2020.06.09
右腕一本でのバンカーショットを目の当たりにして、すっかり向江寛尚プロのスイング理論にハマってしまった。クラブヘッドのソールを意識するだけでスイングが見違えって良くなる。まるで魔法に掛かったようにグッドショットがポンポンと打てるなんて…。「今度、時間を作ってぜひ遊びに来てください。スイングの話をじっくりしましょう」。向江プロのリップサービスを真に受けて、ヌケヌケと出掛けて行ったのだった。
東急田園都市線・大井町線二子玉川駅の改札を出て、テクテク歩いて3分も掛からずに辿り着いた。向江寛尚プロと取材約束した場所オンワードゴルフアカデミー二子玉川。
一畳分以上もあるガラス扉が自動で開く。フロント受付のスタッフに取材時間よりも少し早めに来てしまったことを告げる。すぐに向江プロが、いつものさわやか笑顔で表れた。(私感ではありますが、向江プロのスマイルは貴乃花のそれに似ているし、声も話し方もそっくりのような感じがするのです)。
「わざわざお越し頂きありがとうございます。今日はドライバースイングのお話でしたね。宜しくお願いします」。相変わらず丁寧な言葉遣いの向江プロから、今日はどんな衝撃波を受けるのかと期待感が膨らむ。
「なぜ最新のスイング理論はアメリカ発信なのか。理由をご存知ですか?」
(来たぁ!いきなりの向江ビーム)。一気に脳ミソは破壊された。
「スイング論者やティーチングプロが日本よりも多いからでしょうか」
「実はゴルフクラブの開発競争においてアメリカが独走状態にあるからなのです。たとえば最新のアメリカ製ドライバーは大型ヘッドであるのはもちろん、慣性モーメントが大きい。しかし、シャフト長は決して長くありません。
それに対して日本製の最新ドライバーは、アメリカ製ほど慣性モーメントが大きくない。しかも重量は重めで、シャフト長は長めの設定です」。最新のクラブトレンドにも詳しいなんて、さすが向江プロ、ますます頭が下がる。
「日本製とアメリカ製ではドライバーの性質や性格がまったく違って来ますよね。それこそ、使いこなすためのスイング法も異なる…。
そうか、だから新しいクラブ法の使いこなし方となるスイング論の研究も進んでいるんですね」
向江プロの目が笑っている。ようやく正解を導き出せた気がした。(ああ良かった)。胸を撫で下ろせた。
「結論からお話ししましょう。アメリカ製と日本製ドライバーではクラブに『仕事をさせる』と『仕事をしてもらう』の違いがある。アメリカ製は『自分でクラブを引き戻す動作』が必要であり、日本製は『クラブヘッドをボールに当てに行く』スイングが最適なのです」
最新ドライバーを買ったからには、それに適したスイング法をしなければ無駄遣いになるだけだなんて。まずは仕事をさせるか、してもらうかを見極める目が必要とは驚きだ。
「具体的には、どうスイングするのが正解なのですか?」
「慣性モーメントが大きく、シャフト長がそれほど長くない最新アメリカタイプのドライバーでは『トゥをかぶせないようにしてインパクトを迎える』ようにスイング。慣性モーメントが大きくはなく、シャフトが長く、クラブ重量が重めの日本タイプのドライバーは『トゥから回転(ターン)させるようにして振り抜く』ことでそれぞれのクラブ性能を最大限に引き出せます。結果、飛距離アップが望めるようになるのです」
そして、向江プロは欧米ツアーで活躍する選手のスイングを例に挙げたのだった。
「コンパクトなトップスイングを取る選手が多いですよね。それはダウンスイングから左脚軸でクラブを振り下ろし、インパクト以降のスイング円弧を大きくするようにスイングするためです。
ダウンスイングの際に軸を左へ移動させる2軸打法をすることで、描くスイング弧は楕円になり、クラブを真っ直ぐに振る軌道が長くなる。クラブソールの動きに目を向けたなら、インパクトエリアからフォロースルーにかけてソールは地面方向をずっと向いている。低く長く振り抜いたならクラブ性能によって飛距離を出せることを知っているからだと言えるのです。
しかし、クラブが重く長く、慣性モーメントがさほど大きくないドライバーでは、トップスイングからの切り返し以降も背筋を軸にした一軸打法が基本となります。インパクトエリアではソールを目標方向へ向けるようにトゥを返しながらヘッドを振り抜き、フォロースルーでソールが目標方向に正対するのが最適なスイングとなります」
出たぁ!やっぱり出た。バンカーショット同様に、向江プロの「ソール意識」のスイング理論。ソールをどこに向けて振るのか。それはドライバーの慣性モーメント、長さと重さによって違って来るのだ。
「使いこなし方を知ることも大切ですが、その前に自分が手にしているドライバーは果してアメリカ、日本どちら系なのかを把握していないと使いこなせませんよね」と尋ねた。「はい。最新ドライバーが合う、合わないではなく、使いこなし方である最適スイングとクラブスペックの認識は重要になりますね」
クラブもスイング理論も進化している。だから、ゴルファーもしっかりアップデートしなければと思ったのだった。