
ラウンド中、ずっとジョーク連発のリー・トレビノは、お喋りし過ぎてうるさいのだが、あまりに話が面白いため、知らず知らずのうちに聞いてしまい、すっかり彼のペースに引き込まれてしまう。
かの大真面目なジャック・ニクラウスでさえ、陽気なトレビノのジョークに巻き込まれて、2度も全米オープンのタイトルをさらわれているのだ。
1971年の全米オープンは、試合が始まる1番のティグラウンドでトレビノがキャディバッグの中をゴソゴソやったと思ったら、ガラガラヘビをニクラウスの前に放り投げたのである。
「ギャア!」とニクラウスが叫んだかは知らないが、それはオモチャのヘビだった。というわけでギャラリーもニクラウスも大笑い。

かくして、トレビノのペースで試合は運ばれ、2度目の優勝を成し遂げたのだ。この年のトレビノは全英オープンにも優勝している。
そんなわけでトレビノは「フェアウェイの道化師」というニックネームもあるが、ショットのほうはまったくおちゃらけてはいない。独特のフェード打法で正確なドライビングショットを放つ。子どもの頃から賭けゴルフで稼いでいただけに、勝負強さも並大抵のものじゃない。アプローチなどの小技も素晴らしかった。
そんなトレビノが残した名言といえば「ゴルフにはいくら頑張ろうが長続きしないものがある。車の後を追う犬と、パーを狙ってアプローチするゴルファーだ」というもの。パーを狙えばミスしてボギーになるというわけだ。ならばトレビノはどうしたのか?
「寄せないで、相手を油断させ、パットをぶち込んでパーをとる。そのほうがショックを与えられるだろうって」
さすがにギャンブラー、トレビノである。