英国の上流階級出身のプロとして、全英オープンに3度の優勝を成し遂げたヘンリー・コットン。11年もの長きにわたってアメリカに優勝カップを奪われ続けた汚名を返上した英国の英雄でもある。
コットンはゴルフの理論家としても知られ、数多くのレッスン書を残しているが、その中に「ゴルフは左手のゲームでもなければ、右手のゲームでもなく、均衡の取れた左右両手のツーハンデッドゲームなのだ」という言葉を残している。
それは古くから、ゴルフスイングは左手主体でリードするほうが上手く打てるという教えがまかり通っていたからに他ならない。コットンはその偏重を戒めるためにそう言ったのであるが、本人はアマチュアからプロに転向したあと、左手の強化に努め、左手1本でボールを打つ練習を1日2時間も課したと言われている。
こうしてコットンは左手だけで4番アイアンを振り、150ヤードを正確に打つことができるようになったという。このことから、彼の言葉の真意は、強い右手に対抗する強い左手を作れというものであったのだ。
左手が右手と同じ強さになってこそ、左右両手を使ったバランスの良いスイングができるようになるということだったのである。
その後、コットンは古タイヤをクラブで叩くという練習法を編み出しているが、このときは右手、左手、両手打ちと、様々な打ち方を練習して、手首を強化するとともに、スイングのバランスをさらに鍛えたという。