの主催団体であるACO(Automobile Club de l’Ouest)がここでプレジデントカップというゴルフ競技を毎年開催するのです。
フランス国内の各クラブから18人のプロを呼び、3人のアマチュアと組んでショットガン方式で戦うチーム戦。ラインハルト・ヨースト(ドライバーでドイツのレーシングチーム、ヨースト・レーシングの設立者)と長年の親友であったことから、私も出場するようになりました。
上段=ル・マン・ゴルフクラブ(当時)のネームタグと、ACOの主催競技で2位に入った時のトロフィ。
下=ル・マン市内にある24時間レースのオブジェ。
プレジデントカップの出場者には、レーシングドライバーのジャン=ルイ・リッチ氏もいました。ファッションブランド、ニナ・リッチの設立者ロバート・リッチ氏のご子息で、根っからのゴルフ好き。ハンディ2の腕前を誇っていました。
彼の発案で始まった、24時間レースならぬ24時間ゴルフという競技があり、今も恒例のイベントとして行われています。その名のとおり24時間ゴルフをし続けるという過酷なコンペで、6人1組で参加し、ラウンドするのは4人。そのあいだに2人が交代で仮眠をとるシステムです。 コース内はナイターゴルフ用の照明設備が一応整ってはいるものの、隅々までは照らしてはくれませんから参加者は各々、大きな懐中電灯を持ってラウンドします。現在のコース名、Le golf des 24 heures(24時間ゴルフ)はこの大会にちなんでつけられました。
ジャン・ルイ・リッチ氏はそれは魅力的な人でした。2001年、病に倒れ、若くして天に召されてしまったことは残念でなりません。
その年、ゴルフ場の所属プロから「彼を偲んで、何か作品を描いてくれませんか?」との依頼があり、描き上げたのが『ジャンルイリッチに捧げる24時間レース及び24時間ゴルフ』という作品です。この絵は今もゴルフ場にあり、版画はジャン=ルイ・リッチ氏のご子息が所有しています。
『ある日の24時間レース』(1996年)。この絵もLe golf des 24 heuresが所有しています。
軽井沢の住人
行きつけのコース、晴山ゴルフ場。天気のいい日など、ふらりと出かけられるのは大きな魅力。
1997年に軽井沢に移り住んでからはゴルフをする機会が増えました。普段よく行くのが晴山ゴルフ場。ここには様々な友の会があり、私の入会しているプログラムは年会費を払うと9ホール1000円ほどでプレーが可能です(※2021年度の内容は未定)。1人でも2人でも、気が向いたときに行ける手軽さでつい足が向き、年間何ラウンドしているのか、数えたこともありません。
こちらのゴルフ場は11月下旬から4月の初め頃まで冬季クローズをしていますから、どうしてもゴルフをしたい時は山を越えて群馬県まで足を延ばします。
国道18号線の、バイパスではないほうの碓氷峠には184ものカーブがあり、それぞれに番号を振った標識が立てられているのですが、最後から4つめのカーブの脇を入ったところになかなか面白いゴルフ場があるのです。
以前はサンランドゴルフクラブ 東軽井沢コースといったそのゴルフ場は今、ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブという名前で、真冬でも年中無休で営業しています。変化に飛んだレイアウトで、一筋縄ではいかない面白さのある山あいのコース。春になるまで、まだしばらくは峠を越えてゴルフをしに行く日が続きます。
上=オリジナルキャラクター『Myosotis』(ミオゾティス)のヘッドカバーと、アトリエの庭にこしらえた練習場。
下=碓氷峠入口の山あいに広がるヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ。運転に慣れた人なら南軽井沢から片道25分ほどで行くことができます。
軽井沢 鈴木氏おすすめの5軒
- カフェ・ラファエル
- 軽井沢駅から旧軽井沢に向かう途中の六本辻にあるカフェ(旧店名=ル・シエル)。アンティーク家具や調度品がさりげなく置かれた店内は居心地抜群。つい長居してしまいます。
- Tartagnan(タルタニアン)
- 前菜からデザートまで揃うフランス食品のブティック。2019年にオープンしたばかりですがすっかり人気店に。シュークリーム「ラトリエシューペタンク」は手土産におすすめ。
- マイカシミヤ
- こちらも2019年オープン。上質なカシミヤを使ったファッションやインテリア雑貨などが揃っています(写真は私達夫婦がモデルを務めた時のもの)。オリジナルのテディベアも人気です。
- オーベルジュ・ド・プリマヴェーラ
- カジュアルな雰囲気で正統派のフレンチを楽しめる滞在型レストラン。冬の楽しみは鹿や猪などのジビエ料理。全国各地から食材を厳選しています。軽井沢駅から徒歩7分。
- 旧軽井沢 ホテル音羽ノ森
- 重要文化財の旧三笠ホテルをモチーフに1982年開業。クラシカルで落ち着きのある館内はいつ行っても快適。レストランでは信州産の食材を使用した“音羽キュイジーヌ”を味わえます。
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- Old Course Golf Cannes-Mandelieu
カンヌマンデリュー・オールドコース -
18H 5577M P71
開場/1891年 設計/ハリー・コルト
4000本の松に包まれたシーサイドリンクス。18番フェアウェイを間近に望むテラスでの食事も人気が高い。ニース・コート・ダジュール空港から約30分。
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Evian Resort Golf Club
エビアンリゾート・ゴルフクラブ -
18H 6693Y P72(チャンピオンズコース)
開場/1904年 設計/ウィリー・パークJr. カベル・B・ロビンソン
エビアンリゾート内にあるチャンピオンズコースとレイクコースの全36ホール。例年7月にチャンピオンズコースでLPGA競技のエビアン選手権を開催。
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Comité Régional de Tourisme Provence-Alpes-Côte d’Azur
プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域観光局 - 南フランス・地中海沿岸の情報はこちらから。
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Nice Côte d’Azur Metropolitan Convention and Visitors Bureau
ニース観光・会議局 - ニース観光局の日本語サイトはこちら。
- Office de Tourisme Eze
エズ村観光局 - ニースの“鷹ノ巣村”エズの情報はこちら。
- 晴山ゴルフ場
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18H 5365Y P70
開場/1961年 設計/プリンスホテル
軽井沢駅の目の前にあるフラットなコース。ラウンドはオールセルフ、手引きカート使用のカジュアルスタイル。今シーズンは4月10日営業開始予定。
- ヴィレッジ東軽井沢ゴルフクラブ
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18H 6403Y P72
開場/1978年 設計/浅見緑蔵
霧積川に沿って18ホールが展開。妙義山などの山々が自然の防壁となっているため風や雪の影響を受けにくく、通年ラウンドが可能。敷地内に湧出する温泉も魅力。
- 軽井沢観光協会
- 軽井沢の観光情報はこちらから。
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