
いつもパイプをくわえてスイングをしていたバードン。スコットランドの小さな島に生まれた彼はスコッチも好きでプレー中にもよく飲んでいたという。
180cm以上もある大男で、ドライバーの飛距離はもの凄いものがあった。しかもショットは常に正確で、トミー・アーマーが「バードンの問題は1日36ホールをプレーするとき、午前中に彼が打ったセカンドショットのディボットに、午後に彼が打つティシットのボールが入ってしまうことだよ」と言ったくらいである。
バードンのショットが正確になったのは、彼が始めたバードングリップによる。このグリップは、バードンが子供の頃、薔薇の木で作ったクラブのシャフトにトゲが飛び出ていて、それを避けて握ったためにできたものだという。

プロになってからはちゃんとしたクラブを使うのだから、他のプロたちと同じテンフィンガーで握っていたのだが、ある頃からひどいフックが止まらなくなった。そのときに、子供の頃にやった右手の小指を左手の人差し指の上に乗せたグリップを思い出したのだ。このグリップによって右手が弱まり、フックが収まって思うように打てるようになったのである。
そんなバードンのプレースタイルは常に風に逆らわないゴルフ。風が左から吹いていれば、風に流されたスライスでフェアウェイやグリーンをとらえていたという。パワーがあるのに決してフックを打って風と喧嘩させるという方法はとらなかった。
「風とは友達になるのが一番」と力まずに自然にまかせたゴルフをしていたのだ。だからこそ、風の強い全英オープンに6度もの優勝を成し遂げることができたのである。
まるで「水が流れる如く人生を送りなさい」と諭した老子のようである。