20世紀初頭に大活躍したゴルファーといえば、ボビー・ジョーンズとウォルター・へーゲン。生涯アマチュアを通したジョーンズは正確なショットで常にパーオン2パットのパー。一方、プロのへーゲンはティショットを曲げるものの、素晴らしいリカバリーショットを放ってパーを奪う。
この2人が対照的なゴルフで競り合うからゴルフファンはたまらない。ファッションもジョーンズはプレッピーの正統派、一方、へーゲンは派手な出で立ちだから、人気は二分するわけで、そこに目をつけたイベンターが2人のそれぞれのホームコースでエキジビジョンマッチを行った。
名勝負が繰り広げられるだろうと誰もが思ったが、勝ったのはへーゲン。それも1戦目は8アップ、2戦目は12アップというへーゲンの圧勝だった。その勝因は何と言ってもアプローチとパット。
ティショットを大きく曲げるへーゲン。誰もがそのホールはジョーンズのものと思うと、へーゲンは信じられないルートでグリーンに乗せ、長いパットを先にぶち込んでバーディを奪ってしまう。ジョーンズはそれに気圧されて、2パットのパー。綺麗なゴルフをしているのに、勝負はへーゲンのものとなる。仮にへーゲンのセカンドショットがグリーンに乗らなくても、アプローチとパットでパーを奪う。その勝負強さにジョーンズはボディブローを食らったボクサーのように気力が萎えてしまうのだ。
へーゲンは言ったものだ。
「3打で乗せても、1パットならパー。2パットのパーと変わらない。パーはパーだ」
まさにそれが勝負強いゴルフというものであり、へーゲンはマッチプレーにすこぶる強かった。マッチプレーならショットメーカーよりパットの名手が確実に強いのは今も昔も変わらない。