
マスターズに3度優勝。カラフルなウェアに身を包み、バリトンの美声で女性にも人気のあったジミー・ディマレット。
ゴルフだけでなく、ナイトクラブで歌手としても活躍し、「ルーシー・ショー」にも出演していたほど。単なるプロゴルファーではなく、エンターテイナーだった。
1910年にテキサス州ヒューストンに生まれ、22歳でプロとなり、’35年からPGAツアーに出場。風の強いヒューストン育ちだけに風の日はとても強く、低いパワーフェードを使って上手くコースを攻めることができた。

’40年のマスターズに優勝し、’47年に2勝目を挙げ、’50年にも勝ってしまう。派手なディマレットに「ゴルフの祭典」は似合っていたのだ。’47年には賞金王とバードントロフィーも獲得し、真に世界一のプレーヤーとなった。
これほどの実力がありながら、全米オープンは’48年の2位が最高で、全米プロは3位タイが4回と縁がなかった。
スイング論はしっかりしていて、ベン・ホーガンも一目置く存在だった。ジーン・サラゼンとの共書に『ユア・ロング・ゲーム』があり、この中で「ヒントで得た当たりは長続きしない」と語っている。
確かに、我々普通のアマチュアでも、本で読んだヒントや友人やレッスンプロからの一言で、突然いい当たりが出ることがある。「開眼したぞ!」と大いに喜ぶが、そのうちにそのいい当たりは消えてしまう。それはプロでも同じで、その理由をディマレットが言う。
「そのヒントがオーバードウになるからだ」
つまりはいい当たりが出たそのヒントにこだわり、やり過ぎになるというのだ。まったくその通りで、良いドローがダッグフックとなり、良いフェードが大スライスになる。つかんだヒントはやり過ぎずに、守ること。いい気になるなということなのだ。