2021.12.15

[vol. 04]

沖縄ローカルのゴルフスタイル ②
宮古島と秘密のプライベートコース


1年の半分を沖縄で暮らすオノフのブランドプロデューサー、大江旅人さん。今回は離島のゴルフと本島の隠れ家コースのお話をうかがいます。(聞き手/オノフ担当 朝岡郁雄)

――今回はさらにディープな沖縄暮らしのお話を。

離島のゴルフから話しましょうか。僕は本島よりもむしろ宮古島のほうが好きで、以前はそれこそ年中通っていました。海の水が本島よりもはるかにきれいなのでダイビングするなら断然、宮古ですし、ゴルフ場もいいコースがいくつもあります。

ただ、このところはちょっと足が遠のいているんです。2015年に伊良部大橋が開通して以来、島の雰囲気が変わってしまってね。宮古島周辺の下地島(しもじじま)、伊良部島(いらぶじま)、池間島(いけまじま)、来間島(くりまじま)の4つの離島が宮古島と橋で繋がって気軽に旅行できるようになり、観光客が急増したんです。

――伊良部大橋は宮古島と伊良部島を結ぶ日本で一番長い無料の橋。あのきれいな海の上を走れるんですから人気が高いのもうなずけます。

19年には宮古列島で2つめとなる下地島空港もできました。もとはジャンボジェットのタッチアンドゴー(離着陸)のために造られたパイロット訓練専用の小さな空港で、しばらくの間、廃港になっていたのを再開発したんです。 すでに羽田や神戸などから直行便が飛んでいますし、コロナが落ち着いた暁には国際線やアジアの富裕層の人達のプライベートジェット空港としても活用されるようです。ますます賑やかになるでしょうね。

ゴルフ場も以前は予約なしでまわれたのですが、昨今はそれも難しくなりました。でも、影響をまだそれほど受けていないコースもなかにはあるんです。いちばんのおすすめは、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、サシバリンクス伊良部というゴルフ場です。

――手引きカートでまわる9ホールですね。

ここはいいですよ。伊良部島と下地島とを隔てる入り江に面して造られたパブリックコースで、以前、オノフの撮影も行いました。オーシャンリンクスやエメラルドコーストといったメジャーなゴルフ場ほどの人気はないので、ここならまだゆっくりまわれます(笑)。

コースはもともとの地形と湿原、池などをうまく取り込んでいて、昔の大津波で打ち上げられた岩をハザードにしたパー3や島の名所で天然記念物の『通り池』をモチーフにした池越えのパー3、バックティから600ヤード超のパー5などもあって、とても面白く造られていると思います。

沖縄本島は確かに島ですが、アイランドゴルフを感じさせるコースはそれほど多くないんです。その点、サシバは正真正銘のアイランドリンクス。リンクスとは、基本的に砂地に造られたコースを指しますから、その点でもここは数少ない“正統派”なんです。

――本島のゴルフと宮古島のゴルフ、違いはありますか?

風ですね。沖縄のコースはどこも風がつきもので吹かない日はないくらいですが、なかでも宮古は別格です。昔、『風と遊ぶ』というキャッチコピーを作ったことがあり、宮古のゴルフはまさにそれ。風と仲良くできないとゴルフになりません。地元のゴルフ好きは週に3日も4日もコースに通い、実に上手く風と遊んでいますよ。

――隠れ家的なコースは見つける楽しみがありますね。

沖縄本島でもつい最近、ちょっと気になるゴルフ場を見つけました。ヤンバルクイナの保護研究をしている場所が本島の北のほうにあるのですが、そのひとつのクイナパークというエリアの横に9ホールのパークゴルフ場があったんです。

通りすがりにここは何だろう?と車で道なりに進んでいったら、ティとグリーンが突然出現して驚きました。小さなハウスの傍らにはサポートしている人たちの名前を記した手書きのボードが、まるで神社の寄進者のごとく並んでいて、ここがみんなから応援されているのがわかります。その中には沖縄出身のプロゴルファーと思しき名前もありました。

もうひとつ、沖縄本島北部・東海岸の東村(ひがしそん)でも聞いたことのない名前のゴルフ場を見つけました。
『はんたゴルフ倶楽部』という手書きの小さな看板を偶然見かけて入っていくと、手造りと思しきゴルフコースが広がっています。周囲に人の気配はなく、スタート小屋も締まっていましたが、その前のテーブルにスコアカード入れの缶が置かれていました(下の写真)。

これによると、はんたゴルフは全9ホール。一番長いホールで115ヤードとありました。スコアカードは1パーティに1枚という決まりになっているようで、鉛筆とマーカーは皆さんが持ち寄ったのでしょう。様々なゴルフ場の名前が入っています。 缶のフタには『なるべく返しましょう。くり返し使えます(エコ)』の文字が。さらに、小屋の壁には「ここに連絡してください」とオーナーの電話番号が書いてありました、マジックで(笑)。もう最高です。

――ゴルフ場を探しながら島を巡るのも面白そうですね。

沖縄にはこういうところがいくつもありますからね。足を踏み入れるのにちょっと勇気が必要な場合もありますが、今回見つけた2つのゴルフ場は、それは素敵なところでした。

――ゴルフを日常的に楽しんでいるのがわかったような気がします。

暮らしの中にゴルフがあると言っていいかもしれません。皆さんも沖縄に来たら、ぜひこの空気を味わっていただきたいですね。

Profile
大江旅人
おおえ・たびと/アートディレクター。音楽、映像、ファッションなどのブランディングやデザインを数多く手がけ、オノフのブランドプロデューサーを務めている。

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