アスリート(？)ゴルフの楽しみ/ ゴルフと旅人達。vol. 046

旅するひと = いしのようこ

1968年兵庫県出身。女優。小学生～中学生時代はフィギュアスケート選手として活躍。17歳で TBS『セーラー服通り』で主役デビュー後、女優・タレントとしてバラエティやドラマ、映画、舞台など幅広く出演。主な作品はドラマ『おちょやん』（NHK）、『ハイポジ』（BSテレビ東京）、『家族の旅路』（東海テレビ）、映画『怪談新耳袋・異形』、『Heart Beat』、舞台『トリッパー遊園地』、『黒いハンカチーフ』、『志村魂』など。ゴルフ歴22年、ベストスコア84。

スコアがどんなに悪くても…

山梨県のメイプルポイントゴルフクラブ。紅葉の時季は特に美しく、ぞれぞれのホールで表情の異なる景観が目を楽しませてくれます。

いつもゴルフに行く仲間は全員がアスリートゴルファー。しかも男性です。どんなにナイスショットしても最初にセカンドを打つのはほぼまちがいなく私なので、ティショットを打ったらとにかくスプーンを握りしめてセカンド地点に走る、そんなゴルフをしています。
白ティからまわれるようになったのも、彼らの「特別扱いはしないからね」という厳しさがあったからこそですし、コースのルート取りのことやボールのライによって判断しなければいけないことなど、たくさんのことを教わってきました。

その甲斐あってか、最初の頃はみんなの予想を上回るスピードでベストスコアを更新し、半年で100を切ることができました。それ以降はほとんど成長が見られませんが、ドライバーがあまり曲がらないのは体幹がしっかりしているからだと褒められたこともありました。かつてフィギュアスケートをやっていた経験が少し役立っているのかもしれません。

以前はやみくもにドライバーを振り回していましたが、最近は短いクラブでスコアをまとめる面白さがわかってきたように思います。レギュラーティから毎回パーオンするのは現実的に難しく、どうしても3打目勝負になります。無理して2オン狙いをして池やバンカーに入れるよりも、私は3オン2パットでいいんだと考えられるようになりました。

右上はトーナメントのプロアマ戦に出場した時のもの。仲間からは「人前に立つ仕事なんだから、いつ見られても恥ずかしくないスウィングを」と言われています。コース写真はメイプルポイントゴルフクラブ。四季折々の美しい景観が広がります。

ゴルフ場は手ごたえがあるコースと楽しめるコース、メリハリをつけて選ぶことが多く、タフなコースでは山梨のメイプルポイントが印象に残っています。バンカーやマウンドが入り組んでとにかく難しく、「何てところだ！」と思うのですが（笑）、美しい景色を見るとそれも許せてしまうんです。
とくに紅葉シーズンは、思わずうわーっと声を上げてしまうほど。コースの造形美と相まって、その美しさはひときわです。

私達の仲間のあいだにはちょっとしたオキテがあって、男性陣は90以上、私は100以上叩いたら100円、ダボやトリはさらに100円のゴルフ貯金をすることになっています。貯まったお金で年末にみんなで焼き肉を食べに行くのですが、おかげで今日は調子が悪いなという日でも、ラウンドの途中で投げ出すことがなくなりました。
調子が悪ければ悪いなりにスコアをまとめることを考えるようになって、崩れそうになった時もズルズル引きずらず、次のショットに集中してがんばろうと考えられるようになる。楽しくて、けっこう役に立つオキテだと思います。

ハワイの思い出

撮影現場近くのホテルに滞在したり、地方公演に出かけたりと若い頃から家を空けることが多かったので休みの日くらいは家で過ごしたいと、プライベートの旅行はほとんどしたことがありませんでした。
そんな私がかつて全力でプランを練った旅がありました。父と一緒のゴルフ旅行です。ゴルフが大好きでシングルプレーヤーだったこともある父は腰を痛めて長く歩くのが困難になっていました。
それでも「またいつかコースに出たいなあ」と言っていたのを聞いて一念発起、ゴルフに誘うことにしたのです。

周囲の詳しい方達のアドバイスを受け、乗用カートのフェアウェイ乗り入れができるコースを選ぶことにしたのですが、20年ほど前のことですから日本ではなかなか見つかりません。いろいろと調べ、吟味を重ねた結果、行き先はハワイのオアフ島に決めました。気候がよく、市街地の近くにゴルフ場があり、食事の心配がなく、日本語が通じるのに“外国感”も味わえます。
「あまり歩かずに済むからできるんじゃない？」という誘いに父はうれしそうに応じてくれました。

ゴルフ、食事、観光と父娘でハワイを満喫。右下はタンタラスの丘から見た街並み。以前から一緒に行きたいと思っていた場所で、実現することができました。

当日、久々のラウンドを父はとても楽しんでいるようでした。「いきなりドライバーを振るのはちょっと怖いな」と、アイアンを駆使してのプレーでしたが、それでも上がってみれば90台。何年もクラブを握っていなかったのに、これには私もびっくりしました。

「もう二度とできないと思っていたのに、こんなに気持ちいいところでまたゴルフができた」。いつか私をゴルフに連れて行きたいと、父もずっと考えていたそうです。
18ホールを一緒にまわり、きれいな景色を見て、ディナーショーまで楽しんで、ハワイでしか経験できないことをフルコースで味わった旅。これが最初で最後の父とのラウンドになりましたが、大切な思い出としてずっと心に残っています。

犬のお出迎えと難コース

ブリック＆ウッドクラブの看板犬。彼の接客に心が和みます。

普段は近場のゴルフ場に行くことが多く、千葉方面にたびたび出かけます。なかでも気に入っているのが市原にあるブリック＆ウッドクラブ。ここもとても美しくて難しいコースです。フェアウェイの起伏やハザードが複雑でブラインドホールもあり、飛ばせばどうにかなるというタイプではありません。

コロナ禍で状況が変わっているかもしれませんが、以前は人懐こい2頭の看板犬がいつも出迎えてくれました。私のことを覚えていてくれるのか、スタートホールに向かう時間になると付いてきて、カートにちょこんと乗ってきます。コースではおとなしく私達のプレーを見守って、2番をホールアウトする頃にそっと帰っていくんです。

千葉方面のゴルフは帰り道も楽しみで、道の駅や直売所で買い物をして帰ります。今頃は梨がおいしいはずですし、冬になったらイチゴがシーズンを迎えます。品種によって常にあるとは限りませんが、見つけると買い込んで、待ちきれずに車内で食べ始めてしまうのがいつものパターン。なかでも気に入っているのがピーチベリーという桃の香りがするイチゴで、これは本当においしくておすすめです。

ブリック＆ウッドクラブ。スコットランド生まれのミュアヘッドが設計したコースはありのままの自然を取り込んだデザインで手ごたえ十分。施設もナチュラルな雰囲気で居心地がよく、これも魅力のひとつになっています。左下は名物看板犬だったコジローくん。

いつかは本場のリンクスで

2018年の全英オープン開催コース、スコットランドのカーヌスティ・ゴルフリンクス。世界で最も難しいといわれています。

実は子供のころから球技は大の苦手でした。テニスにしてもバレーボールにしても目の前に戦う相手がいて、その相手のスキを突かなければならないのがどうしても好きになれなかったんです。でもゴルフは違いました。自分と向き合い、自問自答を繰り返しながら鍛錬を重ねる。フィギュアスケートと共通する部分も多いような気がします。

それと仕事柄でしょうか、それまでどんなにドキドキしていても、本番の声がかかるとスッとそれが消えて世界に入り込むことができる習性があって、これもゴルフに向いているのかもしれません。周りの方たちの視線も始まってしまえば感じなくなりますし、自分のペースで気持ちを切り替えられるのは、ゴルフにもちょっと役立っているかなと思います。

右は旅番組のロケで城崎温泉に行った際のオフショット。ゴルフ以外の遠出の多くは仕事がらみです。

どこかに出かけていく楽しさもゴルフは教えてくれました。いつの日か実現したいのは、スコットランドのリンクスをまわること。果たしていくつ叩くことになるかわかりませんが、いつもテレビ中継で観ているようなあのすごいバンカーや風を実際に見て、体験してみたいんです。トッププロの皆さんがどれほどの高度な技術を駆使しているのかもわかるはず。その日に向けてアスリートゴルファー達とのタフなラウンドを続けていきたいと思っています。

君津～木更津のおいしいもの

豊かな水に恵まれた千葉県君津市。写真はSNSでも話題の絶景スポット『清水渓流広場』。

小糸在来®（こいとざいらい）

幻の大豆。小糸川流域で育てられてきた在来種で、甘味が強く、ほのかな香りが特徴。10 月中旬に枝豆、11 月下旬から 12 月上旬にかけて大豆として収穫される。
清和の自然薯（せいわのじねんじょ）

君津市清和地区で栽培されている自然薯は風味、香り、粘りが強く、日本最高峰との呼び声も高い。10 月下旬から 12 月中旬にかけて出荷の最盛期を迎える。
藤平酒造『福祝』

享保元年（1716年）創業。年間総生産約三百石の小さな造り酒屋が地元・久留里の名水で丁寧に仕込む日本酒。直売所と全国の特約販売店のみで販売されている。
光永（みつなが）ファーム直売所

名水とこだわりの餌で育った健康な鶏の生みたて卵『永光卵（えいこうらん）』などを販売している卵の直売所。売り切れることが多いので予約がおすすめ。
岩崎物産　あさりの佃煮

昔ながらのアサリの佃煮をはじめ、ワカサギやイワシなど数十種類の佃煮を販売。漁師から直接仕入れた新鮮なノリやアサリの干し貝なども扱っている。
図那いちご園

木更津にある観光いちご園。直売所には『ふさの香（ピーチベリー）』や『真紅の美鈴』（写真）などの希少種が並ぶことも。営業は例年12月下旬～5月中旬。