
「この人のスイングっていいなあ」と思わせられるのがアーニー・エルス。ゆったりと振って、大きく飛ばす。できそうでいてできず、アマチュアには何とももどかしいのだが、エルスは自分のスイングを「イージー&エフォートレス」と言っている。「楽で、努力を要しない」スイングなのだ。
エルスが考えるスイングのテンポは話すテンポと同じで、早口の人は「ワン、ツー」、ゆっくり話す人は「ワン、ツー、スリー」だと言う。ご本人はゆっくり話す人だから、きっと「ワン、ツー、スリー」で振っているに違いない。アベレージゴルファーは打ち急ぎでミスを犯すから、「ワン、ツー、スリー」のテンポで振ったほうが良いかもしれない。

そして、このゆったりリズムでバックスイングをしていき、エルスは「トップでは背中を目標に向ける」と言う。普通なら「十分にバックススイングする」くらいの言い方になるが、エルスは敢えて「背中を目標に向ける」と徹底した体の捻転を行っている。これは肩を回すことはもちろん、腰も尻も回さないとできない。エルスはトップでまさにそうしているし、だからこそ、へそは飛球先行方を向いている。また、このために、エルスはほんの少しだけヒールアップするが、体の硬くなったシニアにはヒールアップは必然だろう。
トップからのダウンスイングでは「左肩をあごから離す」と言っている。この一瞬の動きで、いきなり手から下ろしてしまうコックの早い解きを防ぎ、コックをためたレイトヒッティングを可能にする。とはいえ、それができるのも「トップでは背中を目標に向ける」ができているからこそだ。
ゆったりと楽に頑張らず、とはいえ、十二分にバックスイングして、そこから慌てて手を下ろさずに、ヘッドを走らせる。それが飛ばしの秘訣なのだろう。