パットをショートしたときに必ず言われる台詞。
「ネバーアップ、ネバーイン」。
「届かなければ入らない」は、確かにその通りの名言だが、誰が言った言葉かを知っている人は少ないだろう。
実は1860年代に全英オープンを4度も制したオールド・トムことトム・モリス・シニアが、150年も前に発した言葉と言われる。
オールド・トムは1821年に生まれ、プロゴルファーとしてはマッチプレーの鬼と呼ばれ、75歳になっても全英オープンに出場したスーパー翁。
コース管理者としては水道管をホールに埋めてカップにしてしまった人で、これによってホールの直径が108mmに決まったのである。
コース設計家としてはミュアフィールドの原型を作った人として知られている。
そんな伝説の翁の「ネバーアップ、ネバーイン」であるが、これは無闇に強く打てということとは異なる。
ボールはしっかりとヒットしてこそ、きちんとした良い転がりを見せる。
弱気になって流すように打っては傾斜や芝目の影響を強く受けてしまうからだ。
必ず入ると自分を信じ、少しオーバーするくらいの力加減でヒットすることだ。
オールド・トムの息子であるヤング・トムことトム・モリス・ジュニアは4年連続で全英オープンに優勝したが、パワフルなショットを放つとともにパットの名手でもあった。
「アドレスに入るときの鬼気迫る雰囲気。特にパットのときの注意深さは息子に優る者はいない」と父は語る。
父の教え通り、カップに届かないパットは決してしなかったに違いない。