2023.1.19

[vol. 09]

愛すべき9ホール④
埼玉県・花湯の森 ショートコース


今回は、寒い時季にもほっこりできる9ホールをご紹介したいと思います。
埼玉県深谷市に、2005年に開場した『花湯の森ショートコース』。全国的にも珍しい、ショートコースと日帰り温泉が一体となった施設です。
名前のとおり森の中でゴルフと温泉と食事をリーズナブルに楽しめる、隠れ家のようなところでした。

ここにはかつて30年以上にわたって別のショートコースが営業していました。閉鎖後3年のあいだ手つかずになっていたのをオーナーの伊藤良夫さんが買い取り全面改修、バージョンアップしたのが現在のコース&温泉施設です。
「広大で緑が豊かな環境を再生したいと思い立ちました」と伊藤さんはおっしゃいます。
「不便な奥地で温浴施設が成り立つか半信半疑でしたが、ゴルフ場だけでなく、森と花に囲まれた露天風呂がそこにあったらより快適と考えて」温泉の掘削も始めたそうです。

芝の張り替えや樹木の移植に時間を費やし、2005年に9ホールのコースが、2007年に純和風建築の温泉施設が完成。花園インターから10分、深谷駅からタクシーで15分の「不便な奥地」は「隠れ家温泉の風情」、「山深い秘湯のよう」と、オープン当初から大盛況だったそうです。

ショートコースは予約不要の到着順。スタートハウスには手引きカートも用意されていて、カップルやグループ、1人ラウンドの方達がバッグを積み込み次々にスタートしていきます。
樹齢を重ねた大木に囲まれたコースはほぼフラット。46ヤード~146ヤードと距離も短いので疲れ知らずのラウンドを楽しめます。

上の写真にあるように、ピンフラッグが自分の背丈よりもだいぶ低かったのは面白い経験でした。強風対策と思いましたがそうではなく、実は小さなグリーンとのバランスを考えてこの高さにしたそうです。

深谷は植木・造園産業が盛んな土地柄で、グリーンキーパーを務める内田康弘さんも造園のプロ。敷地内のヒマラヤスギやポプラの大木はどれも樹形が美しく整えられていて、景観に奥行きを与えています。
冬は風の影響で土壌が乾燥して締まっているため、コーライ2面のグリーンは特に速く、短いパットも気を抜けません。
内田キーパーは「今後はフラットなコースの要所要所にアンジュレーションをつけて、より楽しんでいただけるようにしたい」と考えているそうです。

場内は落ち着いた雰囲気が漂っていて、手入れの行き届いたコースを気分よく回ることができました。18ホールで2時間もかかりませんから、途中で食事を挟んだり館内でくつろいだりと自由に過ごせるのもここのいいところ。現在は残念ながらお休み中ですが、足湯でリフレッシュするのもよさそうです。

温泉や食事処がある純和風の建物は高い吹き抜けになっていて、古材の太い梁が幾重にも重なる贅沢な造り。樹齢150年のもみの木などの銘木もそこここに使われています。
長く伸びた廊下の傍らには庭園を望むフリースペースがあり、湯上りにひと息ついていると、どこか遠くの温泉地に来ているような気がしてきます。

支配人の天内千尋さんは料理長も兼任する和の料理人。昼はおすすめの『煮ぼうとう』をいただきました。深谷の偉人、渋沢栄一も好んだという地元の名物料理です。
たっぷりの具材と麺をしょうゆ仕立ての出汁で煮ながら食べる1人鍋スタイル。モチモチの麺と出汁との相性が抜群でした。

ショートコースのビジター料金は9ホール1800円~、温泉施設の入館料が大人1100円~。ランチでいただいた煮ぼうとうセットは、かやくご飯と甘味が付いて1100円といずれもリーズナブル。さらにエントランス付近では地元産の野菜や果物、鉢植えなどをかなり良心的な価格で販売していて土産の調達も可能です。

「スコアに関係なく仲間と楽しむことも、真剣に腕を磨くこともできるのがショートコースのいいところ。思い思いのスタイルで丸1日、のんびり過ごしていただけたらうれしいですね」と支配人の天内さん。
近場で旅気分を味わえる隠れ家のような9ホール。桜の季節もまたおすすめだそうです。

文/オノフ担当 朝岡郁雄

link information
花湯の森 ショートコース
http://golf.hanayunomori.jp/index.html

深谷花園温泉 花湯の森
http://spa.hanayunomori.jp/
広々とした露天風呂や岩盤浴など充実。ショートコースに隣接し、食事だけの利用も可能。

ホテル 花湯の森
http://hotel.hanayunomori.jp/index.html
朝食ビュッフェ、温泉利用券付き1泊5390円~。ショートコースから車で約10分。