2018.8.27

[vol. 003]

ハイランド地方、最果てのリンクスへ
スコットランド・ダーネス


旅するひと = 大澤 登

グローブライド株式会社でONOFFブランド立ち上げ当初からプロモーション・マーケティングを担当。

スコットランドのダーネスを旅したのは2016年9月のことだった。羽田→パリ→アムステルダム→インヴァネスと、乗り継ぎを重ねて辿り着くグレートブリテン島の北の端。ディレクター、デザイナー、カメラマンと私という最小限のチームでオノフのカタログ写真と動画の撮影を行なうのが今回の旅の目的である。

途中、アムステルダムで乗り継ぎに手間取り、予定していた便に乗れず、搭乗口に我々の荷物が置いてきぼり状態だったのを見たときは少しあせったが、時間潰しに入った空港のアムステルダム発祥のハイネケンのスタンドで飲んだビールがとびきり旨くて一気に気分が持ち直す。そんなアクシデントが旅の思い出になるのだから面白い。

ダーネスでの撮影はこれが2度目になる。2005年、オノフの世界観を表現するのにぴったりの場所とディレクターが捜し当てたのがスコットランドのハイランド地方。9ホールの小さなリンクス、ダーネス・ゴルフクラブだった。だが前回は別のルートで入り、イギリスを縦走し、いくつかのゴルフ場を訪れたので時間もなく、おまけに雨に祟られて周辺の景色はおろかクラブハウス周辺の3ホール以外はどこにも行けず仕舞い。正直なところ、もう二度と訪れることはないだろうと思っていた。ところが、オノフの誕生15周年となる2017年版のカタログは今一度、原点ともいうべき場所、ダーネスでということになった。

羽田を発って18時間。ようやく降り立ったインヴァネス空港はハイランド地方の玄関口を名乗ってはいるものの実にこぢんまりとしていた。周辺にこれといった建物はなく、パーキング横の植木で作られたゴルファーが、ハイランドのゴルフへ“ようこそ”と出迎えてくれていた。待ちぼうけを食わせてしまったイギリス人スタッフと落ち合いレンターカーで約4時間。前回と同じタンホテル(Tongue hotel)に到着。明日も早いので早々にベッドに入った。

翌日、夜も明けきらないうちにホテルを出発。ひとたび車を走らせればそこは絶景の宝庫。みたこともない雲や朝焼け。大草原の中を突っ切ったと思うと、今度は海が目の前に開けるといった具合で、ドローンでも使えばそのまま車のCMに使えるんじゃないかと思うほどの眺めが次から次へと現れる。大西洋を見下ろす断崖や、見渡す限りヘザーの赤紫色の花が咲く丘はもちろんのこと、ピート(泥炭)を掘り出した荒地も、そこを流れる小さなせせらぎでさえも絵になって、写真を撮りながらダーネスに向かう時間があっという間に過ぎていく。

ダーネス・ゴルフクラブは12年前とほとんど変わりなく、相変わらずのんびりとした雰囲気に包まれていた。ここは基本的に無人のゴルフ場で、ビジターはカウンターの料金箱にフィを納め、入場証がわりのタグを1枚もらってスタートする。

地元愛好家が集まって1988年に設立されたという実にローカルなクラブだが、96年に元ツアープレーヤーのピーター・アリスがゴルフ番組の収録に訪れたことは、今もメンバー達のちょっとしたご自慢だ。

断崖の上に作られた9ホールは立ち木が1本もなく、海風が豪快に吹き抜ける。

撮影の合間、ティグラウンド脇にあったはずの目土置き場がなくなっていることに気が付いた。聞けば風の強い日にどこかに飛ばされてしまったという。「あの木箱が!ジョークか?」とも思ったが、ダーネスならありえるなと思いつつ、本場リンクスの風、恐るべしである。話をしてくれたのはクラブのセクレタリー。近所の世話役といった立場の人のようで、地元の学校の先生が務めていた。ベテランゴルファーでもある彼女は私達としばらく言葉を交わした後、カートを引っ張って仲間とスタートホールに向かって行った。

12年ぶりに再訪したダーネスは、今回は打って変わって真っ青な空が広がって、ちょっとスコットランドっぽくないなという贅沢な愚痴も出るほどだった。

ホテルも変わりなく、食事もとてもおいしいかった。素朴な田舎風のスープもブラック・プディング(豚の血を固めたソーセージ)も、フィッシュアンドチップスひとつとっても、イギリスの食事はいまいちとよく聞くが、今回の旅ではでは全くそんなことはなかった。

北の果てにあるゴルフ場での撮影はあっという間に終わった。二度と訪れることはないと思っていたけれど、3度目があるならば、プライベートで訪れ、スコットランドっぽく担ぎスタイルでラウンドをしてみたい。2度訪れた本場スコットランドでラウンドできなかった心残りを解消するための旅。実際にボールを打つと、ダーネスの風は、芝は、どんなだろう。見えてくる景色もきっと違うはずである。そのときはボールも多めに持って行こう。

Find Information
Durness Golf Club(ダーネス・ゴルフクラブ)
インヴァネス空港から北へ車でおよそ4時間。ダーネスの町にあるシーサイドコース。2面あるティを使い分けることでタイプの異なる9ホールを2周する。18ホール分のビジターフィは20ポンド(約2900円)、手引きカートのレンタルフィ2.5ポンド(約360円)
The Tongue Hotel(タン・ホテル)
19世紀半ばに建てられた公爵邸を改装した3つ星ホテル。アンティーク家具や絵画が彩る館内は落ち着いた雰囲気で、食事も評判。SCOTTISH HOTEL AWARDSの本年度Small Country Hotel of the Yearに選ばれている。ダーネス・ゴルフクラブまで車で約1時間
Pickup Item

海外旅行の時に注意したい保安性。黒帆布のショルダーバッグは、ファスナー付きですので安心して街歩きも出来て、ガイド本やカメラも収納できるサイズです。また、長期間であれば、いつもフレッシュなムレの少ない和紙混ソックスもいかがでしょうか。忘れてしまいがちなベルトもクラブオノフでどうぞ。