2018.12.14
ゴ国内の男子、女子、シニアツアーそれぞれの代表選手6人による対抗戦「3ツアーズ選手権」が終わり、プロゴルフトーナメント界は本格的なオフシーズンに突入した。
国内ツアー界にとって2018年は、いったいどんな一年だったのだろうか。
男子ツアーでは、石川遼が最年少で選手会の会長となり、ファン離れを食い止めようと様々な企画を打ち出し奮闘した。大会ごとにロゴマークをあしらったピンフラッグを販売し、出場選手は積極的にサイン応対をする。フラッグ売上金はチャリティーとして寄贈するというアイデア満載、ファンの立場に立った企画は好評だった。
2020年の東京五輪では「ゴルフでも金」を目指し、各関係団体は躍起になっているが、他の五輪競技と比べると、今ひとつの観は拭えない。ゴルフ離れに歯止めを掛けるにはどうしたら良いかが、五輪開催が近づくに連れて大きな課題となって立ちはだかって来たと思う。
なぜ、スポーツ観戦をするのか。たとえばストレス解消が頭に浮かぶ。お気に入りのチームや選手を応援するために声援したり、拍手を送ったり、時には選手とともに笑ったり、怒ったりすることで、息抜きが図れる。気分転換もできる。観戦後は居酒屋でその日のプレーをサカナにして友と一杯できる楽しみもある。溜まっていたモヤモヤも発散できる。
遊園地でジェットコースターに乗って絶叫するのと、どこか似ているようでもある。ただし、僕は苦手だからジェットコースターが完全停止するまでズッと下を向いているだけだ(苦笑)。
観客がどれだけ声を上げられるのか。例えば球技においては、そのボールの大きさによるところが大きいのだと、何かの本で読んだことがある。サッカーボールやラグビーボール、バスケットボールは両手で持つくらいの大きさだから、ボールを扱うのにそれほどの集中力は求められない。だから観客はいくら騒いでもOK。
しかし、ゴルフやテニス、卓球など手のひらに乗るほどの小さいボールでは、選手がプレーするにあたって集中力が不可欠になるため、プレー開始前には静寂が観客に求められるというのだ。確かにゴルフでもテニスでも「お静かに!」という言葉がつきまとう。これではゴルフ観戦にコースへ出掛けてもストレス解消にはたどり着けない…。
プレー前は「静寂」に、でもプレー後、それも豪快なドライバーショットやピンにベタリと着くアイアンショット、チップイン・ショット、イーグルやバーディーパットが決まった時には大きな声援や拍手をギャラリーが送ってもいい。「静寂」に対して「騒然」とまでは行かなくても、感じたままに選手へ「ナイス!」の気持ちを届ければいいと思う。
国内男子ツアーと比べて、試合数が圧倒的に多い同女子ツアーは、ある意味、隆盛を極めているのかも知れない。かつての人気低迷の時代があり、その打開策に奔走した。やがて宮里藍がアマチュアながらツアー優勝し、続々と若手選手も台頭。人気選手が増えるに従ってツアーは盛り上がって行った。
株式市場と同じ?それともジェットコースターに似ている? 人気度や支持率というのは、上がったり下がったりして当然、それが常。プロスポーツに求められるのはいったい何なのか。
「感動でしょうね。でも、ギャラリーを感動させようとしてプレーしたとしても、それは出来ません。選手自身が感動するプレーをしてこそ、ギャラリーも感動するのだと思います」。
今から20数年前のことだが、森口祐子に取材インタビューした際の「名言」だ。
2018年の国内男子ツアーは10月以降、名勝負が続いた。日本オープンで稲森佑貴がツアー初優勝をメジャーで飾り、ブリヂストンオープンでは今平周吾が今季初優勝。マイナビABC選手権では、無シード選手の木下裕太がプレーオフの末にツアー初優勝を挙げた。圧巻はその翌試合のPGM・HEIWA選手権だ。
最終日最終組のショーン・ノリスと、その前組の片岡大育が17番ホール終了時点でともに通算12アンダー。首位に並んでいた。迎えた18番パー5ホール。片岡が3オン1パットのバーディーで上がり、通算13アンダーでクラブハウスリーダーとなった。
最終組のノリスはツーオンに成功。下り6メートルのイーグルパットをねじ込み、土壇場で逆転優勝を決めた。こんな劇的シーンを目の当たりにして鳥肌が立った。カップイン後、グリーンカラーで他の選手のプレーが終わるのを待つ間、ノリスは両手で顔を覆っていた。流れる涙を誰にも見せたくはなかったのだ。
そのシーンを撮影しながら、僕も涙が込み上げてきた。声も言葉もいらない。
後日談がある。ツアー最終戦でノリスと談笑していた際、このイーグルパットの話になった。「実はあの最終日、パットが入らなくてね。最終ホールだけ思い通り打てて入ったのだよ。それが逆転優勝の一打になるなんてね」。
2019年。人気も話題も「静寂」から「騒然」へ。選手自身が感動するプレー、トーナメントが、さらに多くなることを願う。プロゴルフトーナメント界をさらに盛り上げることにつながるはずだから。
(文中敬称略)