
『ジ・アート・オブ・ゴルフ』は世界最古の本格ゴルフ書と言われる。この本が上梓されたのは、世界最古のトーナメントである全英オープンが始まった17年後、1887年のことだ。執筆者はサー・ウォルター・グリンドレー・シンプソン。貴族であり、ゴルファーであり、詩人であった。詩人だからこそ、シンプソンはいつでもゴルフに浪漫を求めてしまう。
「素晴らしいロングドライブ、ピンに絡まるアイアンショット、次々に沈むロングパット。夢の中で私は英雄になってしまうのだ。」
しかし、現実にはそんなことは滅多に起きない。空想は夢想に終わってしまう。シンプソンは言う。

「ゴルフにおいては頭も心も空っぽな人間ほど、良いプレーヤーになれるものだ。そう、難しい局面に陥っても勝利が手中に入りかけても、無頓着である人間である。阿呆であり、馬鹿である人間。そうでなければ、想像力が鈍く、心の貧しい者。そうした人間がゴルフに向いているのだ。」
そして次のように言う。
「ゴルフにとって、詩人的資質は最悪である。」
とはいえ、心ある夢見る人間はどうすれば良いのか。シンプソンは「ゴルフには唯一絶対の命令がある」と断言する。
一体全体、何であろうか?「それは『ボールを打て!』という命令だ」 何も考えず、何も思わない。するべきことは目の前にあるボールを打つことだけなのだ。