
「練習の虫」という言葉があるが、これはゴルフにおいてはベン・ホーガンがその元祖と言ってもいい。手の平が血で染まるほど練習ボールを打ったと言われるが、その頃のプロたちはゴルフレンジはラウンド前のウォームアップだけで、プレー後はさっさとシャワーを浴びていた。なので、ゴルフレンジが練習するところだという認識は持っていなかった。
それを変えたのはベン・ホーガンである。彼はプレーする前だけでなく、その後も練習する。それも日が暮れるまで打ち続けるのだから、周りのプロたちは驚いた。試合の後は酒を飲むかポーカーをするのがプロの生活だったからだ。
「そこまでして勝ちたいのか」
「つきあいの悪いやつだ」
そうした思いからホーガンを変人扱いしていた。しかし、ホーガンは猛練習を積んでいたから恐ろしく強かった。1949年には年間10勝を挙げ、敵なしの強さを誇った。ホーガンは言う。
「人間のスイングは不純物に汚されている。なので、たくさんボールを打って洗練しなくてはいけない」

ホーガンは自分を浄化できると思うと練習するのが楽しかった。
「私は練習がとても好きだった。最高の楽しみだった。試合で勝つことやその他のことよりもずっと楽しかった。ボールを2、3日打たなかったことなど数えるほどしかない。3日休めば、元に戻すのに1カ月から3カ月もかかる気がした。だから毎日練習したんだ」
精魂込めて練習するうち、ホーガンはクラブのどこにボールが当たっているかが詳細にわかった。そこでこんなことまで言っている。
「私は常にフェースの3つ目の溝で打つように心がけているんだ」
我々アマチュアにおいてはもちろん不可能なことだろうが、そうした気持ちで練習すれば、少しはベン・ホーガンのスピリットに触れられるかもしれない。