「ドゥスポーツ」であるゴルフを「観るスポーツ」にもしてしまったのがこの人、パーマーである。普通のゴルファーにはできないミラクルを次々と起こしてくれるのだから人気が出るのは当たり前だ。
ドライバーはとにかく渾身の力を込めて打つ。だから凄く飛ぶが、曲がりも半端じゃない。ダッグフックで林にぶち込むこともしばしば。しかし、パーマーはちっともめげない。かえって闘志をむき出しにして、前方の小さな穴を目がけて、グリーンにミラクルオン。ギャラリーはやんやの喝采である。
ボールがフェアウェイにあるときは、当然、ピンしか目がけない。ピンをデッドに狙ってバーディラッシュだ。パットだってショートなんかしたことがない。どこからでも「一発」を狙うのだ。
危険を顧みぬ勇敢な冒険者。アメリカ人が最も好きなインディ・ジョーンズがコースに出現しているのだからたまらない。
「ヒット・イット・ハード」
パーマーがプロである父から習ったレッスンはその一言だったという。「思い切り叩け!」。攻撃こそ最大の防御。ドライバーで曲げたって、まだまだパーは取れるし、勝てる。トラブルショットこそ、プロの醍醐味とばかりに果敢に挑んで成功させたのだ。
マスターズに4勝し、USオープンにも全英オープンにも勝ってしまう。まさに’60年代のヒーローだった。
ドライバーが曲がらないチタンになって、しかもフェアウェイキープ率を重んじるプロばかりになった昨今。ああ、パーマーが懐かしい。