ヘンリー・ピカードは1938年の第4回マスターズに優勝しただけなく、’39年の全米プロをも制したことで名を馳せたが、それだけでなく、サム・スニードとベン・ホーガンにアドバイスを送り、偉大なプレーヤーとなるスイングの基礎作りをさせたことで有名である。特にホーガンは自分の著書『パワーゴルフ』を「ピカードに捧げる」と献辞している。
ピカードのスイングは当時最も美しいと讃えられ、そのスイングによってメジャーにも勝て、ツアー通算26勝も挙げることができたわけだが、それはアレックス・モリソンというインストラクターとともに作り上げたものだった。
正しい軌道のスイングプレーン上でクラブを振り、足首を回転するフットワークを身につけることが、彼らのスイング理論であった。細身ながらドライバーの飛距離は全米プロを争ったバイロン・ネルソンにも負けておらず、特にロングアイアンの切れ味が最高だった。
その得意なアイアンで、使う番手に迷うということは、もちろんピカードにもあったわけだが、彼はそんなとき、必ず大きいほうの番手を選んだ。その理由は「小さめの番手で距離を届かせようと力一杯振ると、スイングが乱れ、ミスショットになりやすい。大きめの番手ならゆったりとスムーズに振れるのでスイングが良くなり、ショットも良くなるからだ」と語っている。だからこそ、いつも素晴らしいスイングができたのだ。
小さな番手を持つことを「アンダーグラビング」、大きな番手を持つことを「オーバーグラビング」というが、ピカードは「オーバーグラビング」で一流プレーヤーとなったのだ。
周囲の人よりも小さな番手で打とうとする見栄っ張りがゴルファーには多いが、大事なのはスムーズでバランスの良いスイングをすることである。